子どもが「したいこと」を見つけるためのサポート法、モンテッソーリ教育の観点から

子どもが「したいこと」を見つけるためのサポート法、モンテッソーリ教育の観点から

モンテッソーリやレッジョ・エミリアなど、子どもの自主性や創造性を育む『オルタナティブ教育』の第一人者である島村華子さんの連載。第四回は子どもの「好き」を見つけるための親のサポートについてです。

どうすれば子どもの「好き」が見つかる?

親としては、子どもが「これが好き!やってみたい」と夢中になれることを見つけてほしいと願うものですよね。そのために、親ができるサポートはたくさんあります。どうすれば子どもが自分の「好き」を見つけられるのでしょうか。親としてどのように関わったらよいのか、一緒に考えてみましょう。

子どもが興味を持つものを見つけるには、自由に選べる環境が大切です。モンテッソーリ教育では、子どもが自分で選んで学べるように、さまざまなアクティビティや道具を用意します。家庭でも、本棚にいろいろな分野の本を並べてみたり、外遊びやアート、工作、簡単な料理(例:野菜や果物を切る)、裁縫(例:大きめのボタンを縫う)などの体験をできる範囲で用意してみたりすることで、子どもが「これ好き!」と思える機会を増やすことができます。

まずはしっかりと「観察」する

ただ、子どもの興味は成長とともに変わっていくものです。昨日まで夢中だったことに急に関心を示さなくなることもあります。それも自然なこととして受け止めながら、その時々の「好き」に寄り添っていくことが大切です。「すぐに飽きてしまう」と残念に思ったり、困ったりすることもあるかもしれませんが、色々なことに触れながら自分に合うものを探している途中なのだと考えてみると、少し気持ちが楽になるかもしれません。

子どもが何に興味を持っているのかを知るためには、まずしっかり観察することが大切です。どんな遊びに夢中になっているのか、どんな話をよくしているのかに注目してみると、その子の「好き」のヒントが見えてきます。例えば、何度も同じ本を持ってくる、動物の動画に目を輝かせる、何かを作るのに時間を忘れるほど集中するなど。「これが好きなのかな?」と感じたら、その興味を広げられるような機会をつくってみましょう。例えば、動物が好きそうなら、一緒に動物園へ行って観察したり、図鑑を見ながら「この動物、どこに住んでいるんだろう?」と話し合ったり。こうした経験を通して、子どもはさらに興味を深め、自分の世界を広げていくことができます。また、お子さんが「楽しい!」と思ったことには、ぜひ親御さんも一緒に関わってみるのもおすすめです。「これ面白いね!もっと教えて!」と興味を示してみると、子どもは「自分の好きなことをわかってもらえた!」と嬉しくなります。そうすると、親子でその世界を共有し、大人も子どもと楽しみながら学ぶことができます。

がんばったことに注目し、声かけを

また、子どもは何か新しいことを始めるとき、「うまくできるかな」「失敗したらどうしよう」と不安に感じることもありますよね。そんなときは、「一緒にやってみよう!」と声をかけて、そばで支えてあげると安心できるかもしれません。お友達と一緒に挑戦することで、気持ちが楽になることもあります。もし思うようにいかなくても、「一生懸命やってたね!」「〇〇ができてたね」と、できた部分や頑張ったことに目を向けて声をかけてあげましょう。そうすることで、「またやってみようかな」という気持ちにつながり、挑戦すること自体を前向きに捉えられるようになります。何度も挑戦し、失敗や成功を経験しながら、子どもは自分に合ったことを見つけていくものです。だからこそ、結果よりも「やってみたこと」そのものを大切にしてあげたいですね。

ほかにも、親御さん自身が学ぶことを楽しんでいる姿を見せることも、お子さんの「好き」を見つける大きなヒントになるかもしれません。親が「今日はこんなことを学んだよ!」と話したり、「この本おもしろかったよ!」とシェアしたりすることで、子どもも「面白そう」と感じることがあります。親が何かに夢中になっている姿を見ることで、学ぶことそのものに対して興味を持つきっかけになることもあるでしょう。ただ、ここで気をつけたいのは、親の趣味や好きなことを押し付けないことです。もし子どもが興味を示さなかったとしても、「この子にはこの子の好きなことがあるんだな」と受け止めることが大切です。

好き、はすぐに見つからなくてもいい

子どもが本当に学びたいことを見つけるには、焦らず、じっくりと関わっていきましょう。親が「これをやりなさい」と決めるのではなく、子ども自身が「これが好き!」と感じられるような環境を整えていく。そのために、子どもの様子を観察したり、色々な経験をさせてあげたり、親も一緒に楽しんだりしながら、寄り添っていきたいものです。子どもの「好き」は、すぐに見つからないかもしれません。でも、毎日の小さな興味や「やってみたい!」の積み重ねの中で、少しずつ形になっていきます。お子さんのペースを大切にしながら、そっと見守り、応援していきましょう。

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担当カテゴリー

学び・遊び・教育

児童発達学研究者 島村華子

オックスフォード大学修士・博士課程修了(児童発達学)。日本人で唯一の、モンテッソーリ&レッジョ・エミリア教育の二つを司る研究者。現在はカナダの大学にて幼児教育の教員養成に関わりながら、日本でも教育・子育てについて、親や教育者に寄り添ったアドバイスを発信している。著書『アクティブリスニングでかなえる最高の子育て(主婦の友社)』『自分でできる子に育つ ほめ方 叱り方(ディスカヴァー・トゥエンティワン)』『親子でできる モンテッソーリ教育とマインドフルネス(創元社)』

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