父娘でアニメの聖地巡礼へ!名古屋に来たらアイススケート滑っちゃう?

旅行作家の吉田友和さんによるコラム。小学生のお子さんがいる吉田家。ママは出張が多いので、パパと子どもだけで過ごす日も。「ならば、旅をすればいい!」そんな吉田さんが語る「パパだけ子連れ旅」、今回のお出かけ先は名古屋!父と娘でアニメの聖地巡礼です。
家族旅行ながら、何らかの理由で現地では別行動というケースはないだろうか。いきなり「パパだけ子連れ旅」はハードルが高いと感じる人も、それぐらいなら対応できるかもしれない。今回紹介するのは、そんな話だ。
とある3月の週末、名古屋に出張する妻に付いて行った。出張といっても業務が発生するのは日曜の日中だけで、土曜はフリーだという。それなら結構楽しめそうなので便乗することに決めた。
土曜の早朝に、一家4人で新幹線に乗って名古屋へ向かった。昼は「ジブリパーク」を満喫しつつ、夜は「世界の山ちゃん」で名物の手羽先に舌鼓を打った。そうして一泊した翌日、仕事があるママと別れ、つかの間のパパだけ子連れ旅が始まったのだった。
子連れでアニメ聖地巡礼を楽しむコツ
実は、名古屋へ来たならば、行ってみたいところがあった。「大須スケートリンク」である。TVアニメ『メダリスト』の主要舞台として、実在するこの施設が登場するのだ。要するに、「聖地巡礼」というやつだ。
『メダリスト』がどんな作品かざっくり書くと、小学5年生の少女がフィギュアスケートの五輪メダリストを目指す内容で、涙なしでは観られないスポ根的な熱い展開と、美麗なフィギュアスケートの映像が話題になっている。
元々はパパがファンだったのだが、せっせと布教したら娘たちも見事にこの作品にハマってくれた。米津玄氏の主題歌をお風呂で歌っていたり、部屋で二回転ジャンプの真似事をしたりしているほどだ。「メダリストのスケート場へ行こうよ!」と誘ったら、娘たちはノリノリで付いてきてくれたのだった。
こういった子連れ聖地巡礼旅は、これまでもしばしば実行に移してきた。パパは基本的にオタクなので、むしろ得意分野とさえいえる。そこで、子連れで聖地巡礼旅をする場合のコツのようなものを少しまとめてみたい。
作品熱が冷めないうちに行く
まず大事なのが、行くタイミングを見極めることだ。結論として、気持ちが盛り上がっているなら、できるかぎり早く行った方がいい。聖地巡礼の場合、作品への熱が高ければ高いほど、旅の満足度が高まるからだ。
というより、逆に遅くなればなるほど、旅のモチベーションは下がってしまう。子どもは飽きっぽいので、興味の対象がコロコロ変わる。親としては、現在の子どもの推しが何なのかはキャッチアップしておきたいところだ。
追いかける作品自体の鮮度が高いとなおいいが、それはそこまで重要ではなかったりする。たとえ古い作品でも、聖地がなくならない限りは楽しめる。大切なのは、子どもたちがその瞬間いかに夢中になっているか、である。
親も一緒に推し活をする
聖地巡礼として訪れるスポットは、観光地ではないことも多い。というより、地元の人以外は知らないようなローカルな場所が大半だったりもする。なんてことはない日常の風景が、アニメなどの作中に登場したことで突然脚光を浴びるのがよくあるパターンだ。
それゆえ、作品のファンにとっては「聖地」だとしても、そうでない人にとってはありがたみが良くわからない場所という現象が起きる。旅を楽しむためには、作品へ対する愛こそが前提条件となるのだ。
何が言いたいかというと、子どもと聖地巡礼をするのなら、親自身もその作品を好きになるのが理想だということ。TVアニメであれば、せめてその場所が登場する回ぐらいは「履修」しておきたい。
自分がまったく興味がないのに、子どもへ付き添う形で行ってもあまり楽しめないだろう。その点うちの場合は、心配はいらない。逆に、パパの推し活に子どもを巻き込むようなスタンスなのだ。同じコンテンツが好きな仲間として、親子で一緒に聖地巡礼できるとしたらこれほど尊いことはないだろう。

