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「もったいない」が家計と未来を救う!親子で始める「食品ロス削減」の第一歩

「食品ロス」という言葉を耳にする機会が増えましたが、日々の育児や家計のやりくりに追われる子育て世代にとって、どこか遠い環境問題のように感じてはいませんか。実は、家庭での食品ロス削減は、環境への貢献だけでなく、ダイレクトに家計のメリットにつながる身近な取り組みです。
今回は、消費者庁 食品ロス削減推進室で食品ロス削減の舵取りを担う室長・田中誠さんに、日本が直面する課題や、今日から家庭で実践できるヒントについて詳しくお話を伺いました。
日本では世界の食料支援の1.3倍もの食品が捨てられている
――日本が国を挙げて食品ロス削減に取り組む背景と、その社会的意義について教えてください
田中さん:食品ロスとは、まだ食べられるのに捨てられてしまう食品のことで、2023年度の推計では年間464万トンにのぼります。国連が世界の飢餓に苦しむ人々に届ける食料支援が年間370万トンですから、その約1.3倍もの量を日本だけで捨てているわけです。
この推計値を国民1人あたりに換算すると、毎日おにぎり1個分相当の食べ物を捨てていることになるんです。

背景として大きいのは、日本の食料自給率がカロリーベースで38%しかなく、海外から大量に輸入しながらその多くを捨てているという現実です。
また京都市が試算(※)した家庭からの食品ロスは、4人世帯で年間約5万6000円の損失になるとのこと。昨今の物価高で1世帯あたり年間約3万6000円の負担増が見込まれていますが、京都市の試算をもとに単純計算すると、食品ロスを60%減らせれば物価高による負担増をカバーできる可能性があります。

2015年にSDGsが採択され、2030年までに世界の食料廃棄を半減させる目標が掲げられたことが大きなターニングポイントとなりました。これを受けて日本でも2019年に食品ロス削減推進法が成立し、翌年に基本方針を策定。2000年度を基準年として事業系・家庭系それぞれの食品ロスを半減させることを定めています。その後、事業系については2022年度推計では半減目標を前倒し達成したため、昨年3月の基本方針見直しで目標を60%削減に引き上げています。
一方、みなさんの家庭からでる食品ロスは、目標まで、あと約20万トン減らす必要があるんです。
「食べきる」「持ち帰る」「寄付する」が新たな3本柱
――現在、消費者庁が重点的に進めている施策や、これまでの成果についてお聞かせください
田中さん:従来から続ける取り組みとして、買い物前に冷蔵庫をチェックするなどして「買いすぎない」、「作りすぎない」、「食べ残さない」といった消費者向けの啓発があります。買い物をする際、商品棚の手前から取る行為「てまえどり」は定着しつつある印象がありますね。
事業者に対しては、賞味期限が3分の1を過ぎると小売への納品ができなくなる「3分の1ルール」の見直しや、値引き販売による売り切りの推進をお願いしてきました。これらの取り組みが一定の成果を上げ、特に事業系の食品ロスは着実に減少しています。
外食時の「食べ残し持ち帰り(mottECO:モッテコ)」の普及も進めています。食中毒のリスクから以前は敬遠されていましたが、2024年に食べ残し持ち帰り促進ガイドラインを作成し、安全に持ち帰るためのルールを明確にしました。外食での食べ残しはロス全体の大きな要因であるため、まずは頼みすぎないこと、やむを得ず残した場合は専用の入れ物を使って持ち帰ることを推奨しています。現在、デニーズやすかいらーく、ロイヤルホストなどの大手ファミリーレストランなどでも導入が進んでいるんですよ。

