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提供:塩野義製薬
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「いつも落ち着きがない」「言葉がうまくでてこない」「こだわりが強すぎる」など、子どもの発達や行動が気になっているママも多いかも。「育てにくい子どもはたくさんいます。私が訪れた園でも、そんな子どもにたくさん会ってきました」と話す徳田克己先生に、子どもたちへの向き合い方を聞きました。
教えてくれたのは…
徳田克己先生
筑波大学医学医療系教授。筑波大学発ベンチャー 子ども支援研究所所長。教育学博士、臨床心理士。発達が気になる子どもの保育・支援を精力的にこなし、年間1000件以上の相談に対応する。
発達障害傾向の子どもはたくさんいる
適切な育児・保育・教育がポイント
発達・行動が気になる子どもたちの中には、発達障害の傾向がある場合もあります。発達障害は、生まれつきの脳の発達の特性によるものですが、適切なサポートの中で成長することで、生活していく中での「困った」を減らすことはできます。「困った」を減らすために大切なのは、3歳~小学3年生の時期に、適切な育児・保育・教育を受けること。特性はそのままでも、社会生活に適応していくことができるようになります。
発達障害の傾向がある大人は数多くいます。こだわりや追求心が強かったり、ひらめきが鋭かったり…。それぞれの特徴を生かして社会で活躍している人も少なくありません。
一方で、適切な育児・保育・教育が受けられないと、うつ、引きこもりなどの二次障害が起こる危険があります。それは避けたいですよね。
発達障害のある子どもの育児の大原則
子どもが「分かる」ように伝えよう
よく「言うことを聞かない」と悩んでいる保護者の方がいますが、それは「言うことが分かるように話していない」から。発達障害のある子どもたちは、今は何をするのか、次は何をするのか、相手はどういう気持ちなのか、どうして叱られたのか…といったことが、「分かっていない」のです。「分かっていない」のに叱っても意味がありません。子どもの特徴に合わせて、「分かる」ように伝えるようにしましょう。
POINT
はっきり、短く、具体的に
はっきり、シンプルに伝えましょう。「ダメです」だけでOK。「〇〇〇〇〇だから」といった理由を伝えるのは“次の機会に”と割り切って。また「ダメって言ったけれど、少しだけならいいか」などと指示を曲げてしまうのはNG。子どもにとって一番分かりやすいのは、「ママがダメって言ったらダメ」です。
さらに、「ちゃんとやる」「しっかりやる」「一生懸命やる」も伝わりません。「〇〇をやりましょう」と具体的に伝えて。
POINT
1度に2つ以上伝えない
「〇〇をやったら、△△をしていいよ」とまとめて言うのはNG。「〇〇をやったら教えてね」「次は△△をしてね」と1つずつ伝えましょう。
POINT
指示は子どもを主語に
「手を洗いなさい」「靴を履きなさい」という指示は、主語がはっきりしないので、どうしたらいいのか分かりません。主語を本人にして「手を洗います」「靴を履きます」と伝えると、自分が今何をするかが分かります。
POINT
絵カードを活用する
目で見て理解する力が強い子どもに対しては、絵カードを作って活用するのも一つの方法です。なかなか言葉が出てこない子どもも、絵カードだと伝わる場合も。ただ、絵カードは同じものを使う必要があります。万一なくしてしまった時のために、カラーコピーなどで同じものをストックしておきましょう。
NGワード・行動
- 「何で」「どうして」は禁句
- 「どうしてこんなことをするの」「何できちんとやらないの」と叱っても伝わりません。子どもの自己肯定感を下げるだけです。
- 子どもの前で謙遜をしない
- 子どもを褒められたときは、ついつい「そんなことないですよ」と謙遜してしまいがち。これも、子どもが近くにいる場合はNGです。「お母さんはどうしてそんなことを言うんだろう」と混乱してしまいます。
- お試し行動に反応しない
- 「ここまでなら叱られないかな」といった、ママの顔色をうかがう子どものお試し行動には反応しないようにしましょう。お試し行動は無駄だと思わせるために、何もなかったように過ごすのがポイントです。
こんな場合はどうしたらいいの?
保護者の悩みに徳田先生がアドバイス
Category/子どもへの対応
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思い通りにならないと奇声を上げたり、癇癪を起こしたりします。自分でもコントロールできないようですが、突発的な癇癪とどのように向き合ったらいいのでしょうか。
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子どもは、泣くことによってクールダウンしています。そんなときは、あまり刺激が入らないように壁の方を向かせ、落ち着くまでそっと見守りましょう。やってはいけないのは、膝の上などに載せて、「大丈夫よ、ママが付いているから」となだめること。せっかくクールダウンしているのに、それを阻害してしまう行動になります。関わらずに、そっと見守って。
もう一つ周りの大人がすべきことは、なぜパニックを起こしたのか、原因をノートなどに記録しておくこと。そうすることで、原因を避けられるようになります。また、子どもは成長するにつれて、少しずつ我慢ができるようになってきます。少しでも我慢できるようになったら、「えらいね」「よく頑張った」としっかり褒めましょう。褒められると「次も頑張ろう」という気持ちが芽生えます。
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すでに数年いっぱい叱って育てています。今からどのように対処したらよいでしょうか?
