祖父母と揉めごとになることも!? 今と昔の赤ちゃんのねんねに関する常識の違い
初めての育児では、身近な経験者の祖父母が頼りになる存在ですよね。でも時にその知識が、本やネットに書いてあることと違って戸惑ってしまうことも…。今と昔で具体的に何がどう変わっているのか、乳幼児睡眠の専門家が解説します。
1.「ねんねトレーニング」は育児放棄
今ではよく聞かれるようになった「ねんねトレーニング」という言葉。こういった言葉が使われるようになったのは、ここ10年くらいのことだと考えられます。つまり、祖父母世代の頃にはそのような常識はなかったのです。
祖父母世代が子育てをしていた頃は、夜泣きは成長過程で仕方のないことという考え方が一般的でした。泣く子と泣かない子は個性であり、どんなに泣く子も、ある程度の月齢になれば解決するから成長を待つ、というふうに考えていた人が多かったようです。
そのような経験を持つ人からすると、赤ちゃんが泣いている際に“見守って寝られるようにトレーニングする”のは、“母親としての役目を放棄している”と映ることが多いのかもしれません。
しかし、ねんねトレーニングの効果は研究でも証明されており、夜泣きがつらい場合は選択肢の1つとして持っておいてよいものです。ましてや育児放棄ではないので、もし指摘を受けたとしても「経験的にそう考えて仕方ない」と受け止めつつ、いま自分自身がどうしたいかで判断してほしいと思います。
2.昼寝をしすぎると、夜寝られなくなる
赤ちゃんは大人のように長時間起きていることができません。短い時間は元気にしていることができますが、その時間を過ぎてくると疲れが溜まってきて、だんだんとグズグズしてきてしまうのです。これを「活動時間」や「覚醒時間」という言葉で表したりもします。
疲れているのに眠らないと脳が興奮してきてしまって、余計に眠れなくなってしまいます。すると寝つきが悪くなったり、睡眠の質が悪くなって夜中に何度も起きてしまうことにつながってしまいます。
だからこそ、日中も適切に睡眠をとることが重要です。アメリカ国立睡眠財団によれば、1日に必要な睡眠時間は0〜3カ月で14〜17時間、4〜11カ月で12〜15時間とされています。数字にこだわりすぎる必要はありませんが、ある程度は昼寝が必要なものと知っておくことは、夜泣き防止のためにも重要です。
3.頭の形をよくするために「うつぶせ寝」
昔は頭の形をよくするために、赤ちゃんはうつぶせで寝かせることがよいとされていたことがあったようです。しかし、これは乳幼児突然死症候群(SIDS)を予防する視点から間違った方針であることが発表されています。
アメリカでは乳幼児突然死症候群予防のため、1994年から「Back to Sleepキャンペーン(あおむけ寝に戻そうキャンペーン)」というキャンペーンが打たれ、症例数が減ったということがありました。日本でも厚生労働省から「あおむけで寝かせること」という推奨がされています。
枕類の使用も特に夜は避けたほうがよいです。寝返りをしてしまうと顔が埋まってしまって窒息の危険性があります。もし使用するのであれば、昼間に親が見ている時にしましょう。
4.背中スイッチ対策にやわらかい布団を使用
抱っこからおろされた時に泣いてしまう「背中スイッチ」を防止するため、分厚いふかふかの布団やクッションなどに寝かせるとよいと聞くことがあるかもしれません。
たしかに子宮にいたときの形を再現してあげることによって、赤ちゃんは安心して寝やすくなってよく寝てくれるようにもなるので、祖父母世代は経験値的にそれがよく寝るとわかっていて、アドバイスをしてくれることもあると思います。
しかしやわらかい布団に寝かせることは、うつぶせ同様にリスクがあります。熱がこもってしまったり、寝返り時に窒息してしまったりして危険なので、赤ちゃんを寝かせるのは硬めのベビー布団(または硬めのマットレス)にするようにしましょう。
5.寒い日は厚着にくつ下に帽子
祖父母世代の頃は、今ほど冷暖房設備もしっかりしていなかったためか、寒いと「着せてあげなければ」と考える人も多いようです。しかし、現在のように冷暖房が完備されている中では、冬の厚着は危険をともなうこともあり、注意が必要です。
赤ちゃんは体温調節の機能が未発達で、暑いからといって上手に汗をかいて体温を下げることができません。温められすぎると体温が過度に上昇してしまい、乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクとなることもわかっています。
足の裏は体温を調節するための大事な部分なので、室内では(特に寝る時は)くつ下は履かず(もし履かせる場合は綿素材の通気性のよいものを選んでください)、服装も生後4カ月以降であれば、大人より1枚少ないくらいを目安に着せてあげるようにしてください。
世代間ギャップにも余裕を持って対応を
身近で頼りになる祖父母の存在。ですが、切っても切り離せない関係のために悩みのタネになってしまうことも…。世代間ギャップの問題は特に揉めごとにつながりやすいので、今の赤ちゃんのねんねの常識を知っておくことは、「ばあば世代はそうだったみたいね」と、アドバイスにも余裕を持って対応できることに役立つのではないでしょうか。