「イヤイヤ期」親のイライラをリセットするためのヒント
モンテッソーリやレッジョ・エミリアなど、子どもの自主性や創造性を育む『オルタナティブ教育』の第一人者である島村華子さんの連載。第二回はイヤイヤ期の乗り越え方についてです。
海外でのイヤイヤ期の捉え方
日本では「イヤイヤ期」と呼ばれる2歳前後の時期ですが、英語圏では Terrible Twos(恐ろしい/ひどい2歳児)と言われています。「恐ろしい」「ひどい」という言葉からもわかるように、この時期の親の大変さや葛藤をよく反映しています。
一部の親や教育者の間では、この時期をより前向きに捉えるために「Terrific Twos(素晴らしい2歳児)」や「Trying Twos(頑張っている2歳児)」といった表現を使うこともありますが、日本でも私が住むカナダでも一般的には親が苦労する時期として知られており、育児の負担が重くなると感じる親が多い印象です。
なぜイヤイヤが起こるのか?
この時期の子どもは、自我が芽生え、「自分でやりたい」という欲求が非常に強くなります。しかし、その一方で、言葉や行動のスキルがまだ未熟なため、思い通りにいかないことが多いほか、大人の介入によって自分のやりたいことが邪魔されることもしばしば。このギャップがフラストレーションを引き起こし、子どもの癇癪や「イヤイヤ」といった行動に繋がるのです。
親から見ると「なんでこんなに困らせるようなことをするの?」「なんでこんなに手がかかるの?」と思うことが多いかもしれませんが、子どもからすると「どうして自分でやらせてくれないの?」「なんで邪魔するの?」という不満があるのです。このすれ違いが双方にとってストレスになる時期ですが、子どもの行動を「自立の練習」として捉えると少し気持ちが楽になることもあります。
親子ともにイライラを軽減するためのヒント
物理的な工夫
発達上健全なことだということを理解するほか、子どもが「自分でできる」物理的な環境を整えることで、癇癪やイヤイヤを減らす助けになります。モンテッソーリ教育ではお馴染みですが、子どもサイズの道具を準備してみてください。例えば、小さなコップや水差し、子ども用のほうきなど、自分で使える道具を用意します。子どもが「自分でやりたい」という気持ちを満たしやすくなります。また、子どもが手に取りやすい環境を作るのもおすすめです。例えば、帽子やコートを子どもの手が届く高さに掛けたり、おもちゃを片付けやすい場所に置いたりするだけで、子どもが自分でやろうとする意欲をサポートできます。
ほかにも、子どもが楽しみながらできるお手伝いに巻き込むのも良いでしょう。例えば、「レタスをちぎってくれる?」といった簡単なお手伝いをお願いすることで、子どもが「自分でやれた!」という喜びを感じられます。もちろん、家事に子どもを巻き込むと時間がかかったり、大人に忍耐が求められたりしますが、その分、子どもにとっては大切な成功体験になります。こうした積み重ねが、子どもの自信や成長につながっていくのです。
心理的な工夫
親のイライラをリセットするためには、ユーモアやゲーム感覚のアプローチを取り入れるのが個人的にはオススメです。深呼吸して自分を落ち着かせ、イライラをおさめるのは気持ちが昂っている時や余裕のない時には簡単なことではありません。例えば、枕に顔を埋めて叫ぶ。大声を出すのはストレス発散の良い方法です。枕に顔を埋めて「もう無理!!」と叫んでみてください。子どもも「なにしているの?」と興味を示して、場の空気が和むこともあります。また、タイマーで怒りのリミットを設定するのもありです。「あと3分だけ怒る!」と決めてタイマーをセットし、時間内は自由に怒ってOK。ただし、タイマーが鳴ったら「終了!」と切り替えます。ゲーム感覚でやると、気持ちが楽になるかもしれません。
ほかにも、音楽をかけて思いっきりダンスをするのもありです。お気に入りの曲を流して、子どもと一緒に体を動かしてみましょう。「ダンスでモヤモヤを発散!」と踊るうちに、不思議とイライラがどこかに消えてしまうかもしれません。
頑張りすぎてしまうあなたへ
この時期の育児は、親にとっても大きな挑戦です。子どもが自立を求めている行動だと頭でわかっていたとしても、都合に合わずにイライラしてしまったり、ため息が出たりしてしまうことはもちろんあります。どうか自分を責めないくださいね。どうしてもうまくできない、余裕が持てないと感じるのは当然です。
親自身が無理をしないことで、子どもにとってもより良い環境が作られます。笑いに変えるきっかけがあるだけで、親御さん自身気持ちが救われることがあるかもしれません。小さな工夫やユーモアを取り入れながら、乗り切ってみてください。イヤイヤ期は永遠には続かないので、安心してください。深刻に捉えれば捉えるほど育児は八方塞がりで辛くなってしまうことも多いでしょう。時には立ち止まり、笑い飛ばす時間を作ってみてくださいね。
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