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約1300年の歴史を持つ奈良市が「AIと人によるハイブリッド相談窓口」をスタート

約1300年の歴史を今に伝える街並みや、“聖域”として1100年以上前から守られてきた春日山原始林が広がるなど、歴史と自然に恵まれた奈良市。同市が実証実験としてAIを活用したLINE相談をスタートさせたと聞き、あんふぁん編集部が奈良市を訪れました。
奈良市は、2024年版「共働き子育てしやすい街ランキング」(日本経済新聞社・日経BP)で関西エリア第2位を獲得し、過去には1位になるなど安定して上位にランクインしています。そんな奈良市が始めたAIを活用したLINE相談とは? 奈良市が推進している子育て施策とは? 奈良市子ども未来部子ども育成課、子ども政策課の担当者に話をうかがいました。
24時間365日子育ての悩みに寄り添うAI相談窓口「AIちゃん」が登場
――AIを使った子育て相談ができると聞きました。
令和7年5月から12月末まで、生成AI「AI(あい)ちゃん」と有人対応による“AIと人のハイブリッド子育て相談”「おやこよりそいチャット奈良」の実証実験を行っています。
実は、児童虐待を含む相談の件数は全国的に増加傾向に。そしてそのSNS相談対応自治体の結果から、相談の時間帯は夜間に多いことが分かってきました。ただ、従来からの奈良市の相談は人が対応するため、どうしても日中に限られていました。そこで、人員を割けない夜間にも対応するため、24時間稼働する相談窓口「AIちゃん」を試験的に導入しました。日中は専門職員による対応もセレクト可能。それ以外の時間帯は「AIちゃん」が対応しています。
――「AIちゃん」はどのような対応をしてくれるのでしょうか。
「AIちゃん」は、優しく寄り添うアドバイスが得意です。悩みを聞き、共感したり励ましたりしてくれます。相談された方からは「優しい言葉に涙が出た」「分かってもらえるだけでうれしい」「頑張る力をもらえた」といった声をいただいています。9月末時点での登録者数は446人と増加傾向にありますので、気軽に相談できる場として市民に受け入れられてきていると思います。緊急性の高い相談があった場合は、こどもセンターへの連絡を促し、行政と連携する仕組みを導入しています。

「しみんだより」や相談窓口で引き続きPRしていきますので、12月末までにたくさんの方に利用していただき、効果検証後も継続できたらうれしいですね。
146事業の展開で子どもが幸せに成長できるまちの実現へ
――第三期「奈良市子どもにやさしいまちづくりプラン」について教えてください。
奈良市では、平成27年3月に第一期奈良市子ども・子育て支援事業計画「奈良市子どもにやさしいまちづくりプラン」を、令和2年3月に第二期を策定・公表し、「子どもにやさしいまち」の実現に向けてさまざまな取り組みを進めてきました。しかし、少子化傾向に歯止めがかからないことや、子どもの貧困や虐待、不登校、ヤングケアラーなどが増加傾向にあることから、引き続き令和7年4月に第三期をスタートさせています。市内で暮らす全ての子どもたちが今を幸せに生き、夢と希望を持ちながら成長し、保護者も安心して子育てができる環境の充実を目指して作った計画で、令和12年3月までの5年間で146の事業(令和7年10月時点)を進めるものです。

――具体的にはどんな事業を進めているのでしょうか。
例えば、第二期では「第2子以降の保育料無償化」「子ども医療費助成対象年齢を高校生まで拡大」「公立園におむつの定額サービス導入」など経済的支援や環境整備等に取り組んでいます。さらに、市役所内では職員の育休取得率を向上させ、企業向けにはワークライフバランスセミナーも実施するなど、育児や多様な働きかたを推進するとともに、少子化・晩婚化対策として婚活支援にも取り組み、アバターを使った「メタバース婚活」や、婚活アプリのセミナーも実施しました。

第三期では、これまで別に定めていた「子どもの貧困対策計画」に加え、新たに「子ども・若者計画」を内包した総合的な計画としたので、子ども施策全体として統一的に横串を刺すとともに、ライフステージに応じた切れ目のない支援を積極的に進めていきます。
なお、策定段階では、「子ども会議」で小学生から高校生までの意見を収集。「相談できる場所を増やしてほしい」「公園を整備してほしい」「地域交流を深めたい」「防犯カメラを増設してほしい」といった子どもたちの声を施策に反映させています。

146事業を一歩ずつ着実に進めることで、子育てファミリーにとってより魅力的なまちへと進化中の奈良市。引き続き注目したいですね。
まとめ
“AIと人のハイブリッド子育て相談”は、24時間365日相談できる気軽さや安心感から今後ますます注目を集めそうです。一方で、子どもの貧困対策や少子化対策、子どもの声を施策に反映させた「奈良市子どもにやさしいまちづくりプラン」からは、社会全体で子どもと子育て家庭を支えようという思いが感じられました。自分自身が子育てするまちとして、奈良市を候補に加えてみませんか?
企画・編集/&あんふぁん編集部


























