「ネウボラ」って何？妊娠・出産・育児までワンストップで支援してくれる「日本版ネウボラ」を知ろう

フィンランド発祥の子育て支援

「ネウボラ（neuvola）」とはフィンランド語で「助言の場」という意味。フィンランドで1944年に法定化された公的な育児支援をいいます。フィンランドでは家族ごとに担当の保健師がつき、妊娠初期から就学まで、子育てに関するあらゆる相談に乗ってくれます。誰でも無料で利用することができ、利用率はほぼ100％。

日本でも、フィンランドの制度を参考に「日本版ネウボラ」が導入されています。具体的には、2017年の法定化により「子育て世代包括支援センター」（2024年4月からこども家庭センターへ統合）の設置が自治体の努力義務とされました。日本版ネウボラは全国に広がり、妊娠中、子育て中のファミリーは各自治体でさまざまな支援や特典を受けることができます。

「妊娠届」の提出がネウボラ支援のスタート

ネウボラの最大のメリットは、妊娠、出産、育児の悩みをワンストップで相談し、支援を受けられること。本来、妊娠、出産、育児の悩みは地続きで、切り離すことはできないはず。かつてはその公的サービスの担当窓口や施設が別々になっていることが多かったのですが、今は多くの自治体が、妊娠から子育てまで切れ目のない支援を提供する制度や施設を設けています。

住んでいる地域に「ここへ行けば、子育てのことはなんでも相談できる」という場があることは、子育てをする上で安心感につながりますよね。

ネウボラの支援は、妊娠したときから始まります。多くの自治体では、保健センターなどの窓口で「妊娠届」を提出した人に向けて、担当保健師との面談や受けられるサポートを案内してくれます。ちなみにフィンランドでは妊娠の兆候があればまずネウボラを訪れ、そこで健診を受けることもできますが、日本ではほとんどの人が病院で健診を受けます。妊娠届の提出には、病院で発行してもらう「妊娠証明書」が必要です。

充実した「育児パッケージ」やギフトもうれしいポイント

フィンランドでは、妊娠したら現金（1子170ユーロ）か育児パッケージのどちらかを選んで支給してもらえます。育児パッケージとは、ベビー服やケアアイテムなど出産後に必要な育児グッズの詰め合わせのこと。

日本でも、ネウボラの一環として多くの自治体が育児パッケージを支給しています。その内容はさまざまで、フィンランドと同様にベビー服やベビーグッズなどの育児パッケージを支給する自治体もあれば、世田谷区のように地域の産前産後サービスが利用できる「子育て利用券」（額面1万円分）を支給するケースも。東京都日野市のような「育児パッケージカタログ」なら、各家庭で必要なグッズを選ぶことができます。

また、1歳の誕生日を迎えたときに育児パッケージを支給することで支援につなげる自治体もあります。たとえば東京都中野区の「ファーストバースデーサポート事業」では、WEBでアンケートに回答すると子ども用品のカタログギフトがもらえます。第1子は6万円相当、第2子は7万円相当、第3子以降は8万円相当と充実した内容です。

子どもの遊び場で気軽に育児相談も

ネウボラの取り組みとして、多くの自治体で力を入れているのが「相談しやすい場」を設けること。

東京都板橋区では、「CAP’S」と呼ばれる児童館で専任相談員が育児相談を受け付けています。東京都渋谷区の「渋谷区子育てネウボラ」は、2021年にオープンした8階建ての施設。発達や教育について相談できる窓口や健診が受けられる施設、子どもの遊び場やカフェなどが集結していて、まさにワンストップで子育て支援が受けられる場として賑わっています。

住んでいる地域の支援やサービスもチェックしてみましょう

自治体によってさまざまな特色がある日本版ネウボラ。今住んでいる地域でどのような支援やサービスを提供しているか、ホームページをチェックしてみてはいかがでしょうか。

参考

フィンランド大使館ホームページ　https://finlandabroad.fi/web/jpn/ja-finnish-childcare-system

世田谷区ホームページ　https://www.city.setagaya.lg.jp/02413/1187.html

日野市ホームページ　https://www.city.hino.lg.jp/kosodate/shien/1023402.html

中野区ホームページ　https://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/kosodate/kosodatesite_ohirune/mokuteki/teate/shien/1sai.html　

板橋区ホームページ　https://www.city.itabashi.tokyo.jp/kosodate/ninshin/ninshin/1014689.html

「渋谷区子育てネウボラ」ホームページ　https://shibuya-city-neuvola.tokyo/

文／林優子