聖地でリアルな『メダリスト』体験を!
目的地のアイススケート場は、大須観音のすぐ近くに位置する。名古屋の中でも大須はとくになじみ深い地域で、割と頻繁に来ているのだが、アイススケート場があるのは知らなかった。
せっかく来たので、まずは大須観音でお参りを済ませた。ついでに、近くにある100均で手袋を購入。滑っていて転んだときに、手袋をしているかどうかは結構違う。
そう、今回は単なる見学ではなく、自分たちもアイススケートをするつもりなのだ。聖地巡礼ができて、アイススケートも楽しめる、一石二鳥のプランである。
スケート場に到着したら、建物の外観が作中とまったく同じなのでテンションが上がった。1階にある「コメダ珈琲店」や、大きな階段の手すり(第1話に印象的なシーンあり)なども、アニメそのままだ。
中へ入ると、作品のポスターや、キャラクターのスタンディパネルが展開されていて、さらに気持ちが高まった。もちろん、キャラと同じポーズを決めながら、お決まりの記念撮影を済ませた。
このアイススケート場、著名なフィギュアスケート選手を何人も排出した由緒ある施設らしい。受付の近くにショーウィンドウがあって、本物のメダリストたちの輝かしい記録が展示されている。彼ら、彼女たちが実際に履いていた歴戦のシューズなんかも展示されているので、ファンにはたまらない空間といえそうだ。
利用料は貸靴付きで大人2,000円、子ども1,400円。コインロッカーに荷物を詰めたりしていると、早々に準備を済ませた娘たちが早く行こうと急かしてくる。1秒でも早く滑りたい、という雰囲気なのをなだめ、念のためヘルメットを着用させた。
リンクへ繰り出してまず、「広い!」と思った。日曜なので人はそれなりに多いが、空間にゆとりがあってイモ洗い状態ということはない。そして、「寒い!」とも感じた。氷の世界なのだから当たり前なのかもしれないが、アイススケート場なんてほぼ初見なので素直にそんな感想を持った。
そして、実際に足を踏み出してみて、「怖い!」と心の中で叫んだ。屋外などで冬季限定のイベントとして開催される簡易的なスケートは経験があるが、ちゃんとしたアイススケートは何年ぶりだろう。情けない話だが、正直なところ、まっすぐ進むだけでも精一杯だった。
そんなパパを尻目に、娘たちはあっという間に上達していった。周回遅れのパパは放置して、2人で自由に楽しんでいる。絶対に転びたくない、といった様子でおそるおそる先へ進む長女と、何度も転びながらも臆することなく前へ進む次女。姉妹でも性格の違いが出ていておもしろい。
周囲を見ると、うちの子よりも小さな子たちがするする滑って華麗にジャンプを決めていく。きらびやかな衣装を身にまとった子もいる。アニメさながらのリアルな光景を前にして圧倒されっぱなしである。
娘たちは、少し前にママと3人でもアイススケートを経験していた。「パパとママ、どちらが上手?」と聞いたら、2人そろって「ママ!」と即答したので、ぐぬぬと悔しい気持ちになった。

今回のまとめ
「そろそろ帰ろうよ」「あと一周だけ!」というやりとりを何度も繰り返し、ようやくリンクを後にしたときには、もうお昼を過ぎていた。スケートシューズを脱いで軽くなった足で、近くの「スガキヤ」へ向かった。
名古屋のソウルフードなどと称されるスガキヤは、手ごろな値段でラーメンとアイスクリームが食べられるのが魅力だ。食いしん坊の長女は、さらに欲張ってチャーハンまで付けたフルセットを堪能していた。
そうこうしているうちに、ママから仕事が終わったと連絡が入った。大須の商店街をぶらつきつつ、ママとも合流して名古屋駅へ。そうして新幹線に乗って東京へ帰ってきたのだった。
慣れない運動をしたせいか、翌朝は腰が痛かったのはここだけの話だ。よくよく考えたら、前日に訪れたジブリパークもアニメ関連の施設で、趣味全開の名古屋旅になった。