ウソや作り話が多い娘、どうしたらいい?

ウソや作り話が多い娘、どうしたらいい?

Q 「たわいないウソをつくわが子」をどう考えたらいいですか

小3の娘です。比較的しっかり者で勉強もできるほうなのですが、たまにたわいないウソをつくのでびっくりすることがあります。友達のエピソードや飼っているペットの雑談など、とても面白いので、後日その友達のお母さんと会った時に話すと、そもそもペットは飼っていなかったりとか…。そんなウソをつくなんて、友達と遊べていないから作り話するのかな?と心配にもなりますが、他のお母さん情報からも、どちらかというと人気者で仲良くできているようで、なぜそんなふわっとしたウソをつくんだろうと困惑します。誰かを傷つけるようなウソではないものの、あまりに上手な作り話なので子どもの本心はどこにあるんだろうと心配になります。 ウソをつくなと叱るような内容でもないが、なぜ親に取りつくろうのだろうといろいろ考えてしまいます。
(さんちゃんのママ)

A 楽しませたいと思っているのでは?

子どもは、人を楽しませるのが大好きです。ですから、ウソをついてだまそうという気はありません。お母さんがニコニコと子どもの話を聞いていることを見て、ついついうれしくなって作り話をしてしまうのではないでしょうか。子どもは、笑い合う瞬間が一番大好きなのです。それは、笑いが人と人をつなげていくことを、本能的に知っているからなのです。

ですから、「お友達がペットなんて飼っていなかったじゃない!」とか「作り話をするんじゃない!」などとヤボなことは言いっこなし。

「お友達はペットを飼ってなかったけど、この前の話、面白かったわよね~」とか「お友達がおしりを出した話、すごかったわよね~」などと、褒めてあげればいいのです。その際に、二つのポイントがあります。

一つ目は、最後の言葉です。「作り話をそのままその相手のお母さんに話して、『違うわよ!』なんて言われたら困っちゃうから、最後に『これは作り話なの!』と言ってね」と伝えることです。そして、「すごく話が上手で思わず笑ってしまうけど、どこを笑わせようと工夫したの?」などと聞けばいいのです。

二つ目は、「人を傷つける作り話は絶対ダメだよ!」と伝えることです。話がどのように広がってその人の耳に入るかわからないからです。

家族で笑い合う時間を作ろう!
ブスッとしていて、笑いがない家庭で、のびのびした子どもが育つはずがありません。子どもは、笑いの中で心が育っていくのですから、「作り話の日」を作るのも面白いと思います。一人ひとりが面白い話をして、「一番笑わせた話を作った人には、お菓子のプレゼント」なんていうのはどうでしょうか。

「作り話をする」というのは、極めて知的な作業なのです。ヨーロッパなどでは、「ユーモアがあり、人を楽しませることができる!」という人は、尊敬されます。ユーモアで笑わせるということは、「相手を不快にさせない」「相手が喜びそうな内容を、相手の反応から探っていく」というコミュニケーション能力が高いことの証明だからです。私たちは、もっと「笑い」というものを大切にしていく文化を育てていくべきだと思うのです。

笑い合う瞬間の力
私が小学校教員だった時、「ユーモア詩」というものに力を入れていました。何気ない生活の様子を書き、それを読み合ってみんなで笑い合うというものです。3年生の子が、次のような詩を書いてきました。
 
  ボディビルダー   吉田 久夫(仮名・3年)

この前テレビで、
ボディービルダーの大会をやっていた。
さっそくぼくとお兄ちゃんは、
服をぬいでパンツ1枚になり、
ボディービルダーのまねをした。
それを見ていた父ちゃんは、
「それじゃダメダメ!」
と言いながら、
けつにパンツをくいこませて歩いていた。
おかしくておかしくて
みんなで大笑いした。
でもこれで終わるわけがない。
最悪なのは母ちゃんだ。
とても人に見せられない
パンツ1枚のかっこうで、
ボディービルダーのまねをしていた。
あれでも一応女なんだろうなー。
 
すごい家族だと思いませんか。兄弟でパンツ1丁でボディビルダーの真似をしていたら、「なにしてんだー」と言って、一緒にパンツ1丁でボディビルダーの真似をする。その後、「なにしてるのよ~」と言ってお母さんまで入ってきて、家族全員でパンツ1丁になり、ボディビルダーの真似をするのですから、「すごい!」としか言いようがありません。

こうした詩を読み合っていく中で、クラスの雰囲気がどんどん和んでいくのです。「笑い合う瞬間の力」をつくづく感じた出来事でした。

ここまでやってほしいとは言いませんが、子どもの面白さを共有しあう関係が、親子関係を変えていく力を持っているのです。

※(「ユーモア詩」の実践は、いくつかの著書にまとめていますので、興味のある方はぜひ読んでみてくださいね)

【書籍例】 子どもをしあわせにする「笑う子育て実例集」(株式会社 カンゼン)

 
【新刊】
新刊「『いじめ・自殺事件』の深層を考える-岩手県矢巾町『いじめ・自殺』を中心として-」(本の泉社、1620円)発売中。

プロフィール

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大学教授

増田修治先生

白梅学園大学子ども学部子ども学科教授。
1980年、埼玉大学教育学部を卒業後、埼玉県の小学校教諭として28年間勤務。
若手の小学校教諭を集めた「教育実践研究会」の実施や、小学校教諭を対象とした研修の講師なども務めている。
「笑う子育て実例集」(カンゼン)、「『ホンネ』が響き合う教室」(ミネルヴァ書房)など、著書多数。

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