緊急事態SOS! 病気、ケガ、事故、災害…いざという時どうする?知っておきたいトラブル対処法10選

急な病気やケガ、思わぬ事故や災害など、子育てをしていると「こんなときはどうするの?」と不安になることも多いもの。知っておきたい基礎知識を、6人のお子さんのママでもある産婦人科医の吉田先生に聞きました。

※この記事は小学館「ベビーブックFirst 2025 夏号」の内容を掲載しています

教えてくれたのは

吉田穂波先生の画像

吉田穂波先生

医師・医学博士・公衆衛生学修士。神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科教授。東日本大震災では産婦人科医として被災妊婦や新生児の支援に携わる。4女2男の母。

旅行先・帰省先での急病や事故にも注意

自宅では子どもの体調管理や事故予防に気を配っていても、普段と違う環境では思わぬ事態に遭遇することもあります。帰省の際は、祖父母の薬など子どもにとって危険なものが子どもの手の届くところに置かれていないか、旅先では、転落や溺水(できすい)の危険がある場所はないかをよく確認しましょう。子どもの急病に備えて、保険証や母子健康手帳、お薬手帳を持参し、滞在先の近くの病院を調べておくと安心です。

周囲の人に頼る「受援力」を発揮して

子どもの緊急事態に直面したとき、家族だけで乗り切るのは難しいものです。困ったときは周囲の人に素直に助けを求めることが大切ですし、日ごろから「この人には頼っても大丈夫」と思えるような人間関係を築いておくことが、いざというときの支えになります。誰かの役に立てるのは、相手の人にとってもうれしいことです。罪悪感を抱かずに、人を頼れる力(受援力)を発揮しましょう。

1.ケガ・ 虫刺され

傷による出血

流水で傷をよく洗い、傷口についた泥や砂を取り除く。出血が止まらない場合は、清潔なガーゼなどで傷を圧迫して止血する。消毒薬は基本的に不要。

すぐに受診!
●ガラスが刺さった
●動物にかまれた
●出血が止まらない
●深い傷や大きい傷がある

頭をぶつけた

傷は流水でよく洗い、清潔なガーゼなどで押さえて止血を。傷がなければタオルにくるんだ保冷剤などで冷やす。受傷後24時間は様子に変化がないか注意して観察を。

すぐに受診!
●くり返し吐く
●普段は眠る時間ではないのに眠ってばかりいる
※けいれん、意識がない→救急車を!

虫刺され

石けんなどでよく洗って流水で洗い流し、患部を冷やしてかゆみを抑える。乳幼児用のかゆみ止めの軟膏を塗り、かゆみが強い場合は皮膚科か小児科へ。

すぐに受診!
●じんましん、息苦しさ、めまい、おう吐などの全身症状が見られる

2.発熱

熱は体が病原体と闘う免疫反応なので、慌てて下げる必要はありません。熱の出始めで手足が冷たければ保温し、手足が熱くなれば薄着にして、下の絵の青丸の箇所を冷やします。授乳中は母乳やミルク、離乳食期以降は乳幼児用イオン飲料、お茶、湯冷ましなどでこまめに水分補給を。6か月未満では解熱剤は原則使いません。それ以降で、水分がとれないときや眠れないときに解熱剤を使う場合は、1日2~3回まで、5~6時間以上の間隔をあけて使います。

冷やすとよいところ

冷やすとよいところ

太い血管が通る「首」「わきの下」「脚の付け根」をタオルでくるんだ保冷剤などで冷やすと、不快感をやわらげることができます。

すぐに受診!
●ぐったりして顔色が悪い
●水分がとれずに半日以上おしっこが出ない
●何度も吐く
●初めてけいれんした

3.おう吐・下痢

おう吐が治まったら、吐物で窒息しないよう横向きに寝かせます。すぐに水分を与えると再び吐くことがあるため、水分補給は1~2時間経過後にティースプーン1杯程度から始めます。吐かなければ、少しずつ量を増やしましょう。母乳は量を制限する必要はなく、ミルクは普段の濃さで少なめに。離乳食期以降は経口補水液やりんごジュース、薄めの味噌汁などを与えます。食事の再開はあせらず、おかゆや温かいうどんなどから開始を。下痢止めを使う必要はありません。

