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【警察庁に聞く】2026年4月からどう変わる? 自転車の「青切符」制度導入、改めて知っておきたい歩道通行できる場合のルールほか

【警察庁に聞く】2026年4月からどう変わる? 自転車の「青切符」制度導入、改めて知っておきたい歩道通行できる場合のルールほか

2026年4月から自転車にも「青切符」制度が導入されるのを知っていますか?「青切符」制度とは「交通反則通告制度」のことで、比較的軽微な交通違反について、刑事処分に代えて反則金の納付という形で処理するものです。2026年4月から改正道路交通法が施行されることに伴い、16歳以上の自転車運転者の交通違反が「青切符」制度の対象となります。
この制度導入により、子育て家庭ではどのようなことに注意すべきなのでしょうか。警察庁交通局交通企画課 理事官の池田雄一さんに、制度導入の背景から具体的なルール、親子でルールを確認するポイントまで詳しく話を聞きました。

制度導入の背景は自転車事故の「高止まり」

――なぜ今、青切符制度が導入されるのか、その背景や狙いを教えてください

池田さん:まず背景として、交通事故自体は年々減ってきているものの、自転車による交通事故は高止まり、交通事故全体に占める割合は若干増加傾向にあるという点があります。

では実際に自転車に乗っていて事故に遭うのはどういうケースが多いかというと、自転車側に交通ルールを守れていない、自転車側にもなんらかの違反がある割合が非常に高いのです。そのため、自転車を乗る人にもしっかりとルールを周知し、徹底してもらうことが必要だという観点から、導入することになりました。

――青切符制度が導入されることにより、子育て家庭の安全面での効果として、どのようなことが考えられますか?

池田さん:ルールの遵守が図られるようになると、お子さんが小さい家庭では、大人はもちろんお子さん自身が歩道などを歩いている時に事故に遭うリスクが減ると考えられます。またお子さん自身が被害に遭うだけではなく、逆に事故を起こして加害者になる可能性もあるんですよね。高額な賠償金を請求されることもあります。そういった意味でも、これを機に、保護者の方と共にルールを改めて確認することで、加害者になるリスクも減らせるのではないかと考えています。

ルール変更のポイントは「処理方法」の選択肢が拡充

――では実際にルールはどのように変わるのでしょうか?

池田さん:まず、今回の青切符制度導入によって、自転車の取り締まりが特別に強化されるわけではありません。何が変わるのかというと、取り締まりが行われた場合の処理方法の選択肢が増えるんですね。

今まで、自転車のルールに違反して警察官に止められた場合、「今後こういうことはしないでくださいね」という注意と「指導警告票」を渡すか、より悪質で危険な場合には赤切符を切るなどする刑事手続による処理しかありませんでした。

今回青切符制度が導入されることで、自動車と同じように赤切符だけでなく、青切符を切るという選択肢も増えるということなんです。交通ルールに変更はありません。

――赤切符に比べて処理手続きが簡素化されるということでしょうか?

池田さん:そうですね。従来の赤切符では現場で取り調べが行われ、調書を取られたり見分が行われたり、場合によっては出頭して裁判官や検察官の取り調べを受け、罰金を支払うという一連の長い手続きが必要でした。それが青切符導入によって手続きが簡素化され、現場で迅速に処理できるようになります。

今までと変わらず現場では指導警告を行うのが基本ですが、今にも事故を引き起こしそうといった悪質・危険な運転に関しては、しっかりと検挙を行いますよ、ということなんですね。

青切符の対象となる違反行為とは

――では、青切符の対象となる違反行為とは具体的にどのようなことなのでしょうか

池田さん:例えばながらスマホ運転や、踏切の警報が鳴っているのに線路内に立ち入る行為、それからブレーキのない競技用自転車での走行も違反です。基本的な部分では信号無視や一時停止違反、侵入禁止区域への逆走なども改めて注意していただきたいですね。

一時停止違反など、なぜそういうルールが定められているかというと、やはり事故に遭わないためなんですよね。特に「止まれ」と書いてある逆三角形の赤い標識と停止線があるような場所は、出会い頭の事故が一番多いので、そういったところはお子さんに限らず大人もしっかりと守っていただければと思います。

一方で極端な例を挙げると、車も歩行者もいないような真夜中に信号無視を咎められたとして、もちろん違反ではあるんですが、こういう場合は従来通り指導警告になると思われます。

青切符の対象になるのはどのようなケースかというと、例えば違反行為によって車両が急ブレーキや急ハンドルを切ったり、歩行者を飛び退かせたり、事故直前と言わざるを得ないような状況などですね。

また警察官が「違反です。止まってください」と言っているのに無視してそのまま逃げるなどの行為をすると、青切符の取り締まりの対象になります。

あくまでも事故やルール違反を起こさせないという抑止力的な意味が大きく、交通ルールの定着を図るためにも、基本は指導警告、悪質な場合は検挙ということになります。

運転免許を持たない人はどのようにルールを確認する?

