子どものダラダラ防止!夏休みがグッと充実する「ざっくりルーティン」と親子でできる毎日の習慣

モンテッソーリやレッジョ・エミリアなど、子どもの自主性や創造性を育む『オルタナティブ教育』の第一人者である島村華子さんの連載。第9回は「マインドフルネス」について考えてみましょう。
夏休みが始まると、親御さんの中には試練のように感じる方も多いのではないでしょうか。特に共働きや在宅勤務の家庭では、仕事をしながら子どもとどう向き合い、どのように過ごさせるかに頭を悩ませる場面も少なくありません。私が日本に一時帰国していた6月も非常に暑い日々が続いていましたが、さらに連日の猛暑で外遊びが難しくなれば、必然的に室内での時間が増えます。「一日中YouTubeばかりになってしまうのは避けたい」「ダラダラと過ごすのを何とかしたい」といった悩みが出てくるのも自然なことです。
今回はモンテッソーリ教育とマインドフルネスの視点から、子どもの集中力や探究心を育てる室内での過ごし方の工夫をご紹介します。自宅だけでなく、帰省中の実家や旅先でも取り入れられる、無理なく続けられる習慣もあわせてお伝えします。お休み中でも、親子で楽しく過ごせるヒントになれば幸いです。
1. ざっくりルーティンで安心感をつくる
夏休み中は、学校のような決まったスケジュールがないので、生活のリズムが乱れやすくなります。そんなときに効果的なのが、「ざっくりとした流れ(ルーティン)」を作っておくことです。時間通りに行動するというよりも、「起きたら顔を洗って、ちょっと外の空気を吸う」「朝ごはんを食べたら、遊びの時間」「お昼のあとにお片づけ」など、1日の流れに見通しを持たせるだけで、子どもは安心して過ごすことができます。
また、外出する日や特別な予定があるときには、前もって「明日はちょっと違う日だよ」と全体の流れを伝えておくだけでも、子どもは気持ちの準備がしやすくなります。こうした声かけも、当日の混乱を避けるために効果的です。
2. 朝の散歩と呼吸で、一日の土台を整える
夏でも、早朝であれば日中よりも比較的涼しく、心と体を整えるのに最適な時間帯です。もし可能であれば、朝に少しだけでも子どもと自然の中を歩いてみましょう。ミシガン大学の研究によると、自然の中を歩くだけで記憶力が改善されることがわかっています。しかも、楽しいと感じたかどうかに関係なく、自然に身を置くだけで脳に良い影響があるという点が注目されています。短時間でも十分なので、もしあれば近くの公園や川沿い、あるいは家の周りを歩くだけでも良いでしょう。
また、呼吸を意識したストレッチやヨガも、朝のルーティンに取り入れたい習慣のひとつです。親子で数分間、一緒にゆっくりと息を吸って吐く。それだけでも気持ちが整い、一日の始まりに集中力と穏やかさが加わります。実際、呼吸法を取り入れた子ども向けのプログラムを対象にした研究でも、ストレスの軽減や集中力の向上が見られています。
3. 家の中で「自分の係」をもつ
日中の時間帯は、モンテッソーリ教育でも大切にされている「おしごと(自分で選んで取り組む活動)」をヒントに、家の中のちょっとした家事を子どもに係として任せてみましょう。洗濯物を畳む、タンスや机の上を整える、観葉植物に水をあげる、食洗機を空にするなど、特別な準備がいらないことばかりですが、「今日はみずやり隊長として出動お願いします」「机の整理整頓隊に任命する!」など、少しユーモアを含めて役割を伝えてみてください。
もちろん本人に何の係をやりたいか聞いて、自分で選択してもらうのもおすすめです。こうした家の家事に日常的に関わる子どもは、記憶力や集中力といった考える力が育ちやすいことが、研究でも明らかになっています。
4. 一日の終わりに、「三つのよかったこと」を話す時間を持つ
そして、ぜひ取り入れてほしいのが、夜のマインドフルネス習慣です。夕飯やお風呂の時間、あるいは寝る前に、親子で「今日あったよかったことを三つ」話してみてください。内容は本当に小さなことでかまいません。「朝の散歩でセミの声が聞こえてうれしかった」「洗濯物を一緒に畳んだら早く終わって助かった」「おばあちゃんと食べたスイカがおいしかった」など。その日を親子で振り返り、「よかったこと」「嬉しかったこと」に意識を向けることは、親子ともに心の安定や幸福感に大きくつながります。また、大人が丁寧に耳を傾け、「うれしかったね」「楽しかったね」と受け止めることで、子どもたちは自己肯定感を育みながら、眠りにつくこともできます。
このように、毎日の中に少しずつ取り入れられる工夫を積み重ねることで、夏休みの生活にも安定や集中の瞬間が生まれていきます。完璧なスケジュールや特別な準備は必要ありませんし、夏休みだからといって毎日何か特別なことをしなければ、とプレッシャーに感じる必要もありません。大切なのは、子どもが「見通しのある一日」「自分の役割」「心を整える時間」を感じながら、安心して過ごせることです。それぞれのお家でのペースに合わせて、できるところからぜひ取り入れてみてください。
親子でできるモンテッソーリ教育とマインドフルネス

このコラムの執筆者であり、14 万部超のベストセラー『自分でできる子に育つ ほめ方 叱り方』の著者である島村華子さんが、最新研究からの豊富なエビデンスをもとに書き下ろしました。マインドフルネスを自然な形で取り入れる方法や、モンテッソーリ教育からヒントを得て子どもたちの成長をサポートするさまざまなアイデアを紹介しています。
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