吐いたものの処理をするときは

  1. マスクと手袋を着用する。
  2. 吐いたものの上に新聞紙やキッチンペーパーなどを広めにかぶせる。
  3. 塩素系漂白剤10㎖を500㎖の水で薄めたものを②の上から かけて、吐いたものを拭き取る。
  4. 処理したものをビニール袋に密封し、よく手を洗う。

すぐに受診!
●水分が半日以上とれない
●水のような下痢が1日6回以上続いている
●ぐったりしている
●血便が出た

4.熱中症

軽症なら大量の発汗やめまい、手足のしびれなど、中等症になると発熱や頭痛、おう吐など、重症になると異常な発汗や高体温、意識障害などが見られます。軽症で平熱なら、涼しい場所であお向けに寝かせ、首・わきの下・脚の付け根を氷などで冷やします。体を濡れタオルで拭くのも効果的です。熱中症の発熱に解熱剤は効きません。母乳やミルク、離乳食期以降なら乳幼児用イオン飲料で水分補給を。熱中症の症状は進行することがあるので、経過観察が重要です。

日焼け対策も忘れずに

日焼け対策も忘れずに

ベビーカーの日よけ、つばの付いた帽子、長袖の上着などを活用して、物理的に紫外線を遮る工夫を。それとともに、生後6か月以降はベビー用の日焼け止めも活用しましょう。

すぐに受診!
●口から水分をとれない
●応急処置をしても症状が改善しない
※体温40℃以上・意識障害・けいれん→救急車を!

5.誤飲

異物を誤って口に入れた場合、のどに詰まらせて苦しんでいる場合は吐き出させる必要がありますが、飲み込んでしまった場合は「吐かせない」対応が基本となります。下記に挙げたもののほか、磁石や鋭利な異物を飲み込んだ場合もすぐに受診を。

ボタン型電池
飲み込むと短時間で食道や胃を損傷するため、吐かせずに、レントゲン検査ができる総合病院をすぐに受診。誤飲したものと同じ電池を持参する。

たばこ
たばこ本体、吸い殻、灰皿の水、加熱式たばこのカートリッジのいずれを誤飲した場合もすぐに受診を。吸収されやすくなるので、何も飲ませないこと。


誤飲したものと同じ薬を持参して、すぐに受診を。誤飲した薬を確認するため、薬の箱や、処方薬の場合は処方された人のお薬手帳も持参するとよい。

家庭用化学製品
塩素系漂白剤、「酸性」「アルカリ性」と書いてある洗剤、防虫剤を誤飲した場合は、吐かせずにすぐに受診。灯油や除光液の誤飲は吐かせずに救急車を。

予防のポイント

・直径39㎜以下のものを手の届くところに置かない
直径39mmの円の中に入るものは、子どもが飲み込んでしまう危険があるので注意!
・危険なものは高さ1m以上の手の届かないところに置く

6.誤えん・窒息

食べるものや異物を飲み込み、のどに詰まらせて窒息したときは、まず119番に通報を。体の向きを変えると異物が出やすくなるため、1歳未満は方法Aと方法Bを交互に、1歳以上はまず方法Aを行い、異物が出なければ方法Cを実施しましょう。

【方法A】背部叩打(こうだ)法

背部叩打(こうだ)法

(1歳未満)片腕にうつぶせで乗せて顔を支え、頭を低くして背中の真ん中を手の付け根で何度も連続して強く叩く。

(1歳以上)後ろから片手を脇の下に入れ、胸と下あごを支えてあごをそらせてから、もう片方の手の付け根で肩甲骨の間を強く速く叩く。

方法B】(1歳未満)胸部突き上げ法
片腕に子どもをあおむけで乗せて、後頭部を手のひらでしっかり支え、胸部を他方の2本指で強く押す。方法Aと数回ずつ交互に行う。

方法C】(1歳以上)腹部突き上げ法
子どもの後ろから両腕を回し、握りこぶしにした片手をみぞおちの下に当てる。もう片方の手をその上に当てて、両手で腹部を上に向かって押す。方法Aでうまくいかなかった場合に行う。

