できた・できないよりも「今の気持ち」を言葉に!自己肯定感を育む声かけのポイント

できた・できないよりも「今の気持ち」を言葉に!自己肯定感を育む声かけのポイント

子育てをしていると、「これでいいのかな?」、「ほかの子と少し違う気がするな…」そんなふうに感じること、ありませんか。この連載では、発達の個性にかかわらず、すべての子どもに共通する“育ちのヒント”を、遊びや毎日の関わりの中からお届けします。

うまくいかない日があっても大丈夫。思い通りにいかない時期があっても大丈夫。「私は私で大丈夫」そんな気持ちが、親子の毎日に少しずつ増えていったらうれしいです。

アスレティックトレーナーが教える 心・体・感覚で支える子育て

私は長年、アスレティックトレーナーとして、トップアスリートや成長期の子どもたちの体と心を支えてきました。サッカー女子日本代表やJリーグユースの現場では、強くてうまい選手たちが集まっていても、それだけでは目標にたどり着けないことを、何度も経験しました。

本当に大切だったのは、選手たちが「うまくいくかどうかは分からないけれど、やってみよう」と自分を信じる気持ち。仲間を思いやり、尊重すること。うまくいかないときに、自分の気持ちを立て直し、あきらめずにやり抜く力でした。

そしてもう一つ、発達に特性のある子どもたちの支援に関わる中で、私は大切なことに気づきました。それは、子どもは「教えられて」育つのではなく、「遊び」や「関わり」の中で、自然に育っていくということです。

触れること。動くこと。笑い合うこと。誰かと一緒に遊ぶこと。そうした何気ない時間が、子どもの体を整え、心を落ち着かせ、「やってみよう」「大丈夫かもしれない」そんな気持ちを、少しずつ育てていきます。

この連載では、「こうしなければいけない」ではなく、「こんな関わり方もあるんだ」そう感じてもらえるヒントを、心・体・感覚のつながりからお伝えしていきます。

幼少期に大切な発達の土台づくり

子どもの発達は家づくりのようなもの。多くの親は、「子どもが大きくなったら、大きな家になって欲しい」と願うものです。最終的に大きな家になるか、こじんまりとした個性的な家になるか、どんな家になるかは本人が決めること。でも、大きな家になりたいと思ったときに土地が狭かったり、土地が不安定であれば、大きな家にはなれません。

なりたい家になれるように育って欲しい。そのためには、広くて、安定した土地が必要。その土地にあたるのが、「心と体」です。

心の土台になる「自己肯定感と自己効力感」

この心と体の土台の中心になるのが、「自分は自分で大丈夫」と感じられる自己肯定感と、「うまくいくか分からなくても、やってみよう」と思える自己効力感です。今回はこのうち、まず「自己肯定感」について考えていきます。

自己肯定感を育む関わり

あなたはあなたのままで大丈夫。それは、できた・できないに関係なく、存在そのものが大切にされていると感じられることです。この回では、そんな関わりが、どのように自己肯定感を育てていくのかを一緒に考えていきます。

自己肯定感というと、「自信があること」「前向きでいること」だと思われがちです。けれど、幼少期に育てたい自己肯定感の中心は、うまくいかないときでも、自分はここにいていいと感じられることにあります。失敗したとき、思い通りにできなかったとき、それでも「自分は大丈夫」と思える心。その感覚が、自己肯定感の土台になります。ここで大切なポイントを、ひとつにまとめるとこうなります。

自己肯定感を育てる関わりの中心は、「できたかどうか」ではなく、「今の自分が受け止められている」と感じられること。

私たちはつい、子どもを励まそうとして、「すごいね」「上手だね」と声をかけます。それ自体は、決して悪いことではありません。ただ、結果やできたことばかりが注目され続けると、子どもは「できた自分だけが認められる」と受け取ってしまうことがあります。自己肯定感を育てる関わりで大切なのは、結果よりも、その子の存在や気持ちに目を向けることです。

たとえば、うまくいかずに泣いているとき。「大丈夫」「気にしないで」と気持ちを切り替えさせるよりも、「悔しかったね」「悲しかったんだね」と、今の気持ちに名前をつけてあげる。それだけで子どもは、「このままの自分でも受け止めてもらえた」と感じることができます。

また、何かに取り組んでいる途中でも、「ちゃんとできるかな?」と先回りするより、「今、一生懸命やっているね」、「考えているんだね」と、存在そのものを見てもらえる経験が、自己肯定感の土台を少しずつ安定させていきます。

ここで目指したいのは、「できるようにさせること」ではありません。できなくても大丈夫だと感じられる関係をつくることです。その安心感があるからこそ、子どもは次の一歩に向かう力を、自分のペースで育てていくことができるのです。

ここでいう「受け止める」とは、行動のすべてを認めることではありません。気持ちを大切にしながら、社会の中で育っていくための関わりを、少しずつ重ねていくことだと思ってください。気持ちを受け止めてもらう経験は、やがて他者の気持ちや、ルールを理解する力へとつながっていきます。

今日からできる、言い換えワード

大事にしたい声かけと関わりは3つです。

1.できた・できないより、「今の気持ち」を言葉にしてみる

例えば…

●パズルがうまくできずに、途中で投げ出したとき

「できなかったね」 > 「思い通りにいかなくて、悔しかったね」

●お友だちとのやりとりで、黙ってしまったとき

「どうして言えなかったの?」 > 「言いたいことがあったけど、言えなかったのかな」

気持ちを言葉にしてもらうことで、「今の自分」をそのまま受け止めてもらえた感覚が残ります。

2.結果が出なくても、「一緒にいたよ」「見ていたよ」と伝える

例えば…

●お絵かきで途中でやめてしまったとき

「最後まで描けばよかったのに」 > 「考えながら描いているところ、見ていたよ」

●運動遊びでうまくできなかったとき

「まだできないね」 > 「チャレンジしているところ、そばで見ていたよ」

「評価」ではなく「存在」を伝える言葉です。

3.うまくいかなかった日も、「今日もあなたで大丈夫」と心の中で確認する

例えば…

●叱ることが多かった日の夜。心の中で、または寝る前に

「今日はうまくいかないことも多かったね。それでも、あなたはあなたで大丈夫だよ」

●親自身が疲れているとき

「ちゃんとできなかったな」と思ったら「それでも、今日一日一緒に過ごした。それでいい」

この言葉と思考は、子どもだけでなく、関わる大人の心も整えてくれます。

保護者のみなさまへ

ちょっとした言い換えや、見方を少し変えるだけで、子どもも大人も、ふっと力が抜けることがあります。まずは、大人が「自分は自分で大丈夫。」と思えるといいですね。

参考になる情報
Harter, S. (2012). The Construction of the Self, 2nd Edition: Developmental and Sociocultural Foundations. Guilford Press.
Orth, U., & Robins, R. W. (2014). The development of self-esteem. Current Directions in Psychological Science, 23(5), 381–387.

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担当カテゴリー

子どもの健康・発達

アスレティックトレーナー 広瀬統一

早稲田大学スポーツ科学学術院教授。専門はアスレティックトレーニング、トレーニング科学ほか。1974年生まれ。早稲田大学人間科学部スポーツ科学科を卒業後、東京大学大学院総合文化研究科で博士課程修了(学術博士)。早稲田大学にて教鞭をとるかたわら、Jリーグユースチームやサッカー女子日本代表チームのフィジカルコーチを歴任。著書に「女子の体幹レッスン」「大人女子の体幹ストレッチ」(いずれも学研プラス)などがある。

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