【パパ旅】三人旅と二人旅は何が違う? パパと長女だけで熱海へ温泉旅行!

旅行作家の吉田友和さんによるコラム。小学生のお子さんがいる吉田家。ママは出張が多いので、パパと子どもだけで過ごす日も。「ならば、旅をすればいい!」そんな吉田さんが語る「パパだけ子連れ旅」、今回は長女と二人旅です。
小4の長女とパパの二人だけで旅に出るのは久しぶりだった。最近はずっと三人旅だったので、なんだか新鮮な気分だ。次女はママと別の旅行中。スケジュールが合わなかったので、2組に分かれる形で家族別行動となった。
パパ&長女組の行き先は熱海だった。温泉旅館に一泊二日の小旅行だ。荷物も少なくて身軽なので、車ではなく電車でのんびり向かった。
電車にしたのは、長女が車移動が嫌いという理由もある。車内のにおいが苦手らしい。パパとしても運転しなくていいのは楽ちんで、道中気兼ねなくビールなんかも飲めるのはとてもありがたい。
三人旅と二人旅では何が違うのか。今回はそんなテーマで、旅の模様をお届けします。
パパ友にうらやましがられる旅
出発日の朝のこと。キャリーケースを転がしながら家から駅へと歩いていると、長女のクラスメイトのパパとばったり遭遇した。近所に住んでいることもあって日頃から仲良くさせてもらっている、いわゆる「パパ友」の一人だ。
「どこかへお出かけするんですか?」
「ええ、これから旅行で。熱海へ行くんですよ」
そんな会話のやり取りをしたのだが、なぜか妙に驚かれてしまった。向こうも同じ学年の娘さんがいるのだが、パパと二人でお出かけするようなことは滅多にないという。
なるほど、そういうものなのか、と改めて考えさせられる。娘も大きくなってきたし、そのうちパパと一緒にお出かけしてくれなくなったりするのだろうか。
近い未来を想像したら少し寂しい気持ちになった。そうして、いまのうちにたくさん思い出を作っておこうと決意を新たにしたのだった。
小田原の名店でアジに目覚める娘
ロマンスカーで小田原まで行き、そこからJRに乗り換えて熱海へ向かうルートを選んだ。
小田原へは比較的最近も行っていて、その旅のエピソードはこの連載でも以前に紹介した(父娘で食べ歩き旅!ママ不在の休日は電車に乗って小田原へ)。それは一言でいえば、食い倒れの旅だった。港町だけあって、小田原は美味しいものが多いのだ。
今回も小田原到着がお昼時だったこともあり、ランチを食べていくことにした。駅を出たところでタクシーを拾い、「だるま」へ連れて行ってもらう。小田原を代表する老舗の名店だ。
明治26年創業というだるまの、レトロな外観を目にしてウキウキしながら入店。父娘共に名物の天丼を注文し、パパはつまみとしてアジの刺身も追加した。相模湾で獲れた地物のアジは新鮮で、ほっぺたが落ちそうになる。
「アジはあまり好きじゃない」と長女はいつも言っていたのだが、試しに一口食べさせたら目の色が変わった。どうやら美味しかったらしい。結局ほとんど全部、彼女に食べられてしまった。
長女のいいところは、こういう旅先で出会う食べ物などにも物おじせず挑戦するところだ。そして、美味しいものはちゃんと美味しいと理解してくれる。
味覚があまり子供っぽくないというか。例えば韓国では本場の辛いキムチにはまっていたし、タイではローカル食堂のチキンライスをばくばく平らげていた。
親のひいき目もあるかもしれないが、同世代の子と比べても大人びているように感じる。少なくとも、何事にも好奇心を持って向き合えるところは旅人向けだ。

