ねんねトレーニング【専門家解説】いつから始めるのがよい?愛着形成に影響はない?
赤ちゃんが自ら寝られる力をつける練習の「ねんねトレーニング」。よく聞かれるようになった言葉ですが、泣いても放置などのイメージもあり心配な人も多いでしょう。いつから始めるのがよいのか、愛着形成に影響はないのかという点を専門家が解説します。
ねんねトレーニングは何のためにするの?
そもそもなぜねんねトレーニング(以下、ネントレ)をするのでしょうか?ネントレをする目的は、赤ちゃんに「自分で眠る力」をつけることによって、
1.赤ちゃんも親も朝までぐっすり気持ちよく寝られるようにするため
2.寝かしつけにかかる時間を減らして、親の負担を下げるため
という大きく2つに分かれると考えられます。
これらをしなければ朝まで寝られるようにならないということではありません。遅かれ早かれ夜泣きはなくなり、幼児になる頃には朝まで寝られるようになるでしょう。しかしそれは「◯歳になれば必ず」と約束があるものでもありません。生後半年で自然に朝まで寝るようになる子もいれば、3歳になっても夜中に泣いて起きてくる子もいます。
ネントレは、できるだけ早くぐっすり眠れるようになってもらうために、眠りやすい環境や生活リズムを整えて、眠る力を発揮できるように働きかけていくためのものです。決して、誰もがしなくてはいけないものではありません。
いつから始めるのがよい?
一言で「ネントレ」といっても、何を指すかが違うこともあるため、いつから始めるかはどんなネントレかによって異なります。眠りやすいように環境を整える、生活リズムを意識する、できるだけ自分で眠れるような機会を作るなどという働きかけは、新生児の頃からすることができます。
一方で、冒頭に挙げたようないわゆる一般的なイメージのネントレ(泣いてもそのままにするなど)の手法は、生後6カ月以降(早産の場合は修正月齢で計算)が対象となります。また、月齢以外にも下記が条件となります。
・体重が右肩上がりに増えており、成長曲線内にいること
・持病や通院中の病気がないこと(医師の指示を仰いでください)
・安全な睡眠環境が整えられていること
・月齢にあった昼寝がとれていること
・就寝前の連続起床時間が長すぎていないこと
・最低3週間は旅行や保育園入園などの環境変化がないこと
親子の愛着形成に影響はない?
泣かせても見守るなどの手法を取り入れることは、親にとっては心配なことだと思います。「泣いても無駄だ」「どうせ呼んでも相手にされない」と赤ちゃんが思ってしまって、親への信頼がなくなってしまうのでは?と不安になるでしょう。
しかし、これについては研究で「影響がない」と証明されています。以下は研究の具体的な内容です。
夜泣きなどの睡眠トラブルを抱える生後7カ月の赤ちゃんを326人集めました。そしてその赤ちゃん達を2つのグループに分けました。片方のグループには生後8〜10カ月の間、泣きをともなうネントレを行いました。もう片方のグループにはトレーニングをしませんでした。そして5年後に子どもの精神面の発達や愛着障害を含む親子関係のテストの点数を比較した結果、その2つのグループの間には差がないことがわかりました。
Price AM, Wake M, Ukoumunne OC, Hiscock H. Five-year follow-up of harms and benefits of behavioral infant sleep intervention: randomized trial. Pediatrics. 2012;130(4):643-51.
上記のように、愛着形成には影響がないことが研究では証明されています。しかし、夜泣きや寝かしつけトラブルの解決方法はネントレだけではありませんし、ネントレをするにしても、できるだけ泣かせない方法もあります(泣かせたほうが短期間でトレーニングが完了する傾向があるのは確かですが)。
さまざまな選択肢があると知った上で、ネントレをするかしないか、家族で話し合って決めるのが家族の幸せのために大切なことです。「こうしなければいけない」ということはありません。他の家庭と比べて焦ったりせず、わが家はどうしたいのかという視点で決めてくださいね。