どうしたらいい? 子どもの癖
わが子の癖について読者アンケートを取ったところ、トップは「鼻ほじり」で、複数を選択した人も多くいました。気になる癖があると、ママは「どうしたらいいの?」と迷いますよね。小児科医で「子どもの心 相談医」でもある細部千晴先生に、癖への対応方法を教えてもらいました。
イラスト/柴田ケイコ
対応の大原則は 「自然に治るまでゆっくり見守る」
子どもに癖が見られると、「ストレスが大きいの?」「愛情不足?」と心配するママも多いのですが、ほとんどの癖は自然に治るものです。仮に、一時的なストレスが原因だったとしても、癖の動作をすることでストレスが緩和できているならそれでOK。むしろ無理にやめさせようとすれば、さらにストレスがかかってしまいます。
癖への関わり方は「自然に治るまで、ゆっくり見守る」が大原則。「早く治そうと思わない」ということが大切なのです。
適切に関わるとよい癖
しつけや親の責任とは 考えず、おおらかに
癖はゆっくり見守るのが大原則とはいえ、ママとしては「鼻ほじりは汚いからやめてほしい」「指しゃぶりは歯並びへの影響が気になる」といった気持ちもありますよね。「鼻ほじり」「指しゃぶり」「爪かみ」「性器いじり」などは、適切に関わることで癖の頻度が減って、自然にやめやすくなることもあります。下の方法を試してみましょう。
とはいえ、こうした関わりを「しつけ」や「親の責任」とは考えないでください。ママの気持ちが追い詰められていると、子どもを追い詰めてしまいがち。心身が成長していつの間にかなくなったり、お友達の影響を受けてやめたりすることが多いので、ママはおおらかに構えていてくださいね。
【鼻ほじり】
穴に指を入れるのは本能的な行動。しかも幼児は鼻の中に鼻くそがあるとかゆいので、指でほじるのです。禁止するのは酷なので、人が見ていないところで取るように教えましょう。鼻くそを食べる子も多くいます。大人は「鼻くそは汚い」と思っていますが、食べてもまったく害はありません。食べていたら「まあかわいい! 赤ちゃんみたい」と明るく褒めてみて。叱られた気分にせずに「赤ちゃんじゃないもん」と自尊心をくすぐることができるでしょう。
【指しゃぶり】
指しゃぶりをすると情緒が安定するのですが、3歳をめどにやめるのがベター。歯科医は開咬(前歯が噛み合わない状態)を、小児科医は会話が減ってコミュニケーション能力が伸びないことを心配します。指しゃぶりをしそうになったら、指を使うおもちゃで遊ばせましょう。指のタコが乾くと痛くてなめて、さらに悪化するという悪循環も起こるので、指のケアも大切です。入眠儀式での指しゃぶりはやめにくいので、眠ったら口から指を出してあげて。
【爪かみ】
爪の数本をかむ程度なら、爪をかむ感覚が面白いのかもしれません。叱ったり責めたりせず、「痛くない?」と声を掛ける程度で見守りましょう。全ての指の爪を切らなくてもいいほど深くかむようであれば、子ども自身がイライラしていたり、不安が強かったりする可能性も。しつけや教育が厳しくないか、過度なストレスがないか気にしてみて。ストレスを緩和してから少し経っても変化がなければ、かかりつけ医に相談しましょう。
【性器いじり】
自慰行為に気付いたら性教育のチャンスだと考え、「手はきれいかな」「人が見ているところでやると恥ずかしいかもよ」と伝えて。ママ世代は幼少期に性教育を受けていないので、いけないことと思いがちですが、決して悪いことではありません。衛生面と場所をわきまえることが重要です。男児で性器を触るのは、亀頭包皮炎などの炎症があってかゆいからかも。赤く腫れていたらかかりつけ医へ。勃起するような触り方であれば、他の遊びに誘導して。
何もしないほうがよい癖
意思に関係ないものは そのままでいい
あえて何もしないほうがよいのは、「チック」「吃音」「夜驚(やきょう)症」「歯ぎしり」。これらは本人の意思に関係のない癖です。積極的に治そうとすると逆効果になるので、特に何もせずに、普通に生活しましょう。親がおおらかに構えていれば、成長とともに治まることがほとんど。「治したい癖」ではなく「個性のひとつ」と捉え、いつでも「そのままのあなたでいいんだよ。大丈夫よ」と温かく見守ってください。
また、こうした癖は周囲の人に理解してもらうことも大切です。身近な人には「癖を指摘したり、やめさせようとしたりせずに、普通に関わってほしい」ということを伝えて。お友達にからかわれると園がイヤになってしまうこともあるので、園の先生にもフォローをお願いしましょう。
【チック】
チックとは意思に関係なく動く不随意運動のことで、原因はまだはっきりしていません。まばたきや首を回すなどの「運動チック」と、咳払いや舌打ち、叫び声など「音声チック」があります。数カ月続く場合や、複数の症状が見られる場合は、かかりつけ医に相談しましょう。
【吃音】
「ぼ、ぼ、くは」「ぼーくは」「…っぼくは」など、言葉がスムーズに出ない状態。幼児の約5%に見られ、発症の原因は不明です。言い直しをさせると話すこと自体が嫌いになってしまうので、吃音には触れずに話を聞いてあげて。小学校入学前まで続いたら、かかりつけ医に相談を。
【夜驚症】
睡眠中に突然叫び声を上げたり、パニックを起こし、その後短時間で落ち着いて再び眠りにつくのが特徴。深いノンレム睡眠からの中途半端な覚醒が原因とされ、幼児期に多く、成長につれて消滅します。歩き回ってもけがをしないよう部屋を片付け、転倒に注意して。
【歯ぎしり】
浅い眠りのとき、夢の中で歯をくいしばっていると起こりやすいようですが、歯がすり減る心配はありません。眠りを妨げないように室温や寝具に気を配る程度の、普通の睡眠サポートでOK。激しい歯ぎしりが1カ月以上、毎晩続くようならかかりつけ医に相談してみても。