友達から「死ね」と言われ、傷ついた小2の娘、どうしたらいい?

Question わが子が「死ね」と言われたのですが、担任の先生に相談するべきでしょうか?

小2の娘が友達から「死ね」と言われたそうです。傷ついて帰ってきたのですが、担任の先生に相談するべきでしょうか。どこまで親が関与していいものか悩んでいます。(もも)

Answer まずは傷ついた子どもの心を癒やしてあげましょう

まずは、お子さんに「どのような状況で『死ね』と言われたのか」ということを、丁寧に聞く必要があります。子どもたちは、言い合いやケンカをしたりすると、その流れの中で「お前、死ねよ!」とか「一度死んでみれば!」と言った言葉を言いがちです。もちろん、それがよいとは思いませんが、子どもたちの世界ではそうした言葉がよく使われるという実態があります。

トラブルの中で言われていた場合には、「思わず言ってしまったのかもしれないよ」と、アドバイスをしてみるとよいと思います。

どちらにしても、「死ね」という言葉を浴びせられると、子どもにとっては傷つくものです。まずは、子どもを慰めてあげて下さい。

そして、何もしないのに何度も「死ね!」と言われる場合には、先生に相談された方がよいと思います。そうすれば、先生は誰が伝えたのかは言わずに、その子どもを指導してくれるはずです。

子どもたちの現状から見えてくる「感情の育ちの危機状況」
今、子どもたちは「感情の育ちの危機状況」にあります。最近の子どもたちに見られる行動として、「信じられないような転落事故を起こす」「抜毛や脅迫性などの神経症状」「心身症による身体症状」「よい子が突然問題行動を起こす」「リストカットなどの自傷行為」「ささいなことでキレる」「場面によって、別人のようになる」「暴言・暴力・攻撃性・いじめ」などがあります。

「信じられないような転落事故を起こす」では、ある小学校で4階のベランダの手すりを渡っていて、外へ落ちるという事件がありました。これは、外へ落ちたらどうなるかということが想像できないだけでなく、恐怖を感じる力が劣ってきているのです。

「抜毛」では、10/17に公開した「受験のため塾通いしている子どもが、小1の頃から口の中を噛むなどのクセがあり、その後、爪噛み・頭をかいて血が出てかさぶたになる」という相談に見られるように、授業中、血だらけになるほど髪の毛を抜く子どもを見たことがあります。

こうした問題行動の中で、一番気がかりなのは「暴言・暴力・攻撃性・いじめ」です。他人に対して「バカ」「死ね」「お前、なんで生きているの?」などといった、相手を傷つけるような言葉を平気で言う子どもがいます。他人に言うだけでなく、自分のことを言い始めたら要注意です。「僕なんて、生きている意味ないよね」とか、「私って、死んじゃった方がいいのかな?」などと言う子どもが、低学年から出てきているのです。

これらのことを総称して、私は「感情制御の発達不全」と言っています。感情をコントロールしたり、自分で納めたりするのが苦手な子どもが増えているのです。

「不快なままでいられる」ことも大切な能力
私が1年生を担任した時に、図工の時間に「Aちゃんは、上手だね~」とほめたところ、5分後に、ある男の子がパニックを起こしました。いきなり立ち上がって「増田先生はAちゃんばっかりかわいがる~!」とわめきはじめたのです。Aちゃんをほめたことが、この男の子には面白くなかったのです。

誰しも、イヤな気持ちというは抱くものです。それを、すぐさま出していたら、社会では上手くいきません。「イヤだな」という気持ちを抱えながら、うまく消化していくことも大切な能力なのです。

相手に暴言を浴びせる子どもの裏側を探る
相手に暴言を浴びせる子どもに共通していることは、「ネガティブ感情を受け止めてもらえた経験が少ない」ということです。人間はネガティブな感情と、ポジティブな感情の両方が存在しています。その両方を抱えながら生きているのが、人間という存在なのです。

しかしながら、ポジティブな感情だけが承認され、ネガティブな感情が否定されることが続くとどうなるでしょうか。感情がうまく統合されず、絶えずイライラする子どもになってしまうのです。「イライラしたり、怒ったりする」のは、人間なら当然です。「どうしたの?」と聞いてあげることが大切なのです。

相談者さんのお子さんに「死ね」という子どもは、親から認められていない可能性が高いのかもしれません。親子関係というのは、子どもに大きな影響を与えるものです。
「死ね」という子どもの内面を探り、クラスやまわりの大人がサポートしていくことが求められているのだと思っています。
子どもたちみんなの幸せを創り出すために、大人が力を合わせていかなければ、問題はどんどん深まっていくばかりです。あんふぁんWebをご覧の方々、一緒に子どもたちの幸せを創り出していくために力をお貸し下さい。

 
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プロフィール

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白梅学園大学子ども学部子ども学科教授

増田修治先生 

1980年、埼玉大学教育学部を卒業後、埼玉県の小学校教諭として28年間勤務。
若手の小学校教諭を集めた「教育実践研究会」の実施や、小学校教諭を対象とした研修の講師なども務めている。
「笑う子育て実例集」(カンゼン)、「『ホンネ』が響き合う教室」(ミネルヴァ書房)など、著書多数。

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