父娘で食べ歩き旅!ママ不在の休日は電車に乗って小田原へ

旅行作家の吉田友和さんによるコラム。小学生のお子さんがいる吉田家。ママは出張が多いので、パパとについてです。子どもだけで過ごす日も。「ならば、旅をすればいい!」そんな吉田さんが語る「パパだけ子連れ旅」、今回のお出かけ先は小田原(神奈川県)、食べ歩きの旅です。
神社でお参りしたときのこと。「神様には何をお願いしたの?」と長女に聞くと、「美味しいものがたくさん食べられますように」と長女が答えた。食い意地が張っていて笑ってしまった。
小学3年生の長女は、近頃ますます食いしん坊になってきた。それも、味覚に子どもっぽさがないというか、大人っぽい料理をむしろ好むので驚かされる。
エスニック料理や、辛いものにも抵抗がない。フィリピンではシニガンという酸っぱいスープを何杯もお替りしていたし、韓国では本場の激辛キムチを大絶賛していた。食への好奇心が旺盛なのは、旅人の素質といえるかもしれない。
ママ不在のとある日曜日に、父娘で小田原へ出かけたのは、そんな彼女の希望を叶えるためだった。「美味しい海鮮が食べたい!」と言われ、思いついた旅先が小田原だった。今回はその旅の模様をお伝えします。
小田原が日帰り子連れ旅におすすめの理由
小田原を選んだ理由は3つある。まずは、お目当てである「美味しい海鮮」が食べられそうだから。新鮮な海の幸を味わうなら、漁港がある町が真っ先に候補に挙がる。
そして、子連れでの行きやすさも理由のひとつだ。小田原は首都圏からのアクセスに優れ、日帰りで楽しむにはちょうどよい距離感。電車で行くならJRのほか、小田急線という手もある。
住んでいる場所にもよるが、とくに小田急線は子連れ旅には重宝する。ICカードでの乗車なら、区間にかかわらず1回50円と激安だからだ。JRだと都心から小田原までのIC利用子ども運賃が759円。往復になるとその倍だし、我が家のように子どもが二人以上いると差額はさらに大きい。
小田急線で小田原へ行くなら、特急ロマンスカーの利用がおすすめだ。全席指定で座って行けるから楽チンだし、普通列車にはない旅気分が味わえるのもうれしい。
ロマンスカーだと新宿から小田原まで1時間20分程度。Web予約によるチケットレス乗車が可能で、運賃とは別に特急料金が大人950円、子ども480円だ。便によっては途中の成城学園前や新百合ヶ丘、町田からも乗車できる。
さりげなくパパの趣味に付き合わせる
美味しい海鮮が食べられ、アクセスが良い。加えて、小田原を選んだ3つ目の理由として、適度に観光地で、子連れで楽しめる場所が充実していることも挙げられる。
到着して、まず向かった先が小田原城だった。かつて関東に覇を唱えた北条氏の居城は、小田原観光の定番スポットとなっている。天守は復元されたものだが、見るからに「お城」といったたたずまいなので、むしろ子ども心にも響きやすいのではないかと期待していた。
とはいえ正直なところ、お城なんて完全にパパの趣味ではある。「なんでこんなところに来たのよ!」と次女がぶうぶう文句を言い始めたので、あちゃあと頭を抱えた。残念ながら、彼女の心には響かなかったらしい。
実はこんなこともあろうかと、いちおう次善の策を用意していた。小田原城の敷地内には、「こども遊園地」が併設されているのだ。豆汽車やバッテリーカーなどの遊具があって、だいぶ前にも娘たちを連れて来たことがあった。
ところが行ってみると、こども遊園地は閉まっていた。台風被害により当面の間休園しているのだという。そんなぁ……。きちんと下調べをしてこないと、こういう失敗をする。
仕方ないので、手裏剣投げ体験をしてみることにした。これぞ、お城らしいアクティビティといえる。1回200円とお手頃だ。シュッ、シュッと手裏剣を投げているうちに、次女も機嫌を直してくれたのだった。
ついでに紹介すると、小田原はほかにも子ども連れで楽しめるスポットが色々ある。自然の中でのびのび遊びたいなら「こどもの森わんぱくらんど」は定番だし、屋内なら知的好奇心を満たせる「生命の星・地球博物館」もおすすめだ。
あとは体験系の施設として、「鈴廣かまぼこの里」も楽しい。娘たちがまだ未就学児だった頃に、ちくわづくりに挑戦したなぁ。こちらは予約制なので要注意。

