東京・遊び場探訪【杉並冒険あそびの会@杉並区】多様な人との関わりで子どもの世界を広げる場所に

「プレーリーダー」という、遊びの環境を整えてくれるスタッフを配置した子どもたちの遊び場「プレーパーク」を知っていますか?東京都内でも多くの場所にあり、さまざまなコンセプトのもと、子どもたちの遊び体験に寄り添います。
今回は多摩市にある「遊びの森プレーパーク」を紹介します。
世田谷のプレーパークから刺激を受け誕生
今回紹介するのは、杉並区から「子どもプレーパーク事業」として委託を受け、区内3カ所の公園を中心に「杉並冒険遊び場☆のびっぱひろっぱ」を定期開催しているNPO法人「杉並冒険あそびの会」。
「『のびっぱひろっぱ』という名前は、遊びに来る子どもたちと一緒につけたんですよ」と笑顔で話すのは「杉並冒険あそびの会」の副代表理事の丹羽史泰さん。丹羽さんはプレーリーダーとしても活躍し、通称「にわっち」として子どもたちに親しまれています。

1979年に隣の世田谷区で日本初となる常設型プレーパークが誕生し、公園の概念を変えるほどに強烈な印象を受けた杉並区民の中からも、「プレーパークを作りたい」という希望が生まれたと丹羽さんは話します。ただ杉並区の場合は、昭和40年代から平成にかけて、概ねの小学校区に1つの児童館を整備していたので、同様に子どもを対象とする冒険遊び場(プレーパーク)をつくるのは難題だったのだそう。

「2000年ごろに、浜田山にあった銀行のグラウンドを杉並区が公園にするという計画が持ち上がり、そのためのワークショップが開催されました。その時に『子どもたちが自由に遊べる場所を作りたい』と考えていた人たちが結集し、活動を開始しました」
より多くの子どもたちが訪れやすいように
現在では柏の宮公園のほか、井草森公園や馬橋公園など、複数の公園で「杉並冒険遊び場☆のびっぱひろっぱ」を定期開催しているのだそうです。
「杉並区は北から西武線、中央線、井の頭線と横切るように電車が通っていますが、子どもたちにとっては特に区内の縦の移動がしにくい。そこで、それぞれの沿線上に冒険遊び場を開催するグループが生まれました。それらのグループが合流し、『杉並冒険遊びの会』へと発展しました」

活動は順調に拡大していたように見えますが、「資金面では決して余裕があるとは言えず、試行錯誤を続けながら運営してきた」と丹羽さん。
「転機は2014年に杉並区の協働事業提案制度へ応募したことと、『杉並冒険遊びの会』をNPO法人化できたこと。毎年、活動費を見通すことができるので、職業人としてプレーリーダーを募集したり、安全に配慮した人員配置や、プレーリーダーの育成もできるようになりました」
人選は慎重に、プレーリーダーの養成講座へ派遣も

「杉並冒険遊び場☆のびっぱひろっぱ」のプレーリーダーは、基本的に教員免許や保育士の資格を持っている人、もしくはそれに同等の資格を持っている人というように一定のラインを設けて採用。必要に応じて「日本冒険遊び場づくり協会」が開催する養成講座へ派遣も行っているそう。
保護者の立場で訪れていた人が杉並冒険遊びの会の会員となり、ボランティアとして参加し続けてくれているケースや、大学の「児童文化研究会」に所属する学生も活動に参加してくれていると丹羽さんは話します。

「子育てがひと段落して関わってくれる方は新たな楽しみを見つけられて、子どもたちにとっては世界が広がり、お互いWin-Winな関係ですね(笑)。プレーリーダーや学生たちのほかに、コマ回し名人やたき火の主みたいな大人がいて。最終的に困ったことがあった時には私のところへやってきます。大人(ボランティア)や学生の方など、多様な大人がいるという環境に魅力を感じています」
成果を求められない貴重な場所
そんな「杉並冒険遊び場☆のびっぱひろっぱ」のこだわりを尋ねると「許可が取れるところではたき火や木登りをしています。木登りができなくても、ロープを使って似たような遊びができる環境を整えます。土が掘れるところでは、泥んこ遊び。夏なら水遊びができる用意もします。あと人気の工作遊びでは、プロ仕様の質の良い道具をそろえていますね」と丹羽さん。

「本格的な道具をそろえる理由は2つあって、1つは切れ味の悪い道具は力が必要になり、かえってケガにつながりやすいため。もう1つは耐久性。」
工作遊びでは意識して「無理してやり切らなくてもいいよ」と伝えていると言います。

「今の時代、子どもたちは学校でも塾でも習い事でも、成果を求められることが多いですよね。大人は最後までやり切ることを推奨しがちですが、要はバランスの問題。それに大概の子どもは、学校などでの世界では『成果を出すこと』の必要性を理解しています。だからこそ、あえて『飽きちゃったらやめてもいいよ』って伝えています」

自宅で続きをやりたかったら材料を持ち帰っても、作りかけを置いていってもOK。「次に来たときには、作ったものが壊れちゃってるかもしれないけど、そしたらまた新しく作ってねって。材料はバラせば再利用できますし」と丹羽さんは笑顔で話してくれました。
大人も子どもも多様な人とコミュニケーションを取れる「杉並冒険遊び場☆のびっぱひろっぱ」は、安心して心を解放できる場所。肩の力を抜きたい人はぜひ一度遊びに行ってみませんか?

杉並冒険遊び場☆のびっぱひろっぱ
主な開催場所:
柏の宮公園 東京都杉並区浜田山2丁目5-1
井草森公園 東京都杉並区井草4丁目12-1
馬橋公園 東京都杉並区高円寺北4丁目35-5
※そのほか出張開催もあり。開催日はHPをチェック
開園時間:10:00~16:00
料金:無料

























