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30〜40代“なにかと忙しい世代”へ「よく眠れる体」づくりのためのおすすめ運動

サッカー女子日本代表やJリーグのフィジカルコーチを歴任したアスレティックトレーナーの広瀬統一さんのコラム。子育て中のママ・パパの健康を応援します。
毎日がんばっているあなたへ。仕事に育児、家事に地域のことまで…自分のことは後回し。でも、だからこそ「質のいい睡眠」が、心と体の調子を整える大切な味方になります。
毎日がんばっているあなたへ。仕事に育児、家事に地域のことまで…自分のことは後回し。でも、だからこそ「質のいい睡眠」が、心と体の調子を整える大切な味方になります。
睡眠が足りないとどうなる?
最近、次のようなことを感じたことはないですか?もしかしたら睡眠が足りていないかもしれませんよ。
- イライラしやすい
- 風邪を引きやすい
- 体重が増えやすい
- 子どもに優しくできないと感じる
自分はしっかり眠れている?いつでもできる4つのチェック
自分が睡眠をしっかりとれているか、気になりますよね。そんなあなたに簡単なチェック項目を紹介します。
1.朝、自然におなかが空き、朝食をしっかりとれるか?
→ 睡眠と体内リズム(概日リズム)が整っているサインです。
2.起きてから30分以内に活動的に動き始められるか?
→睡眠からの切り替え(睡眠慣性)がスムーズ=質の高い睡眠がとれている可能性が高いです。
3.週末も、平日と同じくらいの時間にアラームなしで起きられるか?
→睡眠負債が少ない証拠。もし2時間以上長く寝ている場合は、平日に睡眠が足りていないかもしれません。
4.日中に強い眠気を感じることがないか?
→集中力が保たれていれば、睡眠の量・質が十分と考えられます。
よい睡眠に関する3つのよくある疑問
睡眠って、知っているようでよくわからないことも多いですよね。そんなあなたに、3つのよくある質問にお答えします。
Q1:どれくらい寝たらいいの?(睡眠必要量)
自分にとって「ちょうどよい睡眠時間」を知り、できるだけ確保しましょう。日中に眠気がでないことが、しっかりと眠れている証拠です。成人では、最低でも6時間、目安としては6〜8時間の睡眠が推奨されています。
Q2:寝だめはできるの?(睡眠負債)
平日の寝不足を「週末の寝だめ」で取り返すのは難しい!部分的には回復効果はありますが、平日の不足を補うには不十分です。やはり、毎日の安定した睡眠が大切ですね!
Q3:睡眠を促すのは?(睡眠圧)
夜の睡眠を促すのは日中の活動です。しっかり活動すれば、自然に夜眠くなります。特に朝の日光がとても重要ですよ!
よく眠るには昼間の“動き”がカギ!
子どもがたくさん遊んだ日はコテッと寝てしまうように、体を使えば眠りやすくなるのは大人も同じです。日中にしっかり動くことで、夜の「眠気スイッチ(=睡眠圧)」が自然とオンになります。
こんな運動が「よく眠れる体」をつくる。4つのススメ!
いつもの活動で睡眠圧を高める(総エネルギー消費の増加)
立ち仕事、階段の上り下り、子どもと外遊びなど、日常生活の活動を増やすことで睡眠圧が自然に高まり、深い眠りが誘導されやすいですよ。
子育て中でもできる「ちょっと運動」
- 子どもと一緒に公園で散歩・かけっこ
- 家事を“運動タイム”に(階段・掃除・布団干し)
- 寝る前に一緒にストレッチや深呼吸
深い呼吸ができているかチェック
そして、こんな呼吸法、試してみてはいかがでしょうか。

