身近なテクノロジーを発見しよう!“スポンジ博士”がキッチンスポンジのサイエンスとサステナブルを解説
60年の歴史をもつ、スリーエムのスポンジ。そのスリーエムがキッチンスポンジのサイエンスとサステナブルについて伝えるイベントを開催し、あんふぁんWeb編集部が取材しました。前半はスリーエム ジャパンの技術部スペシャリストで約8000個ものスポンジを試した「スポンジ博士」原井敬さんが、スポンジのテクノロジーについて解説。後半はお笑いコンビ「マシンガンズ」として活躍するかたわら、ゴミ清掃員としても勤務し、ゴミの回収・分別や廃棄物削減について発信している滝沢秀一さんも登場。難しいリサイクルや環境問題を、楽しく解説してくれました。
「何のために行動するのか」がわかれば、めんどうだと思っているゴミ分別も有意義に感じられるはず。
キッチンスポンジは身近にあるサイエンス
キッチンスポンジの歴史
キッチンスポンジの歴史は古く、1958年に本社U.Sのスリーエムで、不織布のナイロンたわしを開発。日本には1963年に入り発売されてきました。そして1966年に、不織布とウレタンスポンジが合体したキッチンスポンジが誕生したのです。日本で使われているスポンジの多くは日本製で、山形県東根市でつくられており、ふるさと納税の返礼品としても利用されているのだそう。
キッチンスポンジのデモンストレーションでテクノロジーを体験
普段何気なく使っているキッチンスポンジが、サイエンスと関わりがあるのだという興味深い話を聞くことができました。子どもたちが苦手とする理科や化学といったサイエンスが、実は一番生活に役立つ勉強なのでは?という提案にもなっています。子どもと一緒に、スポンジのテクノロジーについて、楽しみながら発見してみましょう。
デモンストレーション1.「不織布」を使ってみる
不織布とは、文字通り織ったり編んだりせずつくられた布。最近では、マスクが一番身近なものかもしれません。キッチンスポンジに使われている不織布と同じ素材なら、マスクでも汚れが落ちるのでは?という実験。食材を塗りつけたプレートをこすってみたのですが、少し汚れが取れる程度。
次に、キッチンスポンジに水をつけてこすると、スルッと汚れが落ちました。同じ素材なのに、なぜ汚れが落ちたのか?同じ不織布でも、違う製法でつくられているので、汚れ落ちに違いが出てきたわけです。繊維をかさ高く重ねて、スプリング効果と呼ばれる、バネのように伸び縮みして凹凸に沿うことができるので、色々なかたちの汚れをかきとることができます。
デモンストレーション2.「研磨材」の効果を見る
研磨材とは、紙やすりなどに使われている、削ったり、磨いたりするための硬い粒や粉。キッチンスポンジには繊維に研磨粒子をつけることで焦げなどの汚れが落とせる「研磨材あり」と、グラスなどを洗う時に傷をつけたくない食器洗いに使う「研磨材なし」の2種類があり、パッケージに表記されています。研磨材があると頑固な焦げ付き汚れを落とせます。キッチンスポンジの研磨材は、接着剤を介して不織布につけてあります。
実験では、研磨材ありとなしで試しました。左が研磨材なし、こすっても汚れは落ちず、右は研磨材あり、こすっている時からシュシュと音がして、汚れをかき落としている感覚がわかりました。
3.「接着剤」のテクノロジー
接着剤は研磨粒子をつける役割だけではなく、不織布とウレタンスポンジを貼り合わせる部分にも使われています。キッチンスポンジは、毎日水にさらされたり、洗剤を使い、熱湯消毒などもあって、接着剤の耐久性が重要になってきますが、たっぷりつければガチガチになるし、力が弱いとすぐにはがれてしまったりするので、やわらかさを持たせながら、握り心地の良いように接着するところにもテクノロジーがあります。
普段何気なく使っているキッチンスポンジも、たくさんの技術が使われていることがわかります。このように、子どもと一緒に身近なテクノロジーを見つけてみるのも面白いですね。
キッチンスポンジを長く使うコツは?
キッチンスポンジを長く使う方法としては、使い終わったら着いた食材や洗剤を落として絞り、乾燥させることが基本です。スポンジを縦に置くと、接地面が少なくなり、乾燥が早くなります。
企業がリードしていくべき!広まらないサステナブルについて
後半はお笑いコンビ「マシンガンズ」として活躍し、ゴミ清掃員としてゴミの回収・分別や廃棄物削減についても発信している滝沢秀一さんが登場。
スリーエムが実施した意識調査(※)では、「使い捨てプラスチック製品は環境にとって大きな脅威であることにどのくらい同意するか」という質問に対して、「同意する」と回答した人が世界に比べて日本は少ないということがわかりました。滝沢さんも、ゴミ清掃の現場で日本人の意識の低さを感じることがあるといいます。「プラスチック分別を、何のためにやるのかをしっかり伝えることが一番良いと思います。捨てたペットボトルが、この先どうなるのかと理解を深めて、ゴミと資源は違うんだよということを知ってもらいたいですね。僕は、ゴミという言葉をなくしたいんです!」と語る滝沢さん。
※「3M ステート・オブ・サイエンス・インサイト2024」、2023年12月13日~1月10日、調査対象:18歳以上の男女1006人(日本)、1万13人(グローバル)
近くのスーパーに置いて欲しい!身近に感じられるようなキッチンスポンジ回収ボックス
キッチンスポンジの“迷わない”ゴミ出し、回収を目指して
住んでいる地域によって異なる分別方法になるキッチンスポンジですが、ゴミの出し方に迷うとみんな燃えるゴミに出してしまうので、キッチンスポンジ回収ボックスは、キッチンスポンジのゴミ出しに迷わない仕組みとしても役立ちそうです。
3Mでは、5年前から回収ボックスを設置し、現在回収が250kg分(5月末)になっています。新たなスポンジに生まれ変わる量の目安として300kgが目標なので、年内あと50kgを目指して頑張っています。キッチンスポンジの交換目安は3週間~1か月。各家庭で意識を高めてもらい、処分をする時はなるべく回収ボックスへ持ち込めるように、設置場所の増加をして、回収しやすいシステムをつくろうと盛り上がりました。
これからももっと、キッチンスポンジのサイエンスとテクノロジー、リサイクルの両輪で、サステナブルに貢献をしていく企業を応援し、ゴミの分別や使う商品の選択などの意識を高めていきたいですね。
取材・文/森岡陽子