「うちの子、足が遅い…」は変えられる!運動会前に知りたい「3つのポイント」とおうち運動遊び

こんにちは!
オンライン運動教室「へやすぽアシスト」で、これまで1000人以上のお子さんの運動や発達をサポートしてきた理学療法士のまさやコーチです。過去には東京2020パラリンピックで車椅子フェンシング ベラルーシ代表選手のサポートも行ってきました。
今回の記事では、運動会などで悩みの多い「かけっこ」についてお話します。かけっこに悩む親御様に少しでも希望を与えられたらと思っていますので、是非最後までお楽しみください。
かけっこが苦手なのは「やる気」だけじゃない
「うちの子、足が遅くて心配です」「フォームを教えても、すぐ元に戻ってしまいます」。運動会が近づくと、こうしたご相談が増えてきます。でも、かけっこが苦手なのは、やる気や根性だけの問題ではありません。実は、速く走るために大切なのは、腕や脚の動かし方よりも先にある「体の土台」です。
これは、発達を「土台の部分から積み上げていく」という考え方ともつながります。姿勢や集中、器用さといった目に見える力は、感覚などの発達の土台の影響を受けます。これまでご紹介してきた「発達のピラミッド」でも、感覚や身体機能が土台になり、その上に姿勢や協調運動、さらに注意や学習が積み上がる形で整理されています。
「発達の土台」の整え方については、前回の記事で詳しく紹介しています。

つまり、かけっこで本当に見たいのは、「腕を大きく振れているか」だけではありません。まっすぐ進めるか、体がぶれにくいか、地面を軽く押せるか、最初の一歩が前に出るか。こうした動きが安定してくると、結果としてフォームも安定しやすくなります。
速く走る子は「体の使い方の土台」が育っている
走るという動きは、実はかなり複雑です。前に進みながら、倒れすぎず、でも後ろに残りすぎず、左右にぶれないようにバランスをとる。そして、足が地面に着いた瞬間に必要なだけ力を出し、また次の一歩へつなげていきます。
このときに大切になるのが、いわゆる「感覚の情報」です。たとえば、
- 頭の揺れやスピードの変化を感じて姿勢を保つ感覚
- 関節や筋肉から「今どこに、どれくらい力が入っているか」を感じる感覚
- 足裏から地面の硬さや安定感を受け取る感覚
- 進む方向や周りとの距離をつかむ視覚
こうした情報を脳がまとめて使うことで、子どもは走りながら姿勢を保ち、体を前に運んでいます。姿勢は、視覚だけでなく、前庭覚や体性感覚を含む複数の感覚情報の統合で成り立つことが知られています。

ここで大事なのは、親御さんが専門用語を覚えることではありません。
- 「この子は今、脚の力が弱い」のか、
- 「力はあるけれど、うまくタイミングが合っていない」のか、
- 「前に行きたいのに体がぶれて怖くなっている」のか。
そういう見方ができるだけでも、関わり方はかなり変わります。では、具体的にどこを見ればいいのでしょうか。
親御さんにみてもらいたい「3つのポイント」
かけっこのフォームを細かくチェックしようとすると、どうしても難しく感じます。でも、家庭で見るなら、まずはこの3つで十分です。
①まっすぐ走れているか。
左右に大きくぶれる子は、脚力だけでなく、体の軸を保つことが苦手なことがあります。
②最初の3歩で前に出られているか。
スタート直後に体が起きすぎたり、重心が後ろに残ると、前に進む力が逃げやすくなります。最初の数歩は目線や姿勢を保ったままスムーズに加速することがポイントです。
③足音が大きすぎないか。
ドタドタと重い音が続くときは、接地が長くなっていたり、地面を押すより「落ちて受けている」走り方になっていることがあります。
ここで大切なのは、できていないところを責めないことです。親が見るのは「ダメ探し」ではなく、「どこを整えると走りやすくなるか」を見つけることです。
おうちでできる!かけっこにつながる3つの運動遊び
子どもの運動習慣づくりには、保護者の関わりが大きく影響します。実際に、保護者が子どもと一緒に遊ぶ頻度や体を動かす機会が、子どもの活動性や基本的な動作と関係していることもわかっています。 だからこそ、家庭での練習は「特訓」よりも、短く、楽しく、続けられることが大事です。おすすめは、おうちで簡単にできる次のような運動遊びです。
1つ目は、「タオルの船」

