3歳と4歳では「怒り方」は違う!子どもに寄り添う工夫をしよう
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モンテッソーリやレッジョ・エミリアなど、子どもの自主性や創造性を育む『オルタナティブ教育』の第一人者である島村華子さんの連載。第三回は叱り方についてです。
叱り方に悩んでいるあなたへ
子育てで「どのように怒るのが良いのか」と悩んでいる方は多いと思います。子どもを叱ることは避けられない場面もありますが、少し言い方を工夫したり、子どもの成長に合わせて接し方を変えたりすることで、子どもの反応が変わり、親子の関係がより良いものになるかもしれません。
子どもの気持ちに寄り添う怒り方とは
子どもを叱るとき、まず大切なのは、安全に関わる場面を除いて、最初の一言で否定しないことです。たとえば、子どもが牛乳をこぼしてしまったとき、「ダメ!」「なんですぐこぼすの!」とつい言ってしまいがちですが、頭ごなしに否定されると、子どもは心を閉ざしてしまい、その後のやりとりがスムーズに進まなくなります。何度注意しても同じことを繰り返してしまうのは、子どもがまだ発達の途中であり、物理的にうまくできないこともあるほか、単純にどうすればよかったのかをまだ理解できていない場合も多いのです。
そんなときは、まず「〇〇がしたかったんだね」と、子どもの気持ちを受け止めることから始めてみてください。子どもは、自分の行動の意図や感情を認めてもらうことで、「自分はわかってもらえた」と安心し、その後の話を聞く準備が整います。親に否定されるのではなく、受け入れられていると感じることで、前向きな気持ちで話を聞くことができるのです。
そのうえで、「コップは奥に置こうね」と、具体的な解決策を示してあげたり、子どもが大きくなってきたら「どうしたら牛乳がこぼれないかな?」と一緒に考えたりすることで、子ども自身が問題を解決しようとする意識を持つようになります。こうしたプロセスを繰り返すことで、ただ叱られるだけではなく、どうすれば次はうまくできるのかを学ぶ機会になります。
また、親御さんにとっても、最初の一言を変えることで、子ども自身の反応も変わるため、穏やかに接することができるかもしれません。「どうしてこんなことをするの?」とイライラしてしまう場面も、「まだできないんだな」「どう伝えたらわかりやすいかな」と捉え方を変えることで、すこしでも自分の気持ちに余裕を与えることができるかもしれません。
こうして、子どもの気持ちに寄り添いながら、一緒に解決策を考える経験を積み重ねていくことで、子どもは自分の行動に責任を持ち、少しずつ成長していきます。親子の関係もより良いものになり、大人の負担も軽くなるはずです。
年齢に応じた伝え方の工夫
子どもの気持ちに寄り添いながら接することは大切ですが、年齢によって伝え方を工夫することも必要です。特に、3歳くらいまでの子どもには、長い説明や難しい言葉はあまり伝わりません。たくさん話してしまうと、かえって混乱してしまったり、どうすればいいのか分からなくなってしまったりすることもあります。そんなときは、伝えたいことを2~3つの短い言葉にまとめることが大切です。シンプルな言葉で伝えると、子どもも理解しやすく、受け入れやすくなります。
たとえば、おもちゃを片付けてほしいとき、「なんでいつも散らかしっぱなしなの?早く片付けて!」と怒るよりも、まず「〇〇で遊びたかったんだね」と気持ちを受け止めた上で、「赤い車からしまおう」と短くわかりやすく伝えると、子どもにも何をすればいいのかが明確になります。こうしたシンプルな言葉がけは、子どもが迷わず動けるようになるだけでなく、親自身のイライラも軽減され、普段の関わりがよりスムーズになるかもしれません。
そして、お子さんが4歳くらいになると、少しずつ「どうして?」と理由を考える力が育ち、論理的な思考が芽生えてきます。この時期になると、ただ解決策を伝えるのではなく、なぜダメなのかを伝えてあげると、お子さん自身が納得しやすくなります。たとえば、「おもちゃを順番に使おうね」と伝えた後に、「みんなで仲良く遊べるようにするためだよ」と理由を加えると、子どもはルールの意味を理解しやすくなります。
とはいえ、説明が長すぎると、まだ集中力が続かないこともあります。そのため、4歳頃でもわかりやすく、またシンプルに伝えることが大切です。「おもちゃを貸してあげると、お友だちも嬉しいね」「順番を守ると、みんな楽しいね」と、子どもが自分の行動がどう影響するのかを理解できるように、少しずつ説明をしてあげましょう。
小さいうちはシンプルに、少し大きくなったら理由を交えて伝えることで、お互いに無理のないやりとりを心がけてみてください。
最後に
もちろん、ついカッとなって怒ってしまうことや、思い通りにいかないこと、どの方法が良いのか迷ってしまう時もあるでしょう。しかし、まずは子どもの気持ちに寄り添い、シンプルで短い言葉で伝えることから始めるだけで、少しずつでも効果を感じるはずです。子育ては大変なことばかりですが、ちょっとした工夫を続けることで、子どもの成長が見えてくる瞬間が増え、親御さんの気持ちにも少し余裕が生まれるかもしれません。完璧を求めるのではなく、「できることから少しずつ」を意識して、お子さんとの関わりを楽しんでみてくださいね。
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