やればできる! 自己効力感を育む関わり「できた」よりも「やってみた」が力になる

前回は、「私は私で大丈夫」と感じられる自己肯定感についてお話ししました。今回はもう一つ、子どもの育ちの土台として欠かせない自己効力感について考えていきます。

自己効力感とは

「できるかどうか分からないけれど、やってみよう」「やってみる価値がある」と感じられる心の力のことです。ここで大切なのは、「できた経験」よりも「やってみた経験」が、子どもを前に進ませるという視点です。

自己肯定感との違いとつながり

自己肯定感が、「できなくても、私は大丈夫」、という安心の土台だとしたら、自己効力感は、「うまくいくか分からないけど、挑戦してみよう」、という一歩を踏み出す力です。安心できる土台があるからこそ、子どもは挑戦できます。

逆に、「失敗したら否定される」「できないとダメだと思われる」環境では、挑戦そのものを避けるようになってしまいます。

「失敗=ダメ」にならない関わり

子どもが挑戦しなくなる理由は、失敗そのものではなく、失敗したときの大人の反応にあります。すぐに正解を教えられたり、できなかった点だけを指摘されたりすると、子どもは「やらない方が安全だ」と学んでしまいます。

自己効力感を育てるために大切なのは、失敗を「ダメな結果」にしないこと。失敗は、「やってみた証拠」。うまくいかなかった経験も、挑戦の一部です。

「褒めればいい?」という誤解

ここで、「たくさん褒めればいいのでは?」と思われるかもしれません。もちろん、褒めること自体が悪いわけではありません。ただ、褒める言葉は結果への評価になりやすい、という特徴があります。

そして結果だけを褒め続けると、「褒めてもらえることしかしない」「失敗しそうなことは避ける」など、チャレンジしづらくなることも知られています。自己効力感を育てる関わりで大切なのは、褒めることよりも「承認すること」です。承認には、次の3つがあります。

  1. 結果の承認:「最後までできたね」
  2. プロセスの承認:「難しいところまで考えていたね」
  3. 存在の承認:「一緒にやってくれてうれしいよ」

特に、プロセスや存在を承認される経験は、「うまくいかなくても、またやってみよう」という力につながります。自己効力感は、突然生まれるものではありません。日々の声かけ、小さな成功体験、安心できる情緒、そして身近な大人のロールモデル。こうした日常の関わりが重なり合うことで、「やってみよう」という気持ちは少しずつ育っていきます。

今日からできる関わり

待つ・任せる・振り返る

自己効力感を育てる関わりのキーワードは、3つです。

  1. 待つ:すぐに手や口を出さず、考える時間を大切にする
  2. 任せる:「どうする?」と選択を委ねる
  3. 振り返る:結果ではなく、やってみたことを一緒に振り返る

どれも特別なことではありませんが、子どもに「自分でやっていい」という感覚を残してくれます。どれも、子どもを思い通りに動かすためではなく、子ども自身が「やってみよう」と思える力を支える関わりです。

おわりに

自己効力感は、がんばらせることで育つものではありません。安心できる関係の中で、「挑戦しても大丈夫」「失敗しても大丈夫」、そう感じられる経験の積み重ねが、「やってみよう」という力を育てていきます。

その背景には、「やってみよう」と背中を押す大人の声かけ、うまくいかなくても「前より少し進めた」と感じられる経験、安心して気持ちを出せる情緒、そして、完璧でなくても挑戦する身近な大人や友達の姿があります。

まずは今日、ひとつだけ「待ってみる」「任せてみる」。
そこから始めてみてください。

【参考になる情報】
キャロル・S・ドゥエック(今西康子 訳)(2016). マインドセット―「やればできる!」の研究、草思社
アルバート・バンデューラ 編著(本明寛、野口京子 監訳)(1997).激動社会の中の自己効力、金子書房

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担当カテゴリー

子どもの健康・発達

アスレティックトレーナー 広瀬統一

早稲田大学スポーツ科学学術院教授。専門はアスレティックトレーニング、トレーニング科学ほか。1974年生まれ。早稲田大学人間科学部スポーツ科学科を卒業後、東京大学大学院総合文化研究科で博士課程修了(学術博士)。早稲田大学にて教鞭をとるかたわら、Jリーグユースチームやサッカー女子日本代表チームのフィジカルコーチを歴任。著書に「女子の体幹レッスン」「大人女子の体幹ストレッチ」(いずれも学研プラス)などがある。

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