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今後は、不必要に叱らないようにしましょう。分かっていないのに叱るのはNG。その代わりに、褒めることを5倍しましょう。とはいえ、褒めることがなかなか見つからないこともありますよね。例えば多動が気になる子の場合、タイマーで測って20秒座っていられたら褒めるなどでOKです。その数字は記録しておき、翌日は昨日より長く座っていられたらさらに褒めましょう。やり方を工夫して、目に見えるように褒めていくのがポイントです。
一方、叱るべきこともあります。身の危険に関わるとき、または最初に約束していたことを破ったときなどです。「お店の中で走りません」と約束したのに、それを破ったときはきちんと「ダメです」と叱りましょう。
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偏食があります。「何で?」「どうして?」という言葉が使えないと、偏食の理由・原因がわからず対応できません。
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原因を探すために、「実験」をしましょう。例えば、家でみそ汁を飲むのに、園ではみそ汁を飲まない場合について考えてみます。一概にみそ汁といっても、うつわ、中身が全然違いますよね。園のうつわ&スプーンに、家のみそ汁を入れてみて、それが飲めたら味が原因ということが分かります。一方で感覚過敏で、プラスチックのスプーンのニオイがダメ、金属のスプーンがダメ、といった場合もあります。
やってはいけないのは、苦手な食材をすり下ろすなど「見えない」状態でメニューに入れて食べさせ、「〇〇ちゃん、食べられてすごい!」とカミングアウトすること。すべてのメニューに苦手な食材が入っていると警戒し、何も食べられなくなる危険があります。発達障害がある子どもには、「見える」ように入れて、少しでも食べられたら褒める、という方法をとりましょう。
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子どもには何歳ぐらいに、どのように伝えたらいいでしょうか。
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自分の特徴を本人が理解できるようになるのは小学校4~5年生あたりから。保護者は早く子どもに伝えたくなりがちですが、子どものペースに合わせましょう。伝えなくてもいい状態の子どももいます。本人が「自分は発達障害かな?」と思い始めたら、医師に相談して、きちんとした情報を子どもに伝えるようにしましょう。
大学生になって自分が発達障害だと判明し、「だから私は◯◯が苦手だったんだ」と腑に落ちたという話も聞きます。苦手分野は諦めてOK。得意分野を伸ばすようにしましょう。
Category/専門家・周囲の人との付き合い方
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来月、発達外来の初診があります。発達外来の効果的な受け方を教えてください。
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発達外来でしっかりと伝えたいのは、子どもが集団活動の中でどういう行動をしているか、です。集団活動をしていると、だまって先生の話を聞くシーン、みんなで並ぶシーンなどが出てきます。そういったときにどういう行動をしているかを包み隠さず話してほしいですね。子どもの集団活動の様子を一番分かっているのは園の先生です。事前に園の先生に相談し、詳しく様子を聞いておきましょう。
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来春小学校に入学します。学校や先生とは情報共有して準備をしていますが、クラスの友達やその親に子どもの特徴をどのように伝えたらいいでしょうか?
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先生と情報共有ができているなら、基本は学校にすべてを任せましょう。ただ友達に手が出てしまうときは、友達やその保護者が関わってきます。先生と交えて話をするようにしましょう。学校や先生は、その子をどうサポートしていくかという計画があるはず。その計画にのっとり、何かあるときはまず先生から発信してもらうようにしましょう。
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小学校の通常級(通常学級)、支援級(特別支援学級)について、選ぶ基準、考え方を教えてください。
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多くの市町村には、心理学、教育学などの専門家によって構成されている就学指導委員会が設置されています。プロが子どもを見て適切な助言をしてくれるので、それを参考にするといいでしょう。
そのほか、発達障害についての治療・教育・対応は、その地域・施設などによって違います。子どもの特徴によって、合う・合わないがある場合も。同じような子どもを見てもらっている保護者がどう感じているかといった情報を集めましょう。
Category/家族内での子育て
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きょうだいの子育てはどうしたらいいのでしょうか。
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姉妹・兄弟の場合、下の子は上の子のマネをする傾向があります。上の子に発達障害があると、下の子はマネをしているだけなのか、本人にも発達障害の傾向があるのか、区別がつきません。4~5歳になったらどちらなのかが分かってきます。幼児期は一緒にいても、成長して思春期頃になると、子どもはそれぞれ別行動をとるようになります。気にし過ぎず、普通に育てましょう。
保護者が知識と技術を身に付けるのが肝心
園や専門家のサポートを頼って
発達障害の子どもに向いた育児の方法は独特なもの。保護者が本を読んだり、専門家に話を聴くなどで勉強をし、「知識と技術を身に付ける」ことが重要です。また、周りには、園や学校の先生、福祉施設のスタッフ、行政機関の保健師など、支援の手が数多くあります。困ったことがあれば彼らに相談し、一緒にどうしたらいいのかを考えていきましょう。私が監修として運営に携わっているWebサイト「キッズハグ」
(https://kidshug.jp/)も参考にしてみてください。
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2021年3月30日(火)
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