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【東京都がスゴイ!】最初から最後までパパ目線!実践にすぐ役立つ「パパの子育てスタートブック」
子育て支援が充実している自治体を独自にリサーチし、「スゴい!」と感じた自治体に、&あんふぁん編集部がインタビューするコラム「この自治体がスゴい!」。第6回は、東京都福祉局を取材しました。東京都では妊娠届を出した人を中心に配布していた「父親ハンドブック」を時代に合わせてブラッシュアップ。パパが実践的に子育てに参加する際、気軽に参考にすることができるデジタルブックとしてリリースしました。
今回はこの「パパの子育てスタートブック」について、東京都福祉局子供・子育て支援部家庭支援課子育て事業担当の松川さん、御手洗さんにお話を聞きました。
東京都のデジタルブック「パパの子育てスタートブック」とは
――東京都でデジタルブック「パパの子育てスタートブック」が誕生した経緯を教えてください
御手洗さん:平成7(1995)年に「父親ハンドブック」を創刊して以降、育児・介護休業法の改正に伴って、男性の育児休業取得のさらなる促進や、(育休ではなく)「育業」という新たな名称の設定など、父親の主体的な子育ての参加がより一層、社会に求められるようになってきています。そこで2023年度にこの「父親ハンドブック」の内容も刷新しようという運びになりました。
――平成7年に創刊された「父親ハンドブック」から「パパ像」の変化はありましたか?
松川さん:新しく項目として入れたのが、「父親の産後うつ」に関してです。母親の産後うつについては一般的に知られているところだと思うのですが、産後うつは父親もなりうると専門家から聞き、産後うつにならないための情報や、なってしまった場合はどうしたら良いかという情報も盛り込んでいます。
あとは「パパ友をどんな場所で作るか」についてです。一人で頑張ってしまうパパも多く、それがまた産後うつにつながるようなこともありますので、特にパパ目線を意識して入れた項目です。
御手洗さん:ママは母子手帳をよく読んだり、実際に体の変化がありますが、パパは自分の体が変化していくわけではないので、実際に母体の中でどう変化があるのか、内臓にどのような影響があるのかとうところも、男性に伝わりやすい表現を意識して記載しています。誕生後は、赤ちゃんの1日がどういう流れで、どういう生活リズムがあって、ママはどういう部分が大変なのかという部分もわかりやすく刷新しました。
妊娠・出産というのは女性にとっても男性にとっても、人生の大きな転機ですよね。特に初産のご家庭だと全てが未知の体験で、分からないことだらけで不安に感じている方も多くいらっしゃるのではないかと考えています。だからこそ、不安をあおるような内容ではなく、実践方法を楽しみながら気軽に読めるなど、子育てを楽しめる内容になるように意識しました。
――ママとの関わり方や子どもとの関わり方という部分ではいかがですか?
松川さん:そうですね、これは変わらず課題としてあります。専門家の先生からは、やはり家族内のコミュニケーションが大事ということなのですが、そこがなかなか難しいんですよね。ただ、「コミュニケーションがカギを握る」という点は平成7年から変わらないテーマで、読み手側であるパパや社会全体の意識や受け取り方は変わってきていると思います。
――印刷物からデジタルブックになるという部分で、こだわったポイントを教えてください
御手洗さん:動画サイトなどでよくあるような、育児方法が細切れに紹介されているのではなく、1カ所にまとまっているというのは大きなメリットだと思います。「今、参考にしたい」と思った時にもデジタルブックという形は若いパパ・ママに馴染みやすいと思いますし、動画でも見られるというのは大きな変化ですね。
――利用者からはどのような声が上がってきていますか?
御手洗さん:読者アンケートでも、「情報がまとまっていて参考にしやすかった」という声が3割程度ありました。また時代に合わせた内容になっていて、かつ体系的にまとめられているので、参考にしやすいという声はたくさんいただきましたね。
デジタルブックだからこそ通勤中などの短時間で読めるという部分や、「オムツってどうやって替えるんだっけ?」とか「離乳食ってどうやってつくるの?」など、その時々で簡単に情報を確認できるように作成しているので、そういう点が使いやすいと言っていただけているのではないかと思います。
デジタルブックを活用したイベントや、プッシュ型の情報発信も検討
――今後「パパの子育てスタートブック」をどのように周知、活用する予定ですか?
御手洗さん:各市町村と連携して、妊娠届の提出時に配布される「母子バッグ」での周知を引き続き行います。また2025年2月に「パパの子育てスタートブック」を元にしたプレパパ・プレママ向けのイベントを実施する予定です。そのイベントの様子を、Youtubeなどでも公開できたらと考えています。
松川さん:パパはママに比べ、行政サービスにつながる機会が少ない傾向にあります。子育てに興味のあるパパであればご自身で情報をキャッチされると思うのですが、仕事が忙しいなどなかなかハードルが高いと感じている方でも、意識せずに行政の情報をキャッチできる仕組みをつくりたいと考えています。行政がプッシュ型で広報することで、受動的に情報を受け取ることができれば、今まで届かなかったパパに対しても情報を発信していけるのではないかと。そういう課題をこれから解消していきたいと考えています。
――&あんふぁんの読者へメッセージをお願いします
御手洗さん:育児に関しては、プレパパ・プレママだけでなく、実際に子育てをしている方でも不安を感じている方はたくさんいらっしゃると思います。お住まいの自治体には、保健師や専門職の方に相談できる窓口がありますので、相談することにハードルを感じずに、ご連絡いただけたらなと思います。
また東京都の子育て支援サービスは日々充実させてきておりますし、各市町村でも独自のサービスを行なっていますから、ぜひ活用していただきたいですね。「パパの子育てスタートブック」もご夫婦で一緒に見ながら、どういうふうに育児をしていったら良いのかや、コニュニケーションの方法などを話し合っていただきつつ、家事・育児に活用していただけたらうれしいですね。
まとめ
子育て支援サービスの拡充に力を入れている東京都。その情報を今まで主体的には受け取れなかったパパ・ママにもプッシュ型で広報することで、増加傾向にある児童虐待にも歯止めを掛けたいという思いがあるそう。時代に合わせてブラッシュアップされるサービスを上手に活用して、より楽しい育児生活を送るきっかけにできると良いですね。
取材・文/山田朋子