「どうせ私が…」自分を責めがちな子の2つの理由と意識したいかかわり方
わが子が何かにつけて「どうせ私が悪いんでしょ」「僕のせいでごめんなさい」と自分を責めるので悩んでいる、叱ったり注意がしづらいということはありませんか?
一般的には、自己肯定感が低いという言葉でやり過ごされてしまいやすい状況ですが、単に自己肯定感の問題だけではないかもしれません。
今回は、心理カウンセラーの立場から、自分を責めがちな子がなぜそうするのか、保護者がどうかかわり、言葉をかけるのがよいのかを考えていきたいと思います。
自分を責める理由1:他者から責められることから逃れるため
子どもが自分を責める理由をひとくくりにすると、他者から責められないようにするためです。
誰しも「私が悪いんでしょ」といわれると、怒るべきときであっても怒りづらいと感じるのではないでしょうか? 子どもの側もそれを察知し、できるだけ責められないように、先手を打って「自分が悪い」と申告していることが考えられます。
責められることが多い子のほか、プライドが高い子も自分を責めがち
親から怒られたり、責められたりすることが多い子は、自己肯定感が下がっています。かつ「自分が悪い」と申告することで自分の怒られる時間を短くする、相手の怒りを少しでも和らげるといった効果があることも知っているため、すぐに自分を責めて難を逃れようとしがちです。
このほかプライドが高い子も、相手から「あなたが悪い」と言われることはプライドが許さないため、自分で自分を悪く言うことで、相手から言われる度合いを和らげようとします。
いずれにしても、相手から責められるというストレスから逃げようという一種の自己防衛です。
環境を改善し、子どもを追い詰めない工夫をしましょう
親は「子どもに悪いところがあるから、叱ってでもしつけなければ」と思うところですが、これが逆効果を生んでいるとなれば環境の改善が必要です。頻繁に子どもを叱ったり、声を荒げている状況であれば、その方法を変えてみましょう。
子どもが自分を責めてしまう場合、長時間にわたって叱りつけている、叱る声が大きく子どもを威圧している、「なぜ、こんなことをしたの?」と理詰めにしているなどの可能性があります。
叱るならできるだけ短時間で、怒鳴るのではなく言い聞かせるようにするのがポイントです。とりわけ「なぜ?」という質問は、子ども自身も答えを知らないため答えづらく、強いストレスを与えてしまうため避けるべきです。
自分を責める理由2:自他分離ができていないため
一部、上記のケースにあてはまらない子もいます。それは、自他分離ができていない、つまり他者の問題を自分の問題として考えてしまうケースです。
自他分離ができていないと、目の前で他の子が先生に怒られているようなときや、誰かの機嫌が良くないときに、自分が怒られている気持ちになってしまいます。これが四六時中起こるため、本人は「自分が悪い」と結論づけてしまうようになるのです。
感受性が強い子がなりがち
自他分離ができにくい子は、感受性の強い子です。感受性が強ければ、怒っている人や気分を害している人の気持ちも、怒られている人の気持ちも敏感に察知します。でも、何に対して怒っているのかが明確にならないため「自分が怒られている」と感じてしまうようになります。やがて条件反射で、誰かが怒っている状況で必ず自分を責めるようになるのです。
またここでは、自分を責めることで相手の怒りをおさめようとしている、つまり他者の怒りというストレスから逃れようとしていると考えられます。
「あなたのせいではない」を根気よく伝えて自他分離を助ける
自他分離は、5歳くらいから始まることが多いようです。しかしこれはあくまでも、自分と他人とが「違った個体なんだ」と知る程度の分離で、そこから12歳くらいまでの長い間をかけて、自分と他人が本当に違う存在であることを知っていきます。したがって10歳前後の子どもでも、自他分離がまだ完成せず、何でも自分のせいにしてしまうことはあり得るでしょう。
これに対しては「あなたのせいじゃないから」と言うだけでは、なかなか納得できないのが難点です。そこで「具体的に、自分のどこが悪かったと思うの?」と聞いてみたり、それに対して「もっと○○すればよかった」と答えが返ってきたときに「現実的に、それは可能だったのかな?」と考えさせてみたりします。自分にはどうすることもできなかった、という理解を通して「自分のせいではない」と悟ってもらい、「あなたのせいではないことも多いのだ」ということをたくさん経験してもらうと効果的です。
根気よくつき合うことが大切
自分を責めることで物事を解決しようとすることがクセになってしまうと、「自分を責めてはダメ」といわれても、すぐにはやめられません。自分を責めることは、イザコザから逃れたいという防衛本能でもあります。親自身が原因を作っていないか見直し、必要があれば子どもの叱り方について改善を図ってください。
子どもにとって自分を責めるのは本能的な対応方法だということも理解しつつ、子どもが自分を責めない解決方法を身につけるまで根気よくつき合うようにしましょう。