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冬こそ子どもと考えたい「ゆきが少なくなったらどうなっちゃう?」【元アルペンスキー日本代表・皆川賢太郎さんインタビュー】

冬こそ子どもと考えたい「ゆきが少なくなったらどうなっちゃう?」【元アルペンスキー日本代表・皆川賢太郎さんインタビュー】

温暖化で雪の降り方や雪質の変化、近年の環境問題は私たちの生活にも大きな影響を与えています。一般財団法人 冬季産業再生機構で雪資源保全活動を行う、元アルペンスキー日本代表の皆川賢太郎さんにお話を聞きました。

お話を聞いたのは、皆川賢太郎さん

一般財団法人冬季産業再生機構 代表理事 / 会長。元アルペンスキー日本代表。新潟県南魚沼郡湯沢町出身。

「SAVE THE SNOW PROJECTS」について

環境問題による気候変動は、雪へも大きく影響するとささやかれています。私が代表を務める、一般財団法人冬季産業再生機構の「SAVE THE SNOW PROJECTS」では、雪資源を守るために環境問題へ取り組み、少しでも社会、冬季産業へ貢献し、そして未来ある子ども達へ四季の豊かさを残すための活動を行っています。

SAVE THE SNOW 絵本プロジェクト『ゆきゆきだいすき』

『ゆきゆきだいすき』(1650円)絵/上村愛子、作/八尾良太郎、出版/小学館

子ども達が楽しく豊かに雪を楽しめる未来を目指して、「SAVE THE SNOW PROJECT」の第1弾として、絵本『ゆきゆきだいすき』を制作しました。元モーグル日本代表で財団のアンバサダーでもある上村愛子さんがイラストを手掛けたキャラクター「AIKOちゃん」が雪の美しさや雪資源の大切さを子どもたちにわかりやすく伝えています。

AIKOちゃん

「雪の大切さを多くの人に伝えたい」保全活動を始めたきっかけ

絵本『ゆきゆきだいすき』制作に至った経緯

現役時代から、何か環境問題について取り組みたいと考えてはいましたが、個人だとできることに限りがあり、
形にできる方法を考える時期が続きました。

私たち冬季競技者は雪がなければ、練習ができず、大会も中止になり、自分自身が何者にもなれないというくらい大切なものです。昔から当たり前のようにあるものなので、大事にしてこなかった部分もあったなと思うところもあり、引退後に雪資源を守ることを目的とした「冬季産業再生機構」という財団を作りました。そして、多くの人に活動の思いを知ってもらうツールとして、財団のアンバサダーでもある上村愛子さんにイラストを描いてもらい絵本を制作することになりました。

幼稚園や保育園で行った『ゆきゆきだいすき』の読み聞かせ活動を通して感じたこと

絵本を出版したあとご支援頂いている株式会社コーセーと共に読み聞かせ動画を制作し、園での活動にも活用してもらいました。ストーリーとしては雪がなくなってしまうかもしれない…という、少し寂しい話なのですが、環境問題の教育として伝えるよりも、子どもたちの感性に語り掛けるような形で伝えたかったので動画にして見てもらいました。子どもたちが真剣な表情で食い入るように見てくれる姿を見て、本当に絵本を作ってよかったなと感じました。

絵本を通して伝えたい思い

冬の時期になるといつも枕元にこの絵本があって、子どもたちが寝る前など日常の中で絵本を楽しんで読んでもらえると一番うれしいです。絵本を通して、雪があることが実は当たり前ではないということを知って、雪を守るために、では自分には何ができるのかを親子で考えてもらえるきっかけになったらいいなと思います。

「SDGs」について楽しく学べる絵本

僕たちが飲んでいる水や食べている農作物というのは、水がないと育たないというところが第一にあります。別に雪が雨に変わってもいいのでは?と思う人もいると思いますが、山の上にある雪が徐々に溶けて自然を潤すことでおいしい米や野菜ができるのです。日本が四季折々の食材に恵まれているのは、雪資源があるからこそ。まずは、雪の大切さや役割について知ることも大切です。

スキーの出会い、印象に残っている父親の言葉

父は競輪選手、母はママさんバレーをやっていて、2人の共通の趣味がスキーだったんです。そしてスキー場でペンションを営むようになりました。僕は雪がある世界で生まれ育って、当時のことは覚えていませんが(笑)3歳のときにスキーを始めました。家を出たらスキーが当たり前にできる環境だったので、得意になり、そして選手になりました。やはり育った環境と両親がいろいろと体験させてくれた結果ですね。

物心がついたころに父からもらった言葉でずっと大切にしていることは、「ずるい選択をしない」ということです。「ずるい」にはいろいろな要素があると思いますが、大人になっていく中で、さまざまな選択をする場面が出てきたとき、父の言葉を思い出しています。

競技をする中で父から言われていたのは、「勝つまでやれば負けない」。競輪選手だった父らしい言葉だなと思うのですが、選手時代に負けることが続いてもその言葉を信じて続けられました。“「勝つまでやれば負けない」ってあたりまえじゃん”と思うかもしれませんが(笑)、途方もない目標をもらった気がしていて、今でも大事にしています。

「SAVE THE SNOW PROJECT」の今後の活動について

環境問題は、競技と同じで一夜にして結果を出すことは難しいですよね。でもやらないよりは、やる努力を続けたい。やらない選択をして後悔するぐらいだったら、やった方がいいと僕は思っています。

雪の大切さや知識を持っている僕たちができるのは、誰かが注目しなくても、僕たちがそこに注目をして語りべをすることです。小さな活動かもしれないけれど、1人でも多くの人たちに発信をしていくことが大切だと感じています。

昨年の冬には、絵本「ゆきゆきだいすき」の世界を音楽と合体させたコンサートを開催しました。絵本×音楽のように、違う文化を掛け合わせることで、心に残るように伝えることも僕たちのひとつの活動だと思っています。今後は冬季オリンピックもあるので、そういうところにリンクさせながら、皆さんにもっと活動を知っていただけるような機会を増やしていきたいです。

子どもたちにはたくさんのことを体験して感じてほしい

ちょうど今の時期はスキー場で雪に触れる、ウィンタースポーツに挑戦してみるなど、子どもたちには実際に体験していろいろなことを学んでほしいですね。環境問題を知るうえで、子どものころに四季に触れる、体験をすることは大切です。

子どもがこれから成長していく中でどんな未来像を描くのかは、体験する、知ることができないと選択すらできないのではないかと思います。ぜひママ・パパのみなさん、お子さんにたくさんの体験をさせてあげてください。

絵本「ゆきゆきだいすき」読み聞かせ動画はこちら

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企画・編集/&あんふぁん編集部、文/やまさきけいこ

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