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夏は「休息の質」で差がつく!1分〜10分で心と体を整える「マイクロ休息法」の取り入れ方

サッカー女子日本代表やJリーグのフィジカルコーチを歴任したアスレティックトレーナーの広瀬統一さんのコラム。子育て中のママ・パパの健康を応援します。今回のコラムは1〜10分の“すき間時間”を活用した「マイクロ休息」について紹介します。
まとまった休憩、取れていますか?「忙しくて休んでいる暇がない」「気づいたら何時間も座りっぱなし」「疲れているのに、なぜかリフレッシュできない」…そんな日々を過ごしていませんか。忙しい現代人こそ、1〜10分の“すき間時間”を活用した「マイクロ休息」が、実はとても重要です。
マイクロ休息とは?
マイクロ休息とは、短時間(1〜10分)で心と体を整える休憩法のこと。深呼吸や軽いストレッチ、自然との触れ合いや友人との会話などの簡単な行動でも、脳の過活動をリセットし、自律神経のバランスを整えてくれる効果があります。ほんの数分の休息でも、集中力や気分、作業効率がぐっと高まるのです。
今日からできる!おすすめマイクロ休息法
呼吸のリズムで「休息モード」に切り替える
これまでの研究では、1分間に6回程度のゆっくりした呼吸が、自律神経の「オンとオフの切り替え」に良い影響を与えるとされています。この呼吸法は、副交感神経を働かせて、気持ちを落ち着かせたり、リラックス感・活力を高めたりする効果があると考えられています。
実践:短時間でできる「ゆっくり呼吸法」(2〜3分)
呼吸のしかた
鼻からゆっくり吸う(4〜8カウント)
→ おなかと胸が前・横に広がるイメージで。
→ 吸うときは「お尻の穴をきゅっと締める」と自然と姿勢が整います。
口をすぼめてゆっくり吐く(16〜32カウント)
→ おなかが背中に近づくように、じわじわ吐きます。
→ できる範囲でのカウントで大丈夫ですよ。
1分間で6回以下の程度のペースを意識しましょう。
ワンポイントアドバイス
- 始める前に姿勢を正して、背筋を少し伸ばすだけでも呼吸がしやすくなります。
- 目を閉じて「今、吸っている・吐いている」と意識することで、さらにリラックス効果が高まります。
ストレッチで「すき間リフレッシュ」
たった1〜2分のストレッチでも、固まった体をほぐすことで血流がよくなり、疲れやだるさがスッとやわらぎます。体を動かすことで、気分もリセットされて「もうひと頑張りしよう」という前向きな気持ちが戻ってきます。最近の研究でも、こうした短いストレッチが「マイクロ休息」として、疲労回復や集中力の回復に効果があることがわかっています。机を離れて少し体を動かすだけで、心も体もすっきり整いますよ。
実践:からだとこころが整う、すき間ストレッチ(2~5分)
肩甲骨ぐるりまわし(1〜2分)
- 組んだ両手を胸から遠ざけて肩甲骨を開く
- 組んだ両手を胸に近づけながら左右の肩甲骨を閉じる。5秒かけてゆっくり回し、1・2の動きを続けて5〜10回行う


イスのせ裏面伸ばし(1〜2分)
イスから一歩離れて立ち、右脚のかかとをイスにのせます。後ろの左脚を伸ばして立ち、右の足首を両手でつかみます。膝を曲げたり伸ばしたりして太ももの裏・お尻の筋肉を伸ばします。左右の脚を入れ替えてそれぞれ5〜10回繰り返しましょう。

ワンポイントアドバイス
- 筋肉を伸ばすときはゆっくりと息を吐きながらストレッチすると効果的です。
- 伸ばされている筋肉を意識しながら。自分の体と向き合う時間にもしましょう。
眼精疲労リセット(3分)
遠くを見る、目を閉じて深呼吸する…これだけでも目の疲れがふっと軽くなります。また、目をホットタオルなどで温めることで、乾きや不快感が和らぐことが医学研究でも報告されています。デスクワークやスマホの合間に、ぜひ取り入れてみましょう。
ツボ押しで「こころと体」のマイクロ休息(5分)
手軽にできる「ツボ押し」も、ストレスや不安をやわらげる効果があることが報告されています。看護学生を対象とした研究では、手首の「神門(しんもん)」と眉間の「印堂(いんどう)」というツボを、5分ずつ交互に刺激することを1回30分、週1回、計3週間行った結果、ストレスや不安の数値がいずれも約半分以下に減少したという結果が報告されています。仕事や家事の途中のマイクロ休息に、短時間でもとりいれてみてはいかがでしょうか?
神門
- 手首の内側で小指側の手首のしわ(横紋)の上にあります。手首の「小指側の端っこ」に近いところを押すと、少し痛気持ちいいポイントです。
- 東洋医学では「心」の経絡(心包経)に属し、精神を落ち着けるツボとされています。
- 主な作用は「不眠や不安、緊張の緩和」「動悸、焦燥感の軽減」です。

印堂
- 両まゆの間、いわゆる「眉間」に位置するツボ.軽く指をあてると、少しへこみを感じる場所です。
- 思考や感情の安定に関わる場所とされています。
- 主な作用は「緊張・ストレスの緩和」「不安感の軽減」で頭痛・眼精疲労・不眠にも効果的です。

夏こそ「休息の質」で差がつく!
紹介したマイクロ休息法は全部やっても15分くらい。作業の切れ目、コーヒータイムなど、“決まったタイミング”で疲れを感じる前にぜひ取り入れてみてください。暑さと忙しさで疲れがたまりやすい夏こそ、短くても“質の高い”休息が大切です。
無理なく、楽しく、心地よく。マイクロ休息で、毎日をちょっとだけ心地よく変えてみませんか?
【参考になる情報】
マイクロ休息法の効果
・ Albulescu P et al. (2022). "Give me a break!" A systematic review and meta-analysis on the efficacy of micro-breaks for increasing well-being and performance. PLoS One, 17(8):e0272460.
呼吸法と自律神経調整
・ Zaccaro A et al. (2018).How Breath-Control Can Change Your Life: A Systematic Review on Psycho-Physiological Correlates of Slow Breathing. Frontier in Human Neuroscience, 12:353.
眼精疲労とほっとタオル
・ Sim HS et al. (2014). A Randomized, Controlled Treatment Trial of Eyelid-Warming Therapies in Meibomian Gland Dysfunction. Ophthalmology and Therapy, 3:37–48.
ツボ押しとストレス軽減
・ Yildirim D & Akman Ö. (2021). The Effect of Acupressure on Clinical Stress Management in Nursing Students. Journal of Acupuncture and Meridian Studies, 14(3):95–101.
エクササイズに関する情報
広瀬統一. (2023). 大人女子のすごい体幹トレ&ストレッチ.Gakken.
イラスト/マルサイ