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PMS(月経前症候群)でついイライラ…子どもに優しく接するために知っておきたいPMSの症状とセルフケアの方法

サッカー女子日本代表やJリーグのフィジカルコーチを歴任したアスレティックトレーナーの広瀬統一さんのコラム。子育て中のママ・パパの健康を応援します。今回は「月経前症候群(PMS)」の症状についてと、症状を和らげるエクササイズなどについて紹介します。
生理前になると、なんだか気分が落ち込んだり、イライラしたり、体が重く感じたり…
それはもしかしたら「月経前症候群(PMS)」かもしれません。PMSとは、生理が始まる3〜10日前くらいに起こる、心や体の不調のこと。生理が始まると自然におさまるのが特徴です。
実は、多くの女性がこのPMSを経験していて、なんと約8~9割の女性が「なんだか調子が悪い」と感じたことがあるそうです。その中でも、約2〜3割の人は、日常生活に支障が出るほどつらい症状を抱えており、さらにごく一部の人は「月経前不快気分障害(PMDD)」と呼ばれる強い気分の落ち込みを感じることもあります。
「仕事がはかどらない」「家族や友達に当たってしまう」そんな自分を責めてしまう前に、まずはPMSについて知って、できることからケアを始めてみませんか。
PMSのよくある症状って?
PMSの症状は、「心の不調」と「体の不調」に分けられます。
心の不調
- 集中できない、ぼーっとする
- 気分が落ち込む、イライラしやすい
- 急に涙が出たり、気持ちが不安定になる
- 寝つけない、または寝すぎてしまう
これらは、気分を安定させる、幸せホルモンとも呼ばれる“セロトニン”の乱れも関係していると言われています。
体の不調
- 胸が張って痛む
- おなかの張り、便秘や下痢
- 頭痛や関節の痛み
- 体重増加、むくみ
- だるさ、眠気
女性ホルモンの変化によって、体に水分がたまりやすくなるのも関係しているようです。
少しの工夫で変わる。PMSを和らげるためのヒント
「毎月のつらさを、少しでもラクにしたい」そんなあなたに、今日からできることを紹介します。
1. ゆるっと体を動かす
ヨガやストレッチ、散歩など軽い運動やリズム運動は、気分を落ち着けてくれる“セロトニン“や“エンドルフィン”というホルモンの分泌を促してくれます。体をほぐすだけでも、気持ちがスッと楽になることがありますよ。こんなエクササイズ、いかがでしょうか。
体幹キャット&ドッグ

よつんばいの姿勢から両手を床につけたまま、お尻を後ろに引いてかかとにつけ、肩から背中全体が伸びたのを感じて5秒キープしましょう。

手の位置を変えずに、ひざを伸ばして上体を起こし、少しあごを上げて、おなかの全面を5秒伸ばします。 5〜10回繰り返しましょう。
イスのせ裏面伸ばし

イスから一歩離れて立ち、右脚のかかとをイスにのせます。後ろの左脚を伸ばして立ち、右足の首を両手でつかみます。骨盤を押したり引いたりするイメージで太ももの裏・お尻の筋肉を伸ばします。左右の脚を入れ替えてそれぞれ5〜10回繰り返しましょう。
前もも引っ張り

ゆっくりと呼吸をしながらお尻に力をいれて脚を後ろに引きます。20〜60秒くらいキープ。おなかの下と太ももの前が伸ばされている感じがすればOKです。
大事なポイント
すべてのエクササイズで大事なのは「呼吸」です。ゆっくりと鼻から息を吸って口から少しずつ吐きながらエクササイズをしてみてください。
例えば、伸ばす前に4カウントで鼻から吸って、伸ばしている間に16カウントで口をすぼめて少しずつ吐きます。それぞれのエクササイズでこれを5~10セット行うなどです。呼吸をリズム運動として行うことで幸せホルモン(セロトニン)もアップします。
2. 食事をちょっと見直す
- カフェイン・塩分 → 控えめにすると、むくみ対策に◎
- マグネシウム → 気分の安定に役立ち、つらい症状が軽くなることもあります
- タンパク質・食物繊維 → 血糖値の急な上下を防ぎ、気持ちも安定しやすくなります
「ちょっと意識する」だけでも、続けていくと変化が見えてきます。
3. ストレスをやさしく手放す
心をふわっと軽くする習慣を持つことも大切です。
- ラベンダーやカモミールの香りでリラックス
- 好きな音楽を聴く、深呼吸をする
- ゆっくりお風呂に入って心と体を温める
お気に入りの“ほっとタイム”を作ってみてください。
※直接的な研究は少ないですが、これらは一般的なストレス緩和法として多くの場面でおすすめされています
つらいときは、ひとりでがんばらなくて大丈夫
「毎月、生理前になると仕事もプライベートもつらい…」そんなときは、婦人科に相談してみるのもひとつの選択肢です。
- 低用量ピル:ホルモンの変化を安定させてPMSを軽減
- 抗うつ薬(SSRI):気分の落ち込みや不安に効果的な場合も(PMDDではSSRIが有効といわれています)
あなたに合った方法を専門家と一緒に見つけていけます。遠慮せず、頼ってOKです。
あなたの毎日が、少しでも心地よくなるように
PMSは、体だけでなく心にも大きく影響するもの。でも、ちょっとした習慣やセルフケアで、そのつらさはぐっと軽くできることもあります。
- 軽い運動やストレッチをしてみる
- 食事のバランスを整える
- 自分にやさしいリラックス習慣を見つける
- つらいときは、我慢せず専門家に相談する
あなたが少しでも楽に、前向きに過ごせるよう、できることから始めてみませんか。
参考になる資料
PMSとその対処法について
Direkvand-Moghadam A, et al. (2014). Epidemiology of Premenstrual Syndrome (PMS)-A Systematic Review and Meta-Analysis Study. J Clin Diagn Res. 8(2):106–109.
Rapkin AJ, et al. (2012). Pathophysiology of premenstrual syndrome and premenstrual dysphoric disorder. Menopause International 18(2):52-59.
Halbreich U. (2008). Selective Serotonin Reuptake Inhibitors and Initial Oral Contraceptives for the Treatment of PMDD: Effective But Not Enough. CNS Spectrums, 13(7), 566–574.
Biggs WS & Demuth RH, (2011). Premenstrual syndrome and premenstrual dysphoric disorder. American Family Physician, 84(8), 918–924.
Facchinetti F et al. (1991). Oral magnesium successfully relieves premenstrual mood changes. Obstet Gynecol. 78(2):177-181.
呼吸と幸せホルモン(セロトニン)について
有田秀穂、高橋玄朴. (2011). 心も脳も整える!セロトニン呼吸法、青春出版社.
(もっと知りたいひとは Yu et al. (2011). Activation of the anterior prefrontal cortex and serotonergic system is associated with improvements in mood and EEG changes induced by Zen meditation practice in novices, International Journal of Psychophysiology 80(2):103-111も参考にしてください)
エクササイズについて
広瀬統一. (2023).大人女子のすごい体幹トレ&ストレッチ.株式会社Gakken.
イラスト/マルサイ