子どもの姿勢が悪いのは、やる気の問題ではない!理学療法士が教える、運動で育てる「よい姿勢が続く体」

こんにちは!オンライン運動教室「へやすぽアシスト」で、これまで1000人以上のお子さんの運動や発達をマンツーマンでサポートしてきた理学療法士のまさやコーチです。理学療法士として身体の動きや発達段階を分析し、子ども一人ひとりに合った「上達のメソッド」をつくることを得意としています。
今回の記事では、多くの親御さんが悩んでいる「子どもの姿勢が悪い」という悩みの背景にある体の発達のメカニズムと、姿勢維持能力を高めるための運動遊びについてお伝えします。
「ちゃんと座りなさい」と言っても直らない理由
「ちゃんと座りなさい」「背筋ピン!」そう声をかけても、子どもはすぐに猫背になってしまう。姿勢が崩れると、字も雑になって、だんだん集中力も切れてくる…。「うちの子、やる気がないのかな」「だらしないだけ?」そう感じている親御さんは少なくありません。

でも、理学療法士の立場から見ると、これは「性格」や「やる気」の問題ではなく、姿勢を支える「体の土台」が、まだ育ちきっていないサインであることが多いのです。
「良い猫背」と「悪い猫背」があるのを知っていますか?

親御さんからよく聞く姿勢の悩みとして「うちの子すごく猫背なんです…」という声があります。まず知っておきたいのは、「猫背=全部ダメ」ではないということです。私たちの体は、腕を前に伸ばすと自然に背中が少し丸くなり、腕を後ろに引くと背中が反るような構造になっています。


そのため、机に向かって書いたり食べたりするときに、背中がほどよく丸くなるのは、実はとても自然な姿勢なのです。だからこそ、食事や勉強のたびに「背筋を伸ばしなさい!」という無理に正そうとすると、かえって体に負担がかかりやすくなることもあります。大切なのは「ピシッと真っすぐをキープすること」ではなく、長く座っていてもラクに集中し続けられるかどうかです。
姿勢が崩れるとき、体で起きていること
姿勢が崩れるとき、表面上は「猫背になる」「ぐにゃっと傾く」といった姿が目につきます。しかし実は、その背景には、感覚や身体の土台(=発達ピラミッドの下層)が十分に育ちきっていないケースが多くあります。発達のピラミッドでは、下の土台(感覚・身体機能)が安定して、はじめて学習や集中といった上の力が発揮できると考えられています。
「発達の土台」の整え方については、前回の記事で詳しく紹介しています。
姿勢は、このピラミッドの中層にあたります。そのため、下にある感覚の部分が揺らぎやすいと、どれだけ「いい姿勢をしよう」と意識しても、長く続きません。

姿勢が崩れやすい背景には、たとえば次のような要素があります。
- 足裏やお尻で「支えられている感覚」が弱い
- どれくらい力を入れれば、まっすぐ座れるかイメージしにくい
- 体幹と手先を同時に使うのが難しい
- 周囲の音や映像に注意が散りやすい
- 机や椅子の高さが体に合っていない
こうした体の土台が整っていない状態で、「背筋を伸ばして!」「ちゃんと座りなさい!」と声をかけ続けると、かえって子どもに負担がかかってしまうこともあります。そこで次に、声かけ以外にできることとして、姿勢の土台を育てる運動遊びをご紹介します。
姿勢が崩れやすい子におすすめの3つの運動遊び
1つ目は、座ったまま風船ポンポン

お尻を椅子につけたまま、風船を落とさないようにポンポンする遊びです。
体幹で姿勢を保ちつつ、手先の力加減をコントロールしながら動かすことで、姿勢の改善、書字・箸操作能力の向上にもつながります。
2つ目は、ボール挟み運び

落とさないようにそっと歩くことで、おなかや背中の感覚を養うことができます。
この練習をすることで姿勢をコントロールする際に、背中側への意識も向けやすくなり、自分にあった姿勢をみつけるのに役立ちます。
3つ目は、うつ伏せキャッチボール

おなかを床につけた状態でボールを弾く遊びです。
姿勢を維持するのに必要な背筋を伸ばす感覚を遊びの中で鍛えられます。また、ボールを打ち返すと同時に力加減の練習にもなるため、箸や鉛筆の上達にも繋がります。
できれば一緒に見直したい、座る環境のポイント
なお、姿勢を支える体の土台がまだ育ち途中の子どもにとっては、座る環境が整っていると、姿勢を保ちやすくなる場合もあります。たとえば、次のようなポイントが整っているかどうかで、姿勢を保ちやすさは変わります。
- 足が床(または台)につき、足裏で支えられている
- お尻・足・背中の三点が安定して支えられている
- テレビやおもちゃなど、強い刺激が視界に入りにくい
椅子や机を新しく買い替えなくても、雑誌を束ねて足台にしたり、クッションで座面の高さを調整したりと、身近なもので十分に工夫することができます。
親御さんにお伝えしたいこと
子どもの姿勢は、集中力や書字の上手さを「結果としてあとから整えるもの」ではありません。むしろ、姿勢そのものが、集中したり考えたりする力を支える大切な土台です。その土台は、
- 体をどう支えているかを感じ取る感覚
- 必要な力を、必要な分だけ使う力加減
- 周りに気を取られすぎず取り組むための集中力
- 安心して座れる環境
といった、いくつもの要素が重なり合って、少しずつ育っていきます。
だからこそ、姿勢が崩れるのは、やる気の問題でも、性格の問題でもありません。それは、「まだ体の土台が育っている途中なんだ」という、発達の過程でよく見られる姿です。まずは、「この子がいちばんラクに集中できる姿勢って、どんな形だろう?」と問いながら、その子の体に合った環境や関わり方を探してみてください。
姿勢を正そうとするのではなく、支えていくことが、学習のつまずきや「できない」の背景を少しずつ解きほぐし、お子さんの力がすっと発揮される未来につながっていきます。
ライター
「へやすぽアシスト」代表コーチ/理学療法士 まさやコーチ
これまで1000人以上の子どもを対象に、延べ3000回以上の運動・発達支援を実施。特に、発達が気になる子どもや運動が苦手な子どもへのサポートに力を入れ、「できた!」という成功体験を積み重ねる指導を大切にしている。
東京パラリンピックではドイツ・ベラルーシ代表選手のトレーナーを務めるなど国際的な経験も持つ一方、現在はオンライン運動・発達支援サービス「へやすぽアシスト」の代表コーチとして、レッスンを通じて、全国の親子に「遊びながら育つ運動の楽しさ」を届けている。 株式会社フレーベル館の月刊保育絵本『キンダーブック2』(3・4歳児向け)で運動あそびコーナーを監修。さらに2025年4月号からは、明治図書出版『特別支援教育の実践情報』にて、「学びの土台を育む運動あそび」の1年間の連載を担当。




























