新学年に多い悩み「忘れ物・朝の準備が苦手」は怠けているからじゃない!運動で育つ「考えて動ける力」の整え方

こんにちは!オンライン運動教室「へやすぽアシスト」で、これまで1000人以上のお子さんの運動や発達をマンツーマンでサポートしてきた理学療法士のまさやコーチです。理学療法士として身体の動きや発達段階を分析し、子ども一人ひとりに合った「上達のメソッド」をつくることを得意としています。
今回の記事では、多くの親御さんが悩んでいる「忘れ物の多さ」や「朝の準備の遅さ」「授業の切り替えの苦手さ」について、見落とされやすい環境と発達の視点から、新学年をスムーズにスタートするための整え方をお伝えします。
新学年になると困りごとが増える理由
「また忘れてる…」「何回言えば分かるの?」「このまま新学年、大丈夫かな…」そう不安になる親御さんは少なくありません。でも理学療法士の立場からお伝えすると、これらはやる気や性格だけの問題ではないことが多いのです。

春は、子どもにとって大きな環境変化の季節です。教室、先生、時間割、クラスメイト、持ち物…。情報量が一気に増えます。実行機能(考えて動ける力)が発達途中のお子様では、この情報量の急増が脳にとって大きな負担になります。その結果として、知らず知らずの内に疲労も感じてしまい、
- 朝にフリーズして動けない
- 忘れ物が急に増える
- 授業や遊びの切り替えでトラブルが起きやすい
といった様子が見られやすくなります。これは能力が足りないのではなく、「処理する量が一時的に増えすぎている」状態ともいえます。
低学年でよく見られる「つまずき」の正体
では、なぜこのようなことが起きるのでしょうか。
低学年の子どもたちは、いわゆる「実行機能(=考えて動ける力)」と呼ばれる力を発達させている途中です。「実行機能」とは、頭の中で段取りを組み、順番に行動し、終わったら切り替える力のことを指します。大人にとっては無意識にできることでも、子どもにとっては高度な脳の作業なんです。
例えば、朝の準備ひとつ取っても、子どもは同時にいくつもの処理をしています。
- 今日の持ち物を思い出す
- ランドセルの中身を確認する
- 着替える
- 時間を意識する
- 次にやることを考える
これらを頭の中だけで整理するのは、まだ負荷が大きいことが多いのです。忘れ物が多いのは注意力がないから、朝が遅いのは怠けているから、と単純に考えるのではなく、「まだ発達途中の力に対して、求められるレベルが高すぎないか?」と見直す視点が大切です。
発達のピラミッドから見る「考えて動ける力」
子どもの発達を考えるときに、よく用いられる考え方に「発達のピラミッド」があります。これは、発達が下から順番に積み上がっていくというモデルです。
「発達の土台」の整え方については、前回の記事で詳しく紹介しています。

一番下の土台には、
- 感覚(視覚・聴覚・触覚・前庭感覚・固有覚)
- 基本的な身体機能(姿勢保持・バランス・呼吸)
があります。その上に、
- 姿勢の安定
- 両側の協調運動
- 目と手の協応
といった土台が積み重なり、さらにその上に、
- 注意力
- 記憶
- 計画力
- 切り替え力
といった「考えて動ける力」が乗っていると考えられています。つまり、「考えて動ける力」はピラミッドの上層にあたる力です。下の土台が不安定なままでは、上にある「考えて動ける力」はぐらつきやすくなります。
例えば、姿勢が崩れやすい子は、座っているだけで多くのエネルギーを使っています。前庭感覚や固有覚が不安定だと、体の位置を保つこと自体が大仕事になります。その状態で「先生の話を聞く」「次の準備を考える」といった作業を求められると、脳の余力が足りなくなってしまいます。
その結果として、
- 忘れ物が増える
- 指示が頭に入りにくい
- 活動の切り替えが遅れる
といった行動として表れることがあります。大切なのは、これを「できない」と見るのではなく、「土台が整っていないのかもしれない」と捉える視点です。それでは「考えて動ける力」を育てるために、今日からできる工夫を紹介します。
「考えて動ける力」を育てる3つの運動遊び
「考えて動ける力」を安定させるためには、次の3つの土台が重要です。
- 前庭感覚(揺れやバランスを感じる力)
- 固有覚(体の位置や力加減を感じる力)
- 姿勢保持(体幹を支える力)
これらを家庭で楽しく育てられる運動遊びを紹介します。
1つ目は、「スティック歩き」

スティックを使用して不安定な場所を作りつつ、手足・体幹に刺激を入れることができます。
運動の中で環境に合わせてバランスを崩さないようにする力を養えます。
2つ目は、「フープタッチゲーム」

手足・体幹に刺激を入れることで姿勢を維持する練習に加え、更に親御さんの指示に耳を傾け、フープの色も目で確認しながら行うので、視覚・聴覚の情報処理の練習になります。
3つ目は、「ボールに合わせて」

ジャンプという動きを通してバランスを保つ動きの練習にもなり、更に指示者の動きを見ながら体を動かす為、土台の感覚全てにすごくいい刺激になる運動です。
運動とあわせてできる、「環境を整える」こと
発達支援の基本は、努力を増やすことではなく、できる仕組みを作ることです。子どもに「もっと頑張って」と伝える前に、環境を見直してみるだけで、行動は驚くほど変わることがあります。

などの環境調整は、まだ発達途中の実行機能を外側から支える役割を果たします。これは甘やかしではなく、発達段階に合ったサポートです。ただし、それだけでなく「体の土台」を育てることが、実行機能の安定には欠かせません。
親御さんへ伝えたいこと
忘れ物も、朝の準備の遅さも、切り替えの苦手さも、発達の過程でよく見られる姿です。「どうしてできないの?」と責めるより、「どの土台に発達の弱さがあるのか」と考える視点に変えてみてください。環境で外側から支え、運動遊びで内側から育てる。その両輪がそろうことで、子どもは少しずつ「自分でできる」力を身につけていきます。春は変化の多い季節ですが、焦らなくて大丈夫です。整えて、育てていく、その積み重ねが新学年を軽やかにスタートさせる土台になります。
ライター
「へやすぽアシスト」代表コーチ/理学療法士 まさやコーチ
これまで1000人以上の子どもを対象に、延べ3000回以上の運動・発達支援を実施。特に、発達が気になる子どもや運動が苦手な子どもへのサポートに力を入れ、「できた!」という成功体験を積み重ねる指導を大切にしている。
東京パラリンピックではドイツ・ベラルーシ代表選手のトレーナーを務めるなど国際的な経験も持つ一方、現在はオンライン運動・発達支援サービス「へやすぽアシスト」の代表コーチとして、レッスンを通じて、全国の親子に「遊びながら育つ運動の楽しさ」を届けている。 株式会社フレーベル館の月刊保育絵本『キンダーブック2』(3・4歳児向け)で運動あそびコーナーを監修。さらに2025年4月号からは、明治図書出版『特別支援教育の実践情報』にて、「学びの土台を育む運動あそび」の1年間の連載を担当。




