並ぶお店はいいお店なのか
お城を後にして、いよいよ美味しい海鮮へ。向かった先は「漁港の駅 TOTOCO小田原」という商業施設だった。小田原漁港のすぐ近く、相模湾に面した立地は旅情を感じられていい。最寄駅は小田原駅の1つ隣の早川駅だ。
どんなところかというと、いわゆる道の駅のような施設を想像するとわかりやすいだろう。お土産物屋や飲食店があって、観光客向けに物欲や食欲を満たしてくれるスポット。漁港の駅というだけあって、地場産の鮮魚や水産加工品などが充実している。
この施設の2階にある食堂で海鮮丼を食べようというのが今回のプランだった。ところが、到着すると長い行列ができていて回れ右したくなった。お店の前の通路から階段を下る形で列が伸びていて、最後尾はなんと建物の外。
「現在の待ち時間は60分です!」などとお店の人がアナウンスしているのを聞いて、心が折れそうになった。日曜のお昼時なのである程度並ぶのは覚悟していたが、まさかここまでとは……。
「どうする?」と娘たちに聞くと、「せっかく来たんだし並ぼう!」と長女が即答した。行列が大の苦手なパパとしても、かくなるうえは腹をくくるしかない。
日々SNSで情報収集している彼女は、トレンドに敏感というか、流行りモノにめっぽう弱い。人気の行列店に率先して突撃するタイプなのだ。「これだけ並んでいるということは、きっと美味しいお店に違いない」という思考回路である。
きっちり1時間並んで、ようやく入店。メニューが豊富で、どれにしようか迷うほどなのだが、よく見るとすでに売り切れとなっているものもちらほら。これは出遅れたかもしれない。
どれも美味しそうなのは言うまでもないが、加えて見た目のインパクトがあるのも特徴的だ。丼の上に、あふれんばかりにネタが盛られている。映えを意識した盛り付け。文字通り、山盛りである。
長女は悩みに悩んだすえ、いくらとサーモンの丼に決めた。パパはマグロ丼だ。一方で次女はというと、うどんを食べるという。確かにメニューにうどんもあるが、1時間も並んだ海鮮丼のお店なのに、うどんである。こういうところで保守的なのはいつものことで、姉妹で好みが全然違うのだった。
食後は一階の土産物コーナーを物色。お土産にと長女が選んだのは玉子ガニだった。小さなカニをカリカリにしたスナックで、小三にしてはなかなか渋いセレクトだ。彼女は、こういうお酒のおつまみ的な食べ物には目がない。
そして、次女はというとアイスクリーム屋に吸い寄せられていた。ある意味、予想通りの展開ではある。うどんは食べ残していたのに、アイスはぺろりと平らげているのを見て苦笑してしまう。

今回のまとめ
まだまだ食べたりないと長女が言い出したので、小田原駅へ戻ってきたあと駅前にある「ミナカ小田原」へ立ち寄った。宿場町を模した和テイストのつくりが特徴で、飲食店や土産物屋が集まっている比較的新しめのスポットだ。
とくにアテはなかったが、相模屋という老舗のいなり寿司店に行列ができていたのを見て、ビビビッと来たのか長女がそこに並ぶという。「餅いなり」という、寿司の代わりに餅が入った一品が人気らしく、買って店の前のベンチで食べた。
ちなみに次女はというと、餅いなりには興味を示さず、一人でミスドのポンデリングを食べていた(ミナカ小田原の前に偶然ミスドがあった)。
姉妹でも趣向が違うのがおもしろい。ともあれ、これぞ女子の食べ歩きという感じがして、パパとしてもなんだか新鮮な気分で楽しめた日帰り旅だった。