予防のポイント

・気道に詰まりやすい食べものは1㎝以下に切ってから与える
ミニトマト、ブドウ、サクランボ、団子、うずらの卵、キャンディ型チーズ、ベビーカステラなどは、そのまま食べさせると窒息のおそれがあるため危険!
・5歳以下にはピーナッツなどの豆類を与えない
・異物を口に入れようとしていたら、大声で注意せず、優しく声をかけ吐き出させる(びっくりすると飲み込む危険あり)
・ブラインドやカーテンのひもは高いところにまとめておく

7.溺水

溺れたときは、5分以上経過すると脳の機能が回復しなくなるおそれがあるため、一刻も早い手当てが必要です。救急車が到着するまでの間に、心臓マッサージと人工呼吸を組み合わせた心肺蘇生ができるよう、手順を確認しておきましょう。

STEP1 大声で呼びかけ意識を確認

反応があれば、体と顔を横に向け、上側の足を前に出して曲げる姿勢にし、体を拭き乾いたタオルなどで包んで保温する。無理に水を吐かせない。

STEP2 反応がなければ 救急車を呼ぶ

人を呼べる場合はAEDを持ってきてもらい、未就学児用モードまたは未就学児用パッドを使用する。AEDがなければすぐに119番通報をし、STEP3の心臓マッサージを開始。

STEP3 呼吸がなければ 心臓マッサージを

1歳未満

両方の乳頭部を結ぶ線の中央から少し足側を、胸の厚さの3分の1が沈むように、2本の指で押す。

1〜3歳

片手または重ねた両手の付け根で、胸の中央を100~120回/分の速さ (例:アンパンマンのマーチのテンポ)で、胸の厚さの3分の1が沈む強さで押す。

予防のポイント

・お風呂の水は抜く
・子どもは大人の後に浴室に入れ、大人より先に浴室から出す
・大人が髪を洗うときは子どもを湯船から出す

乳幼児の溺水事故で最も多いのは、お風呂での事故。溺れるとき、子どもは声を出す余裕もないまま静かに溺れるので、子どもが一人で湯船に入らないよう細心の注意を。
・海や川、プールでのレジャーではライフジャケットを着用させる

※心臓マッサージを30回行ったら、あごを持ち上げて気道を確保し、1秒間息を吹き込む人工呼吸2回を組み合わせるとより効果的。

8.やけど

子どもは皮膚が薄く、やけどが皮膚の深い部分まで進行しやすいので注意が必要です。携帯用カイロやホットカーペットなどによる低温やけどは軽症に見えても重症化していることがあります。熱を発するものには直接触れないよう配慮を。

すぐに10分以上冷やす

全身や広範囲、顔面のやけど、皮膚が白くなっている場合は救急車を。手足の指、陰部のやけど、水ぶくれができた場合はすぐに皮膚科か形成外科へ。水ぶくれはガーゼなどで保護します。応急処置としては、すぐに流水で10分以上冷やしましょう。ただし、乳幼児は体を冷やすと低体温症になりやすいので、全身やけどの場合は濡れたバスタオルで体を包み、その上からタオルケットなどで保温を。

服は無理に脱がさない

服は無理に脱がさない

服の上から熱湯などがかかった場合、無理に服を脱がせようとすると皮膚がはがれることがあるため、服は脱がさずに、服の上から流水をかけて冷やします。耳や目元など、流水が当てられない部位はタオルに包んだ保冷剤などで冷やしましょう。

予防のポイント

・子どもを抱っこしたまま熱いものに近づかない
電気ケトル、電気炊飯器、加湿器などの家電から出る蒸気に触れてやけどをすることもあるので注意が必要。
・鍋やコーヒーカップなどの取っ手は、手前ではなく奥に向くようにして置く
・電気ケトルなどのコードは、子どもが触ったり、つまずいたりしない位置にする
・テーブルクロスは使わない

テーブルクロスを引っ張って、上にのっている熱い飲みものや電気ケトルなどを倒す危険がある。


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