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【岡山県・美咲町がスゴい!】無料の体育教室に放課後の学習サポート、地域で手厚く子育て支援をしてくれる町
子育て支援が充実している全国の自治体を独自にリサーチし、「スゴい!」と感じた自治体に、あんふぁんWeb編集部がインタビューするコラム「この自治体がスゴい!」。
第3回は、岡山県久米郡美咲町(みさきちょう)を取材しました。美咲町は岡山県の中央部からやや北に位置し、ぶどうや黄ニラをはじめ、西日本最大級の養鶏場「たまご&ファーマーズ(株)美咲事業所」があることから卵かけご飯が名物。また、「日本の棚田百選」にも選ばれた美しい棚田が広がる自然あふれる町です。
「こどもの笑顔は みんなの幸せ」、「子本主義 美咲町」を合言葉として、地域で子どもの成長を支えることを目指した、さまざまな子育て支援サポートを行なっています。幼児から中学生を対象とした子育て支援策や、移住を考える人に知ってほしい美咲町の移住サポートについて、美咲町役場の教育委員会生涯学習課・平賀さん、地域みらい課・荒田さん、みさき共創室・岡本さんに話を聞きました。
――美咲町の子育て支援はいろいろな取り組みがあると思いますが、1番に目に留まったのが「みさきっこたいいく教室」という公立の教室があるという情報だったのですが、これはどのような取り組みをされているのですか?
平賀さん:4歳から小学校6年生までの子どもたちを対象に月に1回開催している教室です。町営の体育館などに集まり、年齢・学年でグループに分けて、マット運動や跳び箱、鉄棒など体操を中心とした基本的な運動を行なっています。体を動かす、運動能力を高める、ということはもちろんですが、同年代との交流・異年齢交流を通して、いろいろな人とつながりを持つこと、非認知能力を育てていきたいという目的で開催しています。日本こども体育協会から講師を派遣していて、毎回とても人気があり、60人以上の子どもたちが集まります。
平賀さん:また、小学生から中学生を対象とした「放課後子ども教室」という取り組みも行なっています。町内には小学校が4校、2023年度に開校したばかりの小中一貫の義務教育学校「旭学園」が1校、そして中学校が2校あるのですが、各学校の近くに教室を設けています。放課後の時間を利用して、自主的な学びができるように、地域の大人が子どもの学習活動のサポートをしています。目標を持って学習に取り組んでいけるように、この教室に入る前に保護者と面談もしているんです。また、旭学園がある旭地域は、英語特区として英語教育に力を入れてるので、小学生のうちから英検の勉強をしている子が多いです。
――「土曜日教育支援事業」として、土曜日にも学びの活動ができると聞きました
平賀さん:土曜日だけではなく、実は日曜日にも開催をすることもあるのですが、こちらは“体験”を主として、未就学児から保護者と一緒に参加できるような体験の場づくりにもなっています。地域のことをよく知って、より好きになってほしいという思いから、さまざまな地域体験ができるようにしています。例えば、稲作体験や防災体験、夏はキャンプや星の観察、冬には県内にスキー場があるので(その年の積雪量にもよりますが)スキー教室を開催することもあります。
――美咲町だからこそできる体験が多くていいですね。他にも地域ならではの取り組みがあるんですか?
平賀さん:美咲町には古い文献に桃太郎にまつわる記述が残されていたり、周辺には「鬼山」という山があり、桃太郎にちなんだ地名が多くあったりします。そういった地域性も活かし、『元祖 美咲桃太郎伝説』というオリジナルの絵本を制作しています。もともと「ブックスタート事業」という、乳幼児健診のときに、絵本をプレゼントする事業を行なっていて、小さい頃から絵本に慣れ親しんでほしいという思いでみなさんに2冊の絵本を贈っています。これに加えて「ブックスタート・セカンド事業」として、3歳児健診のときには、この美咲町オリジナル『元祖 美咲桃太郎伝説』の絵本をプレゼントしています。
――こうした子育て支援や地域の魅力を感じて移住してくる、という人も近年は増えてきましたか?
荒田さん:これは美咲町に限らず言えることなのですが、岡山県全体で移住のニーズは高まっています。理由のひとつに、地盤の強さがあるようです。地震に強く、年間を通して災害が少ないため、安心して住める、ということに魅力を感じてくれる人もいます。美咲町の中でも特に地盤が強い地域もあるんですよ。自然の中で子育てをしたい、自然に囲まれた中で成長してほしい、という子育て中のファミリーで移住を考えてくれている方からの相談もありますが、セカンドライフとして美咲町に住みたい、と言ってくれる方も多いです。
――移住を考えている人にはどのようなサポートがありますか?
荒田さん:「お試し暮らし」といって、実際に一棟の家に住みながら美咲町の生活を体験することができます。「都会で暮らしていたが、田舎暮らしはどんな感じの生活になるのか」、「移住したいけれど、田舎にいきなり行くのは不安」という方が、お試し暮らし住宅に住むことで実際の美咲町の空気を味わってもらえるようにしています。お試し暮らしは2日から最長2週間まで、1日1000円で泊まれて、基本的な家具・家電はそろった中で生活できますよ。
――地域で子どもの成長を支える、だから安心して美咲町で子育てしてね、ともっと伝えていきたいですよね。
岡本さん:そうですね、ぜひ子育て世代の方に移住してきてほしいと思っていて、今後も力を入れていきたいところです。どの自治体も子育て支援には年々力を入れていると思うので、もっと美咲町としてもできることやっていきたいと思っています。そんな中でも、1つうれしかったのが、令和3年の出生率のデータが美咲町は2.23%と全国的に見ても比較的高い数値が出たんですね。これは産み育てやすい町・子育てしやすい町と言ってもいいのではないかなと思っています。地域に根付いて、そこで子育てしていくという地盤は整ってきているのではないかと感じています。
まとめ
美咲町のみなさんに話をお聞きして、地域で子どもの成長をサポートする体制、そして地域のことを子どものうちから体験を通して学んで、より好きになって、ここで成長していってほしいという思いが見えました。自然豊かな環境で子育てをしたい、と考えている人の選択肢のひとつになってほしいと思います。