レベルの高い学校に行くと良い影響がある、は本当か?研究結果は?

レベルの高い学校に行くと良い影響がある、は本当か?研究結果は?

【中学受験連載】第7回/近年、都市近郊で増えてきている中学受験。「気になるけれど、実際どうなの?」「うちの子どうする?」未就学児〜小学生のママ・パパへ、焦ることなく、無知でもなく、「自分たちらしい選択ができるようになるための知識」をお届けします。

良い学校に入る・入らないの結果、その後の人生への影響は?

親であれば、子どもが偏差値の高い有名な学校へ入ってくれれば、嬉しいですし、安心しますよね。それは誰にでもある、ごく素直で当然の感情なのですが、そのことで私たちは、名門学校に入れば「朱に交われば赤くなる」とばかりに、子どもの能力が引き上がる、と信じている人が多くはないでしょうか。

だからこそ、少しでも偏差値の高い学校を目指し、いくつかの学校を合格したら、迷わずその中で少しでも偏差値の高い学校を選ぶ、というケースが通常だと思います。しかし、最近の教育経済研究では、そんな考えを根底から覆す結果が出ているのです。

ノーベル経済学賞を取ったヨシュア・アングリストと日本でも話題の成田悠輔氏の共同論文では、「似たような学力の者たちで名門高校に入った人とそうでない人は、その後にどんな影響を及ぼすか?」という研究をしていますが、その結果、名門高校に入っても入らなくても、その後の人生への影響は「変わらない」という結論が出ています。

「ピア効果」の実際と「競争しないと能力伸びない」の嘘

この他にも、最近の国内外の研究データでは、良い学校に入ったら能力が上がるとしている研究結果は少なく、逆に、競争原理の有用性は、その集団の上位の人にしか現れないという結果が主になっています。つまり、頭の良い友達に囲まれて良い影響を受けるのは、同じように頭のよい子だけ、ということです。

その集団の競争原理の中で上位にいる者は、そのことが自己肯定感に結びつき、より成長できるのですが、中位およびそれ以下の者にとっては変化なし、または逆効果という研究結果もあります。

いわゆる「ピア効果」というのは、能力の高い人たちが集まる環境にいると、その集団の成果も上がるという意味合いで使われがちですが、正確にはそうではなく、“似たような能力の人たちに囲まれて良い関係性で協力し合うと、各個人もより成長する”ということなのです。ですから、その集団のボトムにいる人が、トップ集団に良い影響を受けて伸びる、ということでは、ないのです。残念ながら、、、。

でも「そう言われれば、確かに!」と思いませんか。例えば会社の同僚に圧倒的な自分との能力の差を見せつけられて、モチベーションが上がる人は珍しいですよね。どちらかというと落ち込んだり、諦めたりする人が多いと思います。逆に、同じくらいの能力だと思う同僚と良い関係で切磋琢磨し合えれば、私も頑張るぞ!と前向きな気持ちになりますよね。子どもも、学校も同じです。

昨今は、無理に名門校を目指さずほどほどの努力で中学受験をする「ゆる受験」といわれるスタイルも増えているようですが、上の結果を鑑みれば、それも悪くないのかもしれません。また、「中学受験をせず、名門校に入らなかったら、良い大学にも入れず、将来に悪影響が?」と焦る必要もありません。

子どもの伸びしろ、どう伸ばす?

大切なのは、子どもの成長過程で「どんな環境で、どんな仲間と、どんな経験をして、その子の能力自体を、どう伸ばしていくか?」ではないでしょうか。

そんなこと念頭におきながら、改めて子どもの今後の進路について考えてみてください。あなたなら、どう考えますか?

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担当カテゴリー

学び・遊び・教育

教育ジャーナリスト 田口まさ美

出版社の小学館で教育誌・ファッション誌編集含め23年以上(教育編集者として10年)携わり2022年独立。教育ジャンルでは初等教育教員向けコンテンツ中心に教育、学習、子供の心の育ち、非認知能力・海外の教育などのコンテンツ編集を経験。現在教育ジャーナリストとして親子に役立つ情報を発信。カナダ留学中の娘の母。Starflower inc.代表取締役。

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