タオルを使って、前後左右に揺れることで、いろいろな方向のバランス感覚を育てることができます。
予想していない揺れに対応することで、姿勢を保つ力が育ち、走っているときの「ぶれにくさ」につながります。
2つ目は、「壁歩きゲーム」

床を押しながら体を支える動きは、関節や筋肉にしっかり力を入れる感覚を育てます。
自分の体を感じる力が高まり、バランスや素早い動きにもつながっていきます。
3つ目は、「足裏タッチゲーム」

かけっこでは、いかにバランスを崩さずに早く足を入れ替えられるかが大切です。足の裏で床をしっかり掴みながらバランスをとりながら、足を入れ替える練習に繋がる為、かけっこで早くを足を動かせるようになります。
おうちで走る練習するなら「最初の3歩」だけでOK
家庭でいきなり長い距離を何本も走る必要はありません。むしろ、短い距離で良い動きを作るほうが、子どもにはわかりやすくなります。おすすめは、10〜15mくらいの短い距離で、スタートの感覚だけを練習することです。
「よーい」で構えたら、前に少し倒れて、我慢できなくなったら走り出す。これだけでも、前に進む感覚はつかみやすくなります。声かけも、細かくしすぎなくて大丈夫です。「腕をもっと大きく!」より、
- 「前に進もう」
- 「ゴールの先まで行こう」
- 「最初の3歩だけがんばろう」
のほうが、子どもには伝わりやすいことが多いです。
腕振りももちろん大切ですが、腕だけで速さが決まるわけではありません。腕の動きを制限しても30mのタイム差は平均0.08秒程度だったという報告もあり、腕振りは脚を直接速くするというより、体の回転を打ち消して全身のバランスをとる役割が大きいと考えられています。だからこそ、家庭では「腕」だけを直そうとするより、肩の力が入りすぎていないか、体がねじれていないかを見るほうが役立ちます。
運動会前だからこそ、「やりすぎない」も大切
頑張る親御さんほど、運動会前に練習量を増やしたくなります。でも、子どもの走りは、疲れてくるとすぐに崩れます。だからこそ、量より質です。
目安は、短い距離を数本。疲れてフォームが崩れる前に終える。そして、練習の最後は「できた」で終わる。
このほうが、子どもは次も前向きに取り組みやすくなります。安全面では、まっすぐ走れる場所を選び、ゴールの先にも少し余裕を作りましょう。急に止まらせるより、走り抜けるほうが安全です。
かけっこの動きが心配な親御さんへ
運動会のかけっこは、どうしても順位に目が向きます。でも、親御さんにぜひ見てほしいのは、そこだけではありません。
- 前よりまっすぐ走れた。
- スタートで一歩目が前に出た。
- 転びにくくなった。
- 最後まで走り抜けられた。
こうした変化は、単に「速くなった」以上に大きな成長です。走る力は、体育のためだけではありません。姿勢、バランス、遊び、日常動作、自信にもつながっていきます。
かけっこは才能だけで決まるものではありません。そして、フォームだけで急に変わるものでもありません。だからこそ、焦って直すより、まずは体の土台を育てること。そこから始めると、子どもの走りは少しずつ変わっていきます。
ライター
「へやすぽアシスト」代表コーチ/理学療法士 まさやコーチ
これまで1000人以上の子どもを対象に、延べ3000回以上の運動・発達支援を実施。特に、発達が気になる子どもや運動が苦手な子どもへのサポートに力を入れ、「できた!」という成功体験を積み重ねる指導を大切にしている。
東京パラリンピックではドイツ・ベラルーシ代表選手のトレーナーを務めるなど国際的な経験も持つ一方、現在はオンライン運動・発達支援サービス「へやすぽアシスト」の代表コーチとして、レッスンを通じて、全国の親子に「遊びながら育つ運動の楽しさ」を届けている。 株式会社フレーベル館の月刊保育絵本『キンダーブック2』(3・4歳児向け)で運動あそびコーナーを監修。さらに2025年4月号からは、明治図書出版『特別支援教育の実践情報』にて、「学びの土台を育む運動あそび」の1年間の連載を担当。




