――最近では運転免許を持たない人も増えており、正しいルールをどのように学べば良いのかわからない人もいると思います。知らずに違反することがないよう、どのようにルールを学べばよいでしょうか?

池田さん:今、警察庁では「自転車ルールブック」という冊子を作成し、基本的な交通ルールをまとめています。「なぜこういうルールが定められているのか、こういうところでの事故が多いから、こうした方がいいんですよ」という観点で作られており、警察庁のホームページで確認できます。

「自転車ルールブック」についてはこちら

官民連携協議会でガイドラインも策定中

池田さん:また、このルール改正に伴って、安全教育を充実させるべきという声も多くいただいたことから、教育機関や自転車の販売事業者、その他さまざまな関係団体や省庁、有識者を集めて官民連携協議会を立ち上げました。その中で自転車の交通安全教育のガイドラインも策定中で、2026年4月の施行前には完成予定です。

自転車は未就学のお子さんから小・中・高校生、成人や高齢者など、ライフステージに応じて、押さえておくべきポイントも変わってきます。保護者の方や学校、自治体など、いろいろな場面で方針となるガイドラインをまさに今取りまとめているところです。

保護者から子どもへの現場指導も大切

池田さん:お子さんには、保護者の方から実際に走る現場で「ここは一度止まろうね」といったように、ルールを指導していただくことが非常に良いと思っています。

特に子どもは大人の行動を真似る傾向にありますから、お子さんを自転車の後ろに乗せている保護者の方も、自分自身がきっちりルールを守っているのを日々見せていただきたいですね。

親子で走れる場所が違う?走行場所の判断基準

――自転車の走行場所については「車道が原則」ですが、例外が認められているケースもあります。小さな子どもを持つパパ・ママが特に知っておきたいルールを教えてください

池田さん:そうですね。自転車で歩道通行ができるのは13歳未満の子どもです。また車道の通行量が多い、幅が狭いなど事故の危険が高い場所、歩行者と自転車のマークがある標識で歩道通行可能とされている場所ですね。そういう場合は歩道を走れますが、気をつけていただきたいのが、「歩道は歩行者のもの」ということです。

自転車が歩道を走る場合は、車道側をゆっくり走るということが定められています。歩行者にぶつかりそうになったら、一時停止して道を譲るのが原則です。例えば歩行者で賑わう商店街のような場所だと、歩行者を縫うように走行するのが一番危ないので、自転車を降りて、一緒に歩いていただいたほうが良いですね。

また電動アシスト付きの自転車などはスピードも出やすいですから、「歩行者に気をつけて、車道側をゆっくり走る」ということを徹底していただければと思います。

――13歳未満の子どもと一緒に自転車を走らせる場合、保護者は歩道を走ることができるのでしょうか

池田さん:いいえ、後ろについていく保護者の方は通常の自転車ルールが適用されます。お子さんが歩道の車道側を、保護者の方が車道を走るという状況になる場合もありますが、もし自転車道路などが整備されていて安全に自転車が走行できるような広い車道の場合、練習も兼ねてお子さんと一緒にそちらを走っていただいても良いと思います。

――車道と歩道でどちらを走れば良いのか迷った時、どのように対処するのが良いですか?

池田さん:そうですね。車の通行量が多いなどで危ない場合であっても、絶対に車道を走らなければいけないということではないですから、交通状況から車道を走るのに危険を感じる場合は、お子さんと一緒に歩道を安全に走っていただければと思います。

ヘルメット装着は自転車運転の「当たり前」に

池田さん:それから今後お子さんが大きくなって、中高生になると、途端にヘルメットの着用率が下がるんです。そうすると事故での死亡率や怪我をする割合が上がります。

中学生までは結構被ってくれますが、高校生になるとヘアスタイルを気にしたりするからか、着用率がぐっと下がります。幼児のお子さんを育てる保護者の方には、小さい頃からヘルメットをつけて、「自転車に乗る時はヘルメットをかぶる」というのを当たり前にしていただけると良いですね。

まとめ

子育て家庭では、まず大人が正しいルールを理解し、実践することから始めてみてください。普段使い慣れた道の道路標識を見直すことで、今まで見逃してしまっていたルールなどに気づけるかもしれません。「なぜここにそのルールがあるのか」をお子さんと一緒に考えつつ、2026年4月の制度開始まで、家族で自転車の安全ルールを見直してみませんか?

道路交通法の改正についてはこちらから


企画・編集/&あんふぁん編集部、文/山田朋子

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