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新年度を前にちょっとした不安を感じているあなたへ 「心を整える」エクササイズ

サッカー女子日本代表やJリーグのフィジカルコーチを歴任したアスレティックトレーナーの広瀬統一さんのコラム。子育て中のママ・パパの健康を応援します。日々の生活や子育てで気持ちが晴れないとき、ありませんか?なんとなく感じている不安やモヤっとした感じ。今回は、そんな時に心を整える運動や向き合い方を紹介します。
「モヤっと思考」に気付いて距離をとる
ポイントは「自分を観察するもう一人の自分」をイメージすることです。とても不安なわけではないけれど、なんとなくモヤっとする思考。経験したことありませんか?例えばこんな感じです。
子どもが保育園へ初登園するシチュエーション
子どもが初めて保育園に行く日。先生や他の子どもたちとの関わりがなんとなく気になって・・・
「うちの子、大丈夫かな~。ちゃんと馴染めるかな……」
「先生に変な親だと思われないかな……」
「なんかドキドキして、体が緊張してきた……」
このように無意識に頭に浮かんでくる考えを自動思考と呼びます。もちろんポジティブな自動思考もありますが、私はネガティブなものを「モヤっと思考」と勝手に呼んでいます。
モヤっと思考は何かがうまくいかなかった後にも生じます。例えば、「またミスをした。自分はセンスないな」などです。しかし、「センスない」というのは事実ではなく、自分で作り出している単なる思考のひとつにすぎません。
このような「モヤっと思考」。意識的になくそうとする必要はありません。付き合い方のポイントは距離をとる、すなわち「自分を観察するもう一人の自分」をイメージして、モヤっとした思考や体の状態を第三者的に気づくことなのです。あなたの中に、小人のあなた(リトルあなた)を育ててみませんか?
モヤっと思考と距離をとる運動
「モヤっと思考」がでてきたときの自分の体の状態に意識を向けて、それに対応した運動をしてみます。例えばモヤっと思考がでてきたときに、こんな感覚はありませんか?それぞれに対応したエクササイズも紹介します。
- 「今、息が浅くなっているな。ゆっくり息を吸ってみよう。」→「深呼吸」をしてみる
- 「全身が硬くなってきたな。少し動かしてみよう。」→「体側伸ばし」をやってみる
- 「肩が凝ってきたな。肩甲骨周りをほぐしてみよう。」→「肩甲骨ぐるりまわし」をやってみる
体側伸ばし

- 肩幅に足を開き、反対の手で手首をつかむ
- 息を吐きながら体を横に倒して体側を伸ばす。片方につき5秒キープを左右で10〜15回行う
肩甲骨ぐるり回し


- 組んだ両手を胸から遠ざけて肩甲骨を開く
- 組んだ両手を胸に近づけながら左右の肩甲骨を閉じる。5秒かけてゆっくり回し、1・2の動きを続けて5〜10回行う
モヤっと思考と距離をとる、その他の取り組み
「モヤっと思考」が出てきた時の距離の取り方を3つ紹介します。やはりポイントは「リトルあなた」に自分を観察してもらうことです。
1.実況中継をする
自分が考えていることを客観的に説明します。シンプルに、「あー、私『うちの子、ちゃんと保育園に馴染めるかな~、泣いちゃったらどうしよ』と考えていますね。」「『先生に迷惑をかけないかな…』、『ちゃんとやり取りできるかな…』と考えていますね。」のように、考えたことをそのまま言葉にして実況するだけで大丈夫です。
感情や思考を無理に変えようとする必要はありません。言葉にすることで過度なモヤっと思考に巻き込まれずに冷静な視点を持ちやすくなります。
2.「モヤっと度」を数値化する
自分が感じている「モヤっと度」(不安感情)を0〜100%で表現します。例えば「今のモヤっとは70%くらい」だな、という感じです。不安感情を数値化することで、モヤっとした感情や不安と距離をとることができます。これによって冷静な判断ができるようになり、感情をコントロールしやすくなるのがメリットです。
さらに一歩進んで「30%は安心しているな」と前向きな感情になったり、「深呼吸したらモヤっと度が65%に減るな」など調整法を考えたり、「モヤっとするのは当然だ」と受け入れられるようになるとよいですね。
3.「言い換えの思考」を取り入れる
モヤっと思考が出てきたときに、「言い換えの思考」(代替思考)を取り入れることは、モヤっと思考や不安の悪循環を断ち切ることに役立ち、現実的で冷静な視点を持つ助けになります。例えばこんな言い換えができます。
「うちの子、ちゃんと保育園に馴染めるかな…。泣いちゃったらどうしよう…。」
▶ 言い換え:「初めての環境にドキドキするのは当たり前だし、少しずつ慣れていけば大丈夫。」
「先生に迷惑をかけないかな…。ちゃんとやり取りできるかな…。」
▶ 言い換え:「先生はプロだし、子どもを見守ってくれる。何かあれば相談すればいいね。」
「ドキドキして、お腹まで痛くなってきた…。」
▶ 言い換え:「ドキドキするくらい、子どもの登園を大切に考えてるってことね。子ども思いの親なんだから当たり前。深呼吸すれば落ち着けるね。」
このような置き換えは1対1でなくても結構です。一つのモヤっと思考に対して多くの言い換える視点を持つことで、「ネガティブな思考をいくつかの考え方のうちの一つ」と捉えられるようになり、モヤっと思考だけにとらわれない、幅広いフラットな考えができるようになっていきます。
まとめ
モヤっと思考や不安があるのは誰でも同じ。早めに気づいて、「自分を観察するもう一人の自分」を意識して、距離をとってみましょう。より健やかで穏やかな毎日を過ごせるようになりますよ。楽しんでください!
参考になる情報
自動思考に関する情報
Burns DD. (1999). Feeling Good: The New Mood Therapy. Avon <Reprint版).
Beck JS. (2021). Cognitive behavior therapy: Basics and beyond (3rd ed.). The Guilford Press.
運動に関する情報
広瀬統一. (2023). 大人女子のすごい体幹トレ&ストレッチ.Gakken.