息を吸ったときに胸もおなかも同時に前や横に全体的に膨らんでいればOK。そして息を吐いたときに胸は中央に寄せられるように縮まり、おなかが凹んでいれば、助骨も横隔膜もほぐれていい状態になっています。
おなかが動かない人は、丸囲みのイラストのように、みぞおちの下、助骨の骨に沿って両手の親指以外の4本の指をあて、その指を上下左右に10回ほど動かしてほぐしましょう。また、胸が動かない人は肋骨の間の筋肉をほぐしてみましょう。指で肋骨の間を胸の真ん中から外に向かって軽く押して行ってください。
それでもなんとなく寝つきが悪いと感じたら、より積極的に運動してみてはいかがでしょうか。こんなエクササイズもおすすめです。
有酸素運動(ウォーキング・軽いジョギング・自転車など)
軽く息が弾むくらいの運動を30分くらい、週に3〜5回を目安にしてください。寝つきがよくなる、深い眠り(徐波睡眠)が増える、夜中に目が覚めにくくなり、昼間の眠気が減りますよ。
筋トレ・体幹トレーニング(スクワット・腕立てなど)
1回20~30分のスクワットや腕立て伏せなどのエクササイズを週に2〜3回を目安にしてください。深い睡眠が促され、気分の安定や活力アップにもつながりますよ。
こんなエクササイズ、いかがでしょうか?
スクワットかかと上げ下げ

- 両脚を腰幅に開いて立ち、つま先は正面に。両手を胸の前でクロスさせ、ひざがつま先より出ないように、お尻を突き出しながら、軽く腰を落とします。
- ひざが内側に入らないように気をつけながら、かかとを軽く上げます。背中が丸まらないように姿勢をキープしたまま、かかとの上げ下げを10〜20回繰り返します。
ひざつき腕立て

- 肩の下に両手のひらを置いて上体を持ち上げます。つま先は立てた状態で、床につけましょう。
- 3秒かけてゆっくりとひじを曲げて体を床に近づけ、3秒かけて体をゆっくり持ち上げて、1の姿勢に戻ります。これを1セットとして10回〜20回行います。
運動する「時間帯」にもコツがある!
運動をするときのおすすめの時間帯は朝から夕方、寝る3時間前くらいまでがいいですよ。強めの運動を夜に行うと、体温や心拍が高まりすぎて眠れなくなることがあります。
これはNG!眠りを阻害する3つの要因
寝る前のスマホやパソコン
光や情報が脳を刺激して、眠りにくくなります。
寝る直前の激しい運動
体温や心拍が上がると、入眠の妨げになります。
うるさい・まぶしい・落ち着かない寝室環境
音や光は、気づかないうちに睡眠の質を下げてしまいます。
睡眠はあなたの“再起動”ボタン
夜、しっかり眠ることでイライラや不安が落ち着き、朝のスタートが変わります。家族のためにも、まずはあなたが元気でいることが大切です。「よく眠れる体づくり」、今日から一歩ずつ始めてみませんか?
【参考になる情報】
〈睡眠チェックリスト〉
Nedeltcheva AV et al. (2010). Insufficient sleep undermines dietary efforts to reduce adiposity. Annals of Internal Medicine, 153(7):435–441.
Tassi P & Muzet A. (2000). Sleep inertia. Sleep Medicine Reviews, 4(4):341–353.
Wittmann M et al. (2006). Social jetlag: misalignment of biological and social time. Chronobiology International, 23(1–2):497–509.
Van Dongen HPA et al. (2003). The cumulative cost of additional wakefulness: dose-response effects on neurobehavioral functions and sleep physiology from chronic sleep restriction and total sleep deprivation. Sleep, 26(2):117–126.
〈Q&Aと善き睡眠の取り組み〉
厚生労働省.(2023).健康づくりのための睡眠ガイド 2023
Borbély AA & Achermann P. (2016). Sleep homeostasis and models of sleep regulation. In Principles and Practice of Sleep Medicine (6th ed.)
Reid KJ et al. (2010). Aerobic exercise improves self-reported sleep and quality of life in older adults with insomnia. Journal of Clinical Sleep Medicine, 11(9): 934–940.
Dolezal BA et al. (2017). Interrelationship between sleep and exercise: A systematic review. Advances in Preventive Medicine, 1364387.
〈エクササイズに関する情報〉
広瀬統一. (2023). 大人女子のすごい体幹トレ&ストレッチ.Gakken.
イラスト/マルサイ