子どもの自立心の育み方~モンテッソーリ教育、レッジョ・エミリア教育の専門家に聞く~

親としては、うまくいかないことがあっても、自力で乗り越えられるような子どもに成長してほしいですよね。
では、そのために必要な「自立心」はどうしたら育めるのでしょうか。そのヒントを、教育の専門家に教えてもらいました。
自立心を育むために整えたい3つの環境とは
◆心理的環境
子どもは「受け止められている」「耳を傾けてくれている」と感じると、安心して自分の気持ちや考えを表現できるようになります。
◆物理的環境
自分でできることが増えていく幼児期は、自分でやれる環境を整えることも必要。「自分でできた」という達成感は自立心につながります。
◆人的環境
親が自分の心を整えることも大切なこと。頑張り過ぎて疲れる前に、周囲の力も借りながら自身のこともいたわって。子どもの物理的環境を整えることで親も楽になります。
傾聴姿勢とプロセスへの 声掛けを意識しましょう
モンテッソーリ教育やレッジョ・エミリア教育では、子どもの主体性や創造性を育むことを理念に掲げていますが、「一体どうしたら子ども自身が持つ力を伸ばせるのか」と悩む親も多いのではないでしょうか。子どもの自立心を育むために幼児期に大切にしたいのは、子どもの声に耳を傾けることや声掛けをはじめとした、親子間のコミュニケーションです。例えば、目を見るなど理解しようとしている姿勢を示す傾聴姿勢や、ただ褒めるだけではなく、プロセスや工夫に対してフィードバックをする声掛け。完璧を求めなくても良いので意識してこれらを続けることが、子どもの自立心をサポートする一歩になるでしょう。
教えてくれたのは…島村華子さん

オックスフォード大学修士・博士課程修了(児童発達学)。モンテッソーリ&レッジョ・エミリア教育の研究者。現在はカナダの大学で幼児教育の教員養成に関わりながら、日本でも教育・子育てについて、親や教育者に寄り添ったアドバイスを発信している。著書に「自分でできる子に育つ ほめ方 叱り方(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」などがある。
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専門家がレクチャー 年齢別の“自立心”の育みポイント
「子どもには生来、自立・発達していこうとする力が備わっている」という考えのモンテッソーリ教育では、0歳~3歳と3歳~6歳で必要な教育方法を分けることがあります。
それぞれ子どもにとってどんな時期なのか、その年齢で何をしたら子ども自身の力が伸びるのかを聞きました。
【0歳~3歳】自立の第一歩
感覚教育が大事といわれる時期で、言葉ではなく、感覚で物事を覚えていこうとします。「やりたい!」と思うことが多くなる反面、できないことも多いので、大人が物理的な環境を整えてあげると「できた」という気持ちが芽生え、自立の一歩になります。
そのためには…
◆心理的環境
日常生活に実況中継風の会話を
おむつ替えの時に「おむつを替えるから、お尻拭くね」と行動を伝えたり、着替えの際に「シャツに腕を通そうね」と声を掛けるコミュニケーションを。子どもは、何をしているかを感覚で吸収していきます。
◆物理的環境 ◆人的環境
子どもがやりたいことをサポート
着替えを2パターンから選んでもらう、洋服を簡単に掛けられるフックを用意するなど、子どもの年齢に応じてできそうなことをサポート。子どもが「できた」を感じられる環境を整えましょう。子ども自身でできるようになれば、親の負担も軽減されます。

【3歳~6歳】学びの土台をつくる
敏感期ともいわれるこの年齢の時期は、安心できる環境づくりが重要です。発話も多くなるので、子どもが話している言葉を受け止めながらコミュニケーションを取りましょう。ルーティンを守った日常生活を送ることで、子どもは秩序を身に付けていきます。
そのためには…
◆心理的環境
会話から生まれる学びを大事に
身の回りのことに関心が出てくる時期、そして言葉を吸収しやすい時期なので、子どもの好奇心を満たすべくたくさん会話をしましょう。
◆物理的環境 ◆人的環境
お手伝いはまずやり方を見せて
好奇心からやりたいことが多くなるので、できそうなことは見本を示しながらお手伝いしてもらいましょう。「できた」という達成感は、子どもの自信につながり、親自身も助かります。

家庭で今日からできる ケース別コミュニケーション
子育て中で、実際にどんな声掛けをしたら良いか迷うことはありませんか?
今すぐ実践したい、自立心が芽生える声掛け方法を、島村さんに教えてもらいました。
CASE1:自ら進んでお手伝いをしてくれたとき
例えば、おもちゃの片付けができたときは、ただ「すごいね」と褒めるだけはなく、「おもちゃを片付けてくれたから掃除機がかけやすかったよ、ありがとう」など、感謝の気持ちを表しながらフィードバックしてみてください。なぜ褒めているのかを具体的に伝えるのがポイントです。
CASE2:飲み物をこぼしてしまったとき
まずは子どもが何を取りたかったのかなど、こぼしてしまった原因を探り、その上で「どこにコップを置いたらこぼれなかったと思う?」と一緒に解決策を考えましょう。とっさに否定的な言葉を出さないことも大事です。

CASE3:静かにしてほしいのに 落ち着きがないとき
落ち着きがないのは、何かが気になっている証拠なので「こうしたいんだよね」とまずは一言目で子どもの気持ちを理解していることを伝え、その上で「どのくらい長く座っていられるかな?」など、ゲーム感覚で楽しい要素を加えた提案をしてみましょう。

CASE4:友達をたたいてしまったとき
子どもに危険があるとき、危害を与えそうなとき、環境を傷つけるようなことをしたときは「ダメ」を伝えることも必要です。「あの子のおもちゃが欲しかったんだよね、でもお友達をたたくのは痛いからいけないよ」と、子どもの思いを酌みつつも、なぜダメなのかを伝えましょう。
もっと知りたい! 子どもとの接し方Q&A
Q:イヤイヤ期とうまく付き合う方法を 知りたいです。(東京都/2歳のママ)
A:親子で一緒にストレスを発散させてみましょう!
親もストレスがたまるイヤイヤ期。「○○ちゃんがイヤイヤして、私も同じ気持ちだから一緒にじだんだ踏んじゃおうか!」と、ユーモアを交えて一緒にイライラを解消する行動をしてみて。自然と笑顔が生まれるかも。

Q:平日時間がない中、 学習習慣を身に付けるにはどうしたら良いでしょうか?(東京都/0歳・3歳のママ)
A:子どもが夢中になれるものを見つけてみましょう。
幼いうちは学習にこだわらず、まずは何かに向き合う習慣を作ってみては? 子どもが好きなもの、興味を持てるものが見つかると、集中する習慣が身に付きます。
Q:いつごろからどんな勉強の機会を与えるのが良いのでしょうか?(京都府/2歳のママ)
A:幼いうちの学びは遊びの中から探してみて。
幼いうちは、遊びや会話の中から知識や学びを得ることが多いはず。外で落ち葉を拾って数を数えるなど、日常生活の一コマから学びになることを探してみましょう。

イラスト/おおたきょうこ