三人旅より安い!二人旅のメリット
昼食を終えて会計をしたら、おっと驚いた。金額が思ったより安かったのだ。それもそのはずで、今回は三人ではなく二人なのであった。
考えたら、今回の旅費自体、いつもより多少は抑えられている。食費のほか、とくに大きいのが宿泊費だ。子どもとはいえ、小学生にもなると宿泊費は大人とあまり変わらないケースが多い。宿によっては大人と同額ということさえある。
とはいえ、二人旅ならではと感じたのは、旅費が安く済むことだけではなかった。というより、人数の違いについて、そういうメリット・デメリットみたいな比較をするのもナンセンスな気もする。
たとえば、長女と会話する時間が格段と増えた。我が家の次女はとにかく話好きで、旅行中もいつもうるさいぐらいにしゃべり続けるタイプだ。そんな彼女が抜けた穴は大きく、憎まれ口をたたく相手もいないせいか、長女も話し相手に飢えているようだった。
学校の友達のことや、先生のこと、習い事のことなど、パパとしてもここぞとばかりに根掘り葉掘り質問した。
彼女が最近ハマっているオンラインゲームのフレンドに関する話は興味深かった。「京都と仙台ってどっちが遠いの?」と突然質問されたのだが、よくよく聞いてみると、特に仲の良いフレンドが京都と仙台に住んでいるのだという。
些細なきっかけながら、そうやって地理に興味を持ち、社会のことを少しずつ学んでくれるならそれもまたよし、である。旅好きのパパとしては、京都や仙台がどんな街なのかを前のめりに語ったのは言うまでもない。
父娘だけで温泉旅館に泊まる
予約していた宿は、昔ながらの熱海の温泉旅館だった。中心部からは結構離れているものの、そのぶん周囲は静かな雰囲気で、敷地面積が広い。ゆったり過ごしたい人には最高のロケーションだ。
なんといっても良かったのが、屋外プールが用意されていること。真夏の暑い日に訪れたから、とくにありがたみが大きかった。時間が早かったからか、あるいは子供連れの客が少なかったからか、我々が行った時はプールはガラガラでほぼ貸切状態だった。
ひと泳ぎしたあとは、そのまますぐに温泉に入れるのが素晴らしい。女子は浴衣の種類を自由に選べるとのことで、お姉さんっぽいのを父のセンスで選んであげた。
1つ問題だったのは、父娘の二人旅だから、男女別々に入浴しなければならないこと。我が家の子供たちはこういう温泉には慣れているが、いつもは姉妹なので何かあったときに二人で助け合うことができた。
果たして長女一人だけで大丈夫だろうか――と心配していたら、なんと家族風呂が用意されていて、事なきを得たのだった。
夕食は大人用と子供用で内容が違って、その点だけは長女が不満を漏らしていた。いかにもお子様用といった感じで、ハンバーグとかエビフライとかが盛り付けられたキッズメニューは彼女はもう卒業気味なのだ。むしろ、大人が食べるのと同じ料理がいいと言う。
うらやましそうにパパの料理を眺める娘に、「パパので好きなのあれば食べていいよ」と言ったら、真っ先に伊勢海老とアワビを持っていかれてしまい苦笑い。トレードする形で、パパには唐揚げを恵んでくれたのだった。


宿泊客専用席から楽チン花火鑑賞
夕食の時間帯が早いのは「旅館あるある」と言えるが、この日はやたらと早くて17時台には食べ始めていた。実は、食後にビッグイベントを控えていたのだ。そして、それこそが今回の旅の最大のお目当てだった。
何かというと花火大会である。花火というと夏の風物詩だが、「熱海海上花火大会」は通年で開催されているのが特徴だ。しかも毎年、年間でかなりの回数の花火大会が開催される。2025年は計17回も予定されている。
頻繁に行われるせいか、熱海の花火大会は鑑賞するための環境が色々と整備されている印象だ。地域の旅館が合同で観覧エリアを抑えていて、宿泊客はそのエリアから花火鑑賞できることになっている。しかも行き帰りの移動は、専用バスが宿から会場まで送迎してくれるという至れり尽くせり状態。
場所取りのために早く行く必要はないし、帰りも満員電車に乗るのに並ばなくてすむ。花火大会の難敵ともいえる「混雑」をスムーズに回避できる、ある意味で裏技のような観覧方法である。
今回初めて参加したが、案内された観覧エリアがとびきりの特等席だったから歓喜した。堤防の最前列。すぐ目の前がもう打ち上げ場所。風向きによっては火の粉が降ってくる可能性があるので注意するように、とのアナウンスが流れていた。それぐらい近いのだ。
地域旅館によるこの鑑賞ツアーも手慣れた様子で、観覧エリア内にビールやラムネなど飲み物を売る屋台まで出ていた。それらを買ってきて、夜空を見上げる。目の前で次々と打ち上げられていく美しい花火を、娘と二人で静かに見入った。
今回のまとめ
翌日も暑かったので、外で観光という気にもなれず、帰り路の途中にあるショッピングモールに立ち寄った。クーラーが効いた屋内で買い物をしたり、フードコートで美味しいものを食べたり。旅とはいえ、都会的な過ごし方だ。
「ボンボンドロップシール」という立体的なシールが最近我が家で大ブームなのだが、近所のお店ではすでに売り切れてしまっているシールをモール内のショップで発見して、長女が大喜びしていた。ついでに次女のお土産も買っておいた。
一泊だけの小旅行ながら、密度の濃い旅になった。パパと二人だけなので、長女もいつも以上にベッタリという感じで、親密な時間を過ごすことができた実感がある。「もし一人っ子だったら、毎回こんな感じなんだろうなぁ」と密かに想像しながら帰路についたのだった。