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【神奈川県がスゴイ!】「こどもまんなかプロジェクト」地元企業とタッグを組んで子ども世代にとっても「根付きたい街」へ
子育て支援が充実している自治体を独自にリサーチし、「スゴい!」と感じた自治体に、&あんふぁん編集部がインタビューするコラム「この自治体がスゴい!」。第4回は、神奈川県を取材しました。同県では、昨年発足したこども家庭庁に賛同する形で2023年7月に「こどもまんなかプロジェクト」をスタート。コミュニケーションアプリ「LINE」を活用し、子育て支援情報をパーソナルに配信しています。
さらに地元企業とタッグを組んで子育てをしやすい環境を整えることで、子どもたちが地元企業に興味を持ち、将来神奈川県で活躍する選択肢を増やすという大きなサイクルも視野に入れているのだそう。そんな神奈川県独自の「こどもまんなかプロジェクト」について、神奈川県福祉子どもみらい局 次世代育成課 企画グループの堀之内さん、矢野さん、飯島さんにお話を聞きました。
神奈川県の「こどもまんなかプロジェクト」とは
――まずは神奈川県で「こどもまんなかプロジェクト」がスタートした経緯を教えてください
矢野さん:昨年こども家庭庁が発足しましたが、国の調査(※1)では「日本は子どもを生み育てやすい国だと思うか」という質問に対して約6割の人が「そう思わない」と答えるなど、社会全体の雰囲気が子どもを生み育てることをためらわせている現状があります。子どもの成長を社会全体で支える取り組みが重要であるという思いから、こども家庭庁が始めた「こどもまんなかアクション」に神奈川県も賛同して、2023年7月に「こどもまんなかプロジェクト」がスタートしました。
※1 令和2年度少子化社会に関する国際意識調査(2021年3月 内閣府)
――具体的にはどのような取り組みを行なっていますか?
矢野さん:まずは神奈川県で行われている行政や子育て支援の取り組みを知ってもらおうと、各市町村の施策をホームページで紹介し、子育てをされている方々への応援メッセージも発信しています。また2024年2月には神奈川県内の主要公共交通機関のデジタルビジョンを活用し、電車内でも情報を発信しました。
子育て中、その時々に求めている必要な情報を素早く受け取れるシステムとして「かながわ子育てパーソナルサポート」のサービスも2023年12月からスタートしました。
必要な情報を必要な人に、「かながわ子育てパーソナルサポート」の取り組み
――わが子の年齢に合った、「今」役立つ情報が送られてきたり検索できたりするのは安心感がありますね
飯島さん:そうなんです。まず前提として、2022年の神奈川県で実施した調査(※2)により、「安心して子どもを生み育てられる環境が整っているか」という質問に対して、「あまり満たされていない」「ほとんど満たされていない」と回答した方が3割を超えているという実情がありました。環境整備の問題もありますが、必要な情報が、必要な世帯に届いていないことも問題の一つとしてありました。
子育て世代にかかる家庭への支援に関する調査研究報告書(※3)でも、身近に子育ての手助けが得られない家庭があるなかで、一時預かり事業の利用率が低いという原因も、やはり情報が行き届いていないということが問題でした。そこでコミュニケーションアプリ「LINE」を活用した「かながわ子育てパーソナルサポート」をリリースしました。
※2 令和4年県民ニーズ調査(2022年12月 神奈川県)
※3 子育て世代にかかる家庭への支援に関する調査研究報告書(2021年3月 株式会社政策基礎研究所)
飯島さん:まずは県内33市町村の行政情報を集約し、利用する方が登録した受信設定に合わせて、プッシュ通知ができる仕様になっています。さらに子育て支援情報を検索できるサービスや、県の相談窓口を紹介するサービスのほか、12歳までのお子さんがいる子育て世帯が優遇を受けられるお店、子育て世帯に優しいお店の検索もできます。
受信設定もご自身が住んでいる市町村やお子さんの年齢はもちろん、例えば保育園や幼稚園の情報、ひとり親家庭向けの情報、障がいのあるお子さん向けの情報や、妊娠出産に関する情報なども含めて、ご自身のライフステージに合うようにカスタマイズできます。
――実際に利用者の声はいかがですか?また今後、どのような取り組みを予定されていますか?
飯島さん:2024年6月に実施した利用者アンケートでは、約3人に1人が現在のサービスに満足しているという一方で、残りの方々はもっとサービスを拡充してほしいと回答しています。そこで2024年11月から、さらに検索性を高め、必要な情報へと誘導してくれるチャットボットシステムを新たに導入しました。
また、乳幼児を育てる方を中心に、保育士や保健師などの専門家に直接相談ができる仕組みや、小学生以上のお子さんがいる方には、保護者同士で相談や情報交換ができるような仕組みも新たに開始しました。
これからも社会全体で子育てを応援する取り組みを
――「かながわ子育てパーソナルサポート」以外に、今後予定されていることはありますか?
矢野さん:神奈川で子どもを生み育てたいと思う人が増えるには、生む前から育てる中でもさまざまな行政の支援や環境が必要ですよね。もちろん住みやすさや居心地の良さも必要ですが、企業やさまざまな団体を巻き込んで、社会全体で子育てを応援する取り組みを進めていければ良いと思っています。
そこで、2024年の夏に企業や団体が実際に取り組む「こどもまんなかアクション」を募集しました。子どもの居場所づくりやこども食堂から始まり、共働きや共育ての支援策を行なっている企業・団体を募集し、事例集として紹介する企業を選定している最中です。今年度は初実施ということもあり、大手企業も含めてたくさんの応募をいただきました。こういう取り組みを広報していくことで、地元企業の周知はもちろん、「この会社がこんなことをやっていたんだ」という県民の方の気付きにもつながると考えています。
「これなら自分の会社・団体でもできるかも」という部分では、経済界にも情報を届けられると良いと考えています。また、個人レベルでは「子育てに協力的な企業なんだ」というイメージから、見ていただいた方の就職先候補になるかもしれません。今まさに子育て中の方の転職先かもしれないですし、子どもたちが働く世代に育った未来の就職先になる可能性もあります。そうやって、神奈川県内で良い循環が起これば良いですね。
――&あんふぁんの読者へメッセージをお願いします
堀之内さん:そうですね、神奈川県でぜひ子育てしていただきたいと思いますし、神奈川県でお住まいの子育て中の方にはぜひ「かながわ子育てパーソナルサポート」に登録していただいて、タイムリーに情報を受け取っていただけるとうれしいですね。
まとめ
神奈川県の企業や団体による「こどもまんなかアクション」の事例は2025年の初めにホームページや主要公共交通機関のデジタルビジョンなどで公開予定なのだそう。行政だけでなく、企業や団体などの大人たちが一緒になって、子どもをまんなかにしていこうという姿勢が印象的でした。必要な情報が必要とする人の手に確実に届くのはもちろん、地元企業への愛着が生まれ、神奈川県内でポジティブな人の循環が脈々と受け継がれたら素敵ですね。
取材・文/山田朋子