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子ども同士のトラブルを先生から聞いたとき、親がやってはいけないこと
6月のNG言動は
衝動的に「なんで叩いたの!」「ケンカなんかしちゃいけないでしょ」「どうしていい子でいられないのかしら」などと、子どもの話を聞く前に頭ごなしに叱る
こんにちは、保育士のみやです。
新型コロナウイルスの感染症対策で、たくさんのことが制限される毎日ですが、それでも社会は前に向かって動いています。
私の保育園でも、昨年は中止した行事が多かったのですが、今年は可能な範囲で以前のような経験をさせたいと職員が知恵を絞り、趣向を変えて行事に取り組み始めました。
- みんなの前に立つ子ども達の誇らしげな表情
園児全員で集まってお祝いしていた誕生会を2クラス単位に変更したり、大きな声で『ハッピーバースデー』を歌えない代わりに、拍手でリズムをとったりと職員はさまざまな工夫を凝らしています。
派手な催し物はできませんが、その会の主役としてみんなの前に立つ