子どもの発達の心配に子どもも保護者も変わる「療育」ってなに?

言葉が遅い、手先が不器用、すぐに癇癪をおこす、こだわりが強すぎる…など子どもの発達面の心配があると感じた時、とても不安になりますよね。今回は、「療育」について私が働く児童発達支援事業所の代表に話を伺いました。

お友達と同じことができない、園から苦手を指摘された、癇癪やこだわりがひどいなど、困りごとがあるときに頼れる児童発達支援授業所での療育。親の育て方のせい?健診で様子を見ましょうと言われたけど、どうしたらいいの?と、通所を迷ってしまうこともあるかと思います。
「幼児教室ぷりずむ」は千葉県習志野市にあり今年開所9年目を迎えるアットホームな児童発達支援事業所です。代表を務める渡辺麻子さんに話を伺い、「療育」ではどんなことをするのかまとめました。
療育ってなに?
療育(発達支援)とは、障害の子どもやその可能性のある子どもに対し、個々の発達の状態や障害特性に応じて、今の困りごとの解決と、将来の自立と社会参加を目指し支援をすることです。
その子らしさを認めてもらえる場所
幼稚園や保育園では、年齢ごとのカリキュラムが決まっていて、それに沿って活動を進めます。そのため、その年齢の課題をクリアすることが目標になります。
児童発達支援では、その子らしさが発揮できるよう、一人ひとりの発達段階や、特性、興味関心をふまえて支援を行っています。本やネット情報ではわからない具体的なわが子への対応を、先生と子どものやりとりから見て知ることができるのもいいところです。
療育ではなにをする?
療育ではどんなことをするのか、ぷりずむの個別療育を例にお伝えします。
個別療育とはお子さんに合わせた課題を先生と子どもが一対一で行う療育のことです。
発達段階にあった課題を「子どもの興味・好きなこと」と「苦手なこと・困っていること」をバランスよくプログラムに入れます。そうすることで、子どもが飽きずに楽しみながら苦手を克服し、自信を育むことが出来ます。
こだわりやパニックがあり言葉のでなかった子どもの成長
年中の頃、通所し始めたあるお子さん。当時は発語もなく、言葉での意思疎通が難しい状況でした。また、こだわりが強く、パニックになることもあり、自分の思いと違うと机を叩いて気持ちを表現したり、泣いたりしていました。絵本にも全く興味を示しませんでしたが、週1回の個別療育で、毎回3冊の絵本を療育に取り入れていくと、段々と興味を持つようになり、落ち着いて見ることが増えました。
楽しいと感じる場面では声を出して笑ったり、家では自分で絵本を選んだり、先生の真似をして読み聞かせごっこをするように。年長になると、ひらがなを認識し始めたタイミングで、大好きな電車の名前を取り入れた文字の読み書きの学習を行うことや、ゲーム感覚で楽しめるような課題なども行いました。そんな中、ことばが急に出はじめ、卒園する頃には、簡単な言葉でやりとりをしたり、はらぺこあおむしの歌を大きな声で歌ったりできるようにまでなりました。
本人の興味に合わせた課題設定や、絵本を毎回必ず取り入れたことも、言葉が出たひとつのきっかけになっていたのだと感じています。
保護者の支援も大切に
幼児教室ぷりずむではお子さんへの発達支援と同じくらい、保護者支援も大切にしています。そのお子さんのお母さんは「ぷりずむに通った2年間、決して否定せず先生はずっとほめてくれた」と話します。親としてはどうしても「泣かないよ」と言ってしまいがちですが、先生は「泣いてもいいよ」と言ってくれました。
こんな風に言ってもらえる場所があることがありがたかったし、それを見ていて、自分もそうしてみようと思ったとのこと。また、子どもの個性を理解し、尊重してもらえているのを感じ、安心して通うことが出来、心の支えになっていたと言ってくれました。
親も子どものよいところに目を向ける
幼児教室ぷりずむでは、療育の様子を見ていただき、その日のお子さんの様子について保護者の方に気づきを書いてもらうのですが、通い始めたころは「できていないところ」や「問題点」を書く方が多くいます。そんな思いも受け止めながら、毎回の振り返りの時間にスタッフからは、できたところ、よかったところを伝えたり、行動の意味や捉え方をお伝えしたりしています。そうしたやり取りを続けていくことで、保護者も一緒に子どもの良かったところに自然と目が向くようになるのです。
つい先回りして子どもに指示したり、ダメ出しをしたりしてしまう保護者も、いつの間にか子どもを信じて待つことや、褒めることが増えていきます。
親と先生が一緒になって子どもの個性や才能を認めていくと、子どもは生き生きしてきます。苦手なことにフォーカスして克服しようとがんばるよりも、得意なことに夢中になっているほうが本来の力を発揮できるようになります。そうして自信の土台ができると、苦手なことがあっても、そんな自分も好きでいられる「自己肯定感」が育くまれ、物事を前向きに考えることができます。その結果、社会に適応する能力も伸びていくのではないでしょうか。
療育を受けるのは勇気がいる?
基本的に、療育は医学的な診断や障碍者手帳がなくても、医師などから療育の必要性が認められた場合などに受けることが出来ます。(詳しくは市区町村の担当窓口にご相談ください。)
とはいえ、わが子に障害やその可能性がある…と認められ、療育を受けるのは勇気がいると感じている方もいるかもしれませんね。
けれど子どもは一人ひとり違っていて、どの子も得意不得意があります。その幅の大きさによる違いがあるだけで、発達障害があるなしで、良い悪いと判断する必要は全くないのです。
療育では、子どもを変えようとしたり、治そうとしたりするのではなく、今困っていることに対してそっと手助けをします。「支援してあげる」のではなく、子どもたちとは常にフラットな関係でありたいと思いますし、私たち大人が子どもたちから教わることもたくさんあります。
療育に通うことで子ども自身が本来持っている力に気づき、もっとその才能を伸ばすことができるかもしれません。保護者の方にとっても、子どもについて一緒に考えてくれる先生と出会えたり、同じ思いを持つ保護者と繋がったり、情報交換等もできると思います。
数年前と比べ、今では色々な特色の発達支援事業所がありますので、ぜひ一度気軽に相談してみてください。
一人で悩まずに相談を
いかがでしたか?以上が渡辺麻子さんの話してくれたお話です。療育のイメージが変わった方もいるのではないでしょうか?
幼児教室ぷりずむでの子どもの成長を見ていて、児童発達支援事業所は、子どもが療育を通して自信を取り戻し「そのままで大丈夫」と感じてもらえる場所だと感じています。私自身も療育を担当する中で、子どもたちの素敵なところを見つける瞬間が多々あり、保護者と手を取り合って喜び合えることに幸せを感じています。
子どもの発達が心配なママが一人で悩まずに、誰かに相談したり頼ったりしながら、安心して子育てができることを願っています。
