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見過ごすべき?叱るべき?子どもの「うそ」との付き合い術

見過ごすべき?叱るべき?子どもの「うそ」との付き合い術

育児の中で気になる子どもの「うそ」。思わず叱りたくなりますが、実はうそは心や行動の発達に関連しているもの。発達心理学を専門にしている林先生に、心がちょっと軽くなる、子どものうそとの付き合い方を教えてもらいました。

教えてくれたのは…

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林 創(はやし はじむ)先生

神戸大学大学院人間発達環境学研究科教授。発達心理学、教育心理学を専門とし、特に幼児期から児童期の心理・社会性の発達の研究をしている。主な著書に『子どもの社会的な心の発達』(金子書房)

うそをつくのは、心と行動、言葉が発達している証拠

子どもの年齢によって変化していくうその内容に、驚くことはありませんか?実は、うそをつけるというのは成長の証。相手にわざと誤った情報を伝える意図的なうそが出現するのは、“心の理論”と“実行機能”の発達が影響しています。

プールに入る予定の日、熱を測ったら微熱があるのに「36℃だった」とごまかす行為。自分の欲求、欲望を満たすために出た言葉です。なぜそれがかなわないのかをしっかり伝えましょう。

「部屋に虫がいるよ」と、ママが嫌がることをわざと言って気を引くのは、好きな相手に構ってほしいという表現かもしれません。子どもと話す時間、向き合う時間を少し長くしてみましょう。

トイレを我慢しているのに「出ない!」とうそをつくのは、他者への意識や恥といった自己意識的感情の芽生えでもあります。自然な発達と捉えましょう。

おじいちゃんが買ってくれたばかりのおもちゃを壊してしまいとっさに隠すのは、壊れたことが悲しくて、見たくないのかもしれません。欺こうとしているわけではない可能性も。子どもの行動や言動を見守りましょう。

子どもがうそをつき始めるのは2歳後半から3歳ごろ。最初は叱られるのを回避するために、お菓子を隠れて食べたのに「食べていない」と言うなど、事実を否定することから始まります。4歳から5歳になると、“心の理論”や“実行機能”が発達し高度なうそがつけるようになります。

“心の理論”とは、何を知り何を考えているのかなど、「心の状態」によって、人は行動するのだと理解することを指します。うそは相手が知らないことを把握しなければつくことができないので、この“心の理論”が必要になります。また、誤って事実を言わないよう自分の行動を抑制しなければなりません。自分の思考や行動をコントロールする“実行機能”の発達もうそに影響しています。

子どものうそにはこのような心や行動の成長のほか、言葉の発達が深く関わっているのです。成長過程の一つとして過敏に反応しすぎず、なぜそのうそをついたかを子どもに向き合って考え、対応することが大切です。

子どもの「うそ」に気付いたとき、どうすればいい?

読者から寄せられた悩みに林先生がアドバイス!大切なのは親子の対話。うそにもさまざまな種類があるため、そのときの状況やついたうその内容によって、対処方法を見極めましょう。

※読者アンケートは2024年6月12日から7月4日に実施。回答数956

Q.素直にうそを認め、正直に話してくれる方法が 知りたいです(東京都/3歳のママ)

A.時間をおいて向き合ってみましょう

すぐにうそを指摘せず、「なぜそのうそをつくことになったのか」を考えてから向き合いましょう。落ち着いて話ができる雰囲気で「あのとき、どうだったかな?」と一緒に考えるのもいいでしょう。

Q.人をだましたり傷つけるようなうそをつかないで欲しいのですが、どうしたら良いでしょうか(東京都/6歳のママ)

A.なぜうそがいけないのかを繰り返し伝えましょう

周囲が困るうそは頭ごなしに怒らず、「なぜそのうそがいけないのか」「うそをつくことで、どんな困ったことが起きるのか」を話すのが大事。最初は理解できなくても、繰り返し伝えていきましょう。

Q.しょっちゅう、うそをつきます。つく必要のないことでもうそをついていて、解決方法が分かりません(埼玉県/5歳・小学生のママ)

A.別のサインが出ていないか注意しましょう

心で感じている不安や寂しさが、うそという表現で出てしまうことも。うそをついたときに、他のサインが出ていないかどうか、普段の行動と何か違ったことはないか注意してみてください。

Q.うそをついていると確信したら、必ず正した方が良いのか、ある程度は受け流してもいいのでしょうか(東京都/0歳のママ)

A.ポジティブなうそには乗っかったり、褒めたりしてOK

道徳的に問題がなければ指摘せずノリに合わせても大丈夫。また、相手を守るためにうそをついた場合は、人を思いやった言動についてたくさん褒めてあげるのが良いでしょう。

ぎゅって読者に聞いた“クスッとかわいい”わが子の「うそ」エピソード

  • うそをつくと鼻が伸びるよと言うと、鼻を押さえながらうそをついていました(大阪府/1歳・5歳のママ)
  • トイレの後に「手を洗った?」と確認するのですが、「洗った!」とうそをつくことが度々あります。手を洗ったかどうかを、せっけんの匂いがするかどうかで確認するようにしていたら、洗わずにせっけんだけ手に付けてベタベタにして、匂いだけ付けて出てきたことが…(神奈川県/4歳・小学生のママ)
  • 食べられないのに「からしを保育園で食べたことがある」と言うので、少量納豆に混ぜて食べさせたところ、泣きそうな目で「おいしいね…」と言っていました(千葉県 /0歳・3歳・6歳・小学生のママ)
  • こそこそとお菓子を食べていてお菓子の袋がクローゼットの中にあったので、「これだれ?」と聞いたら「ネズミ!」と言われました(笑)(東京都/5歳・小学生のママ)

林先生からのメッセージ

子どものうそは「社会性の発達指標」

自分の子どもがうそをつくのは、親としてはショックかもしれません。しかし、それだけ心が発達し、社会的な力が付いたとも言えるので、深刻に悩みすぎないで。どんな気持ちで子どもがうそをついたのかをくみ取り、場面に応じて対応を変えるのが大切です。

他人を欺いたり、傷つけたりしそうな場合は注意をしつつ、子どもが安心して話せる雰囲気を作りましょう。正直に話してくれたときには「本当のことを言ってくれてありがとう」と声をかけることも良いですね。

イラスト/ホリナルミ

※この記事は、2024年10月発行の「ぎゅって11月号首都圏版」に掲載した記事を再編集したものです

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