「低用量ピル」ってどんな薬?女性の健康管理にも役立つ「ピル」についてやさしく解説

「低用量ピル」ってどんな薬?女性の健康管理にも役立つ「ピル」についてやさしく解説

“フェムケア”“フェムテック”という言葉を知っていますか?女性は毎月の生理や妊娠、出産、更年期などのイベントと共に体調の変化が起こります。ママの身体や心の変化を知り、正しいケアの方法を知ることで、家族の日々の幸福度をアップさせていきましょう!
助産師の石嶺みきさんによる最新“フェムケア”のコラム。今回のテーマは「低用量ピル」についてです。

「低用量ピルってどんな薬?」というご相談をいただきました

みなさんは「ピル」と聞いて、どのようなイメージをお持ちでしょうか?おそらく、多くの方が“避妊薬”として認識されているのではないでしょうか。でも実はピルには避妊以外にもさまざまな効果があり、女性の健康管理に広く活用されている薬なんです。

学校などで生理や妊娠について学んだことはあっても、ピルについては詳しく学ぶ機会が少なかったという方も多いと思います。実際、日本ではピルの使用率は非常に低く、わずか2.9%です。米国(13.7%)やイギリス(26.1%)、ドイツ(31.7%)など欧米諸国と比べると、日本はピル後進国であることが分かります(※)。
避妊法2019「Contraceptive Use by Method 2019」国連発表

今回はそんなピル(特に低用量ピル)について、基本から分かりやすくお伝えしていきます。

ピルとは?

ピルは、卵巣でつくられるエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)という女性ホルモンの成分が配合された薬のことです。ピルの内服により、排卵を抑えることで避妊効果を得ることができます。

ピルには大きく分けて「中用量ピル」と「低用量ピル」がありますが、1錠あたりのエストロゲンの含有量が50µg(マイクログラム)以上のものを中用量、50μg未満のものを低用量ピルとよびます。
ホルモンの配合量が多いほうが効果は高いですが、副作用(頭痛、吐き気、血栓症など)のリスクも高くなります。そのため、安全性を考えて現在は低用量が用いられることが多くなっています。

低用量ピルは、女性が毎日1錠服用することで99%以上の高い避妊効果が得られる経口避妊薬です。ですが効果はそれだけではありません。たとえば、以下のような症状にも使われています。

  • 月経困難症(生理痛が強く、日常生活に支障がある)
  • 子宮内膜症(下腹部痛や生理痛を伴う)
  • 月経前症候群(PMS)
  • 月経前不快気分障害(PMDD)

これらは多くの女性が悩まされている不調ですが、低用量ピルで生理周期を安定させ、ホルモンバランスを整えることで、こうした症状の改善にも役立ちます。

低用量ピルのメリット・デメリット

低用量ピルのメリット

  • 女性主体での避妊が可能(正しく服用した場合、99%以上の避妊効果)
  • 生理周期が安定する
  • 生理痛や出血量が軽減される
  • PMSやPMDDの症状緩和

低用量ピルは、避妊のためだけでなく、日常の体調管理やQOL(生活の質)を高めるためにも活用されています。 

低用量ピルのデメリット・注意点

  • 医師による処方が必要
  • 毎日の服薬が必要
  • 服用開始から1~2カ月は副作用(頭痛・吐き気・胸の張り・下腹部痛など)が出やすい
  • まれに血栓症(血管が詰まる病気)のリスクがある

副作用やリスクが心配な方もいるかもしれませんが、医師の診察を受けて定期的に検診を行いながら使用することで、安全性を高めることができます。

低用量ピルが処方できない方

以下の条件に当てはまる方は、低用量ピルの服用ができない場合があります。

  • 喫煙者の方(特に35歳以上)
  • 高血圧や高脂血症の方
  • がん(乳がん・子宮がんなど)の既往がある方
  • BMIが30以上の方(肥満)
  • 産後4週間以内、または授乳中の方
  • 肝機能が低下している方

また、40代以降の方は血栓症や心血管系のリスクが高まるため、慎重な検討が必要です。

正しい知識と理解で、心と体をもっとラクに

低用量ピルは、生理やホルモンバランスに悩む女性の強い味方になってくれるお薬です。むやみに怖がらず、正しい知識と理解をもって、自分のライフスタイルに取り入れるか検討してみてはいかがでしょうか。

もし「ちょっと気になる」、「自分も使えるのかな?」と思った方は、ぜひ一度、婦人科で相談してみてくださいね。あなたの心と体が、もっとラクになりますように。

次回は、「脱毛の最新事情」についてお伝えします。

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担当カテゴリー

子どもの健康・発達

助産師・看護師・栄養士 石嶺みき

助産師、看護師、栄養士。ミキズハウス助産院院長。株式会社FM BIRD所属。不妊治療中に献身的に励ましてくれた助産師に強い憧れを抱き、出産後に看護学校に進学。助産師専攻科を経て助産師資格を取得。卒業後は大学病院産婦人科外来・病棟に勤務し多くの出産に立ち会う。
その後、保健センター勤務に転じ、産後のメンタルサポートや妊娠SOS相談窓口、新生児訪問、乳幼児健康診査なども行う中で、フェムケア教育の普及活動を思い立ち独立。一般の方だけでなく、看護学校の教員や助産師、看護師などを対象とした講習会などを開講。現在は“全ての世代に、泌尿生殖器ケアを通して幸せになってもらいたい”という信念のもと、「フェムケア」「おちんちんケア(オムケア)」「思春期性教育」をはじめとする講演を広く行うなど、積極的に活動中。
「ぞうちんとぱんつのくに」原作・監修(2024年、KADOKAWA)

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