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【東京都】子どもと一緒に始める省エネ習慣「HTTアクション」で家計も地球も守る暮らし方

夏の猛暑による電力需給逼迫など、エネルギー問題はもはや私たちの生活と切り離せない課題となっています。東京都が推進する「HTTアクション」は、電力を「へらす」「つくる」「ためる」の3つの視点で省エネを実践する取り組み。子育て世代にとっても、電気代の節約や防災対策につながる身近なアクションです。そこで東京都 環境局 気候変動対策部 地域エネルギー課長・上原麻衣子さんに、「HTTアクション」についてや、家庭で今日から始められる省エネのヒントを伺いました。
脱炭素社会の実現に向けた都民の行動変容を促すキャンペーン
──「HTTアクション」とはどのような取り組みなのでしょうか。その背景や目的について教えてください
HTTとは、電力を「へらす(H)」「つくる(T)」「ためる(T)」の頭文字を取った造語で、東京都が推進している脱炭素社会の実現に向けた、都民の方々や事業者の方々への行動変容を促すためのキャンペーンです。
「へらす」の取り組みとしては、省エネ家電への買い替えや省エネ行動によって電力使用量自体をへらすこと。「つくる」については太陽光発電の設置などによって再生可能エネルギーで電力を生み出すこと。そして「ためる」は、蓄電池や電気自動車(EV)を活用して、例えば太陽光発電で昼間作った電気を蓄電池やEVにためて夜間に使用したり、災害時に活用できるようにすることです。この3つの視点で行動を促していただけるようにというキャンペーンになっています。
2022年度からスタートしたこのキャンペーンですが、当初は電力需給の逼迫やウクライナ危機などを背景に、エネルギーの安定的な確保のために、節電をお願いするところから始まりました。
最近も夏場や冬場のリスクは依然として内在していますが、電力需給逼迫の状況が緩和されてきています。そこで目的は脱炭素社会の実現へとシフトしつつありますね。
今年度のポスターのキャッチフレーズも「へらすの次はつくる、ためる」としており、今年4月から東京都で太陽光発電の設置義務化が施行されたこともあって、「つくる」「ためる」への訴求を強化しているところです。省エネや節電については都民の方々の行動変容がある程度進んできたという認識のもと、「へらす」は引き続き継続していただきながら、「つくる」「ためる」にもぜひ取り組んでいただきたいというメッセージを発信しています。

親子で取り組める身近な省エネアクション
──小学生までの子どもがいる家庭が、日常生活の中で取り入れやすいHTTの実践ポイントを教えてください
お子さんでも取り組みやすいものとしては、やはりHTTの中の「へらす」、つまり省エネ行動のところかなと思います。例えば、エアコンのフィルター掃除や冷蔵庫の設定温度を季節によって変えることなど、これから大掃除の時期にもなりますので、お子さんと一緒にお手伝いしながらやっていただくといいですね。
ただ「ホコリを取ろうね」というだけでなく、「お掃除すると温かい空気や冷たい空気がつくりやすくなるから省エネになるんだよ」と説明したり、「冷蔵庫の設定を夏になったら中か強に、冬になったら弱でいいね」といった形で、お子さんと一緒に実践していただくのがおすすめです。
環境局では「わが家の環境局長」という事業も行っていまして、主に小学生のお子さんにおうちの環境リーダーになってもらうという取り組みです。さまざまなイベントを親子で参加することなどを通じて、「テレビを見ていないから消すね」とか「冷蔵庫は開けっ放しにしないで早く閉めようね」というように、家族との会話を通じてエコアクションを実践していただくことをめざしています。
環境局のホームページでは「わが家の環境局長」の任命証をお届けする企画も行っていますので、ぜひチェックしてみてください。
家計にも防災にも、そして健康にもメリット
HTTアクションに取り組むことで、環境面以外に期待できるメリットはどのようなものがありますか
やはり一番は家計負担の軽減につながる可能性が高いという点ですね。また最近では防災対策という意味でも注目されています。例えば「つくる」「ためる」の太陽光発電や蓄電池、それからEVを蓄電池の代わりとして活用していただくことが、停電などの災害時のレジリエンス強化にもつながります。
東京都としては建物の断熱にも非常に力を入れて推進しています。断熱改修や断熱強化は夏・冬の快適性もぐっと上がりますし、冬場はヒートショック対策としても有効です。結露によるカビの発生なども防げるので、快適性や健康面でも効果があるというところもポイントです。お子さんにとっても快適な環境づくりに役立ちますので、ぜひ取り組んでいただきたいですね。
太陽光・蓄電池の導入拡大と子育て世代へのアプローチ強化
──今後、東京都として予定されているHTT関連の施策や、強化していきたい取り組みについて教えてください
先ほども申し上げたように、「つくる」「ためる」へのシフトに力を入れています。太陽光パネルの設置や蓄電池に対しては、東京都は非常に手厚い補助金もご用意していまして、2035年までに都内で設備容量350万キロワットの太陽光発電を設置するという目標も掲げています。
こちらは引き続き、太陽光パネルの導入拡大から、蓄電池やEVを活用して、発電した電気をためる取り組みについて、都民の皆さんや事業者の皆さんにお願いしていきたいと思っています。
新築住宅では「東京ゼロエミ住宅」として、断熱・省エネも太陽光も蓄電池も、新築時に導入していただくための補助金もありますし、既築の住宅でも窓の二重窓化や断熱改修などに非常に手厚い支援をさせていただいています。住宅の断熱・省エネと、先ほど紹介した災害レジリエンスの強化、これらをセットで今後も推進していきます。
また、広報戦略としても工夫をしています。実は子育て世代の方々は、テレビや動画を見る時間もなかなか取れないという状況もあり、なかなか情報が届きにくいと感じていました。
そこで、30~40代の子育て世代や若い方に向けた情報発信を強化したり、若い世代に認知度が高いタレントの方を起用し、CMや動画をお子さんが真似したくなるような、耳に残るような内容にして、子育て世代の方にも親しんでいただけるようにしています。
親子で始める小さな一歩が、未来を変える
最後に、子育て世代に向けて、「今日から始められる一歩」やメッセージをお願いします
小学生のお子さんや未就学児のお子さんがいらっしゃる方でしたら、やはり親子で取り組んでいただきたいですね。まずは電気をこまめに消すとか、フィルターを親子で掃除するといったことを、親子で一緒に実践していただきたいと思います。
もちろん、太陽光や蓄電池についても、環境面だけでなく家計や防災の面でも良い効果があるということをご理解いただいた上で、「へらす」の次は「つくる」「ためる」というところにも取り組んでいただけると非常にありがたいです。
気候危機の深刻さは、夏の猛暑などで改めて実感されている方も多いと思います。今年の夏も健康への影響が心配されるほどの暑さで、熱中症で救急搬送される方も非常に多くいらっしゃいました。こうした状況は今後も続くと予想されます。
小さな一歩の積み重ねが、大きな変化につながっていきますから、お子さんたちの未来のためにも、できることから始めていただければうれしいですね。
まとめ
HTTアクションは、電力を「へらす」「つくる」「ためる」の3つの視点で、無理なく暮らしの中に取り入れられる省エネの取り組みです。身近なアクションによる電気代の節約から、防災対策、健康的な住環境づくりなど、環境面以外のメリットも多いのも特徴です。親子で一緒に、できることから始めてみませんか。
企画・編集/&あんふぁん編集部、取材・文/山田朋子

