もう一つが「食品寄附の促進」です。日本には約300のフードバンク団体がありますが、取り扱い量は合計1万6000トンにすぎません。子どもの相対的貧困率は約9人に1人とされており、支援に必要とされる15万トンにはほど遠い状況です。企業が寄附をためらう理由として、フードバンクの保管体制への不安等がありました。
そこで2024年12月に食品寄附ガイドラインを策定し、2026年4月からは消費者庁によるフードバンクの認証制度をスタートします。認証を受けた団体には企業も安心して寄附しやすくなるため、仕組みが大きく前進すると期待しています。
※フードバンク:食品関連企業他より寄贈された食品等を集め、福祉施設や生活困窮者の支援団体等に配る活動
20〜30代の認知率向上が急務。節電と同じくらい「当たり前」に
――2030年度目標の達成に向けて、今後特に強化していく取り組みや課題は何でしょうか
田中さん:家庭系の食品ロスはまだ20万トンの削減が必要で、課題は消費者への周知です。特に20~30代の認知率が低く、アプローチを強めていきたいと考えています。節電は省エネや環境配慮につながる実感から広く定着しましたが、食品ロス削減も同じように、取り組めば家計にもメリットがあります。食品ロス削減も、節電ぐらい認知と取組が進むよう、周知をしているところです。

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事業系でも商習慣の見直しをさらに加速させますので、消費者の皆さんには、スーパー等で棚の手前にある期限の近い商品から取る「てまえどり」への協力をお願いしたいですね。これは店舗の廃棄を減らす直接的な助けになります。
また、フードバンクの認定制度の普及とともに、企業はもちろん、一般の方々からも食品寄付の流れを太くしていくことも重点施策です。食品ロスを減らしながら困窮する子どもたちへの支援にもつなげるための制度整備を着実に進めます。
ガイドブックはデジタルブックでも。親子で一緒に学んでほしい
――消費者庁が作成した食品ロス削減ガイドブックは、どのような利用場面を想定していますか

田中さん:このガイドブックは「食品ロス削減推進サポーター」の方を中心に学校や家庭での学習、地域での啓発活動など幅広くご活用いただいていますが、一般の方にも分かりやすく食品ロスの現状と対策をまとめています。
ご自身のタイプ別に、どのように行動すれば食品ロスをより効率的に減らせるかがわかるチェックシートなども掲載しているんですよ。「作りすぎタイプ」や「買いすぎタイプ」「ためこみタイプ」など、まずは自分がどのようなタイプなのかを知るだけでも、家計をスリムアップするきっかけになるので、ぜひチェックしてみてほしいですね。

ガイドブックはデジタルブックとしてウェブ上で公開しているほか、幼稚園や保育園などで読み聞かせを行っている絵本なども公開しています。実は大人に比べて子どもたちのほうが、SDGsや食品ロスについてしっかり学ぶ機会が増えているので、意識が高いケースも多いんです。
節電と同様、子どもが親に「もったいないよ」「牛乳は手前から取るのがよいんだよ」などと呼びかけられて、家庭全体の行動が変わったという声も届いています。ぜひ親子で一緒に学んで、楽しみながら取り組んでもらえたらうれしいです。
食品ロス削減は、物価高から家計を守る心強い節約術
――最後に子育て世代に向けてメッセージをお願いします
田中さん: 「環境のため」と言われるとハードルが高く感じますが、実は食品ロス削減は「究極の節約」です。冷蔵庫にあるものを使いきる、外食で食べきれない時はお店の人に「持ち帰れますか?」と聞いてみる。そんな小さな行動の積み重ねが、家計を助け、子どもたちの未来の食卓を守ることにつながります。
もやしやきゅうりなど、傷ませてしまって捨てる確率の高い野菜も、冷凍を上手に活用すると捨てずに済みます。消費者庁の実証によると意識するだけで20%、意識して削減に取り組むと40%もの食品ロスを減らせるという実証データもありますから、節約の一環としてぜひ始めてみてくださいね。
まとめ
国民1人あたり、おにぎり1個相当の食べ物を毎日捨てているという具体的な数字と、それが国連の食料支援量を超えてしまうという現実は衝撃的でした。持ち帰りや寄附といった新しい習慣も積極的に取り入れると同時に、親子で「もったいない」を楽しみながら家計のスリムアップも目指したいですね。
企画・編集/&あんふぁん編集部、文/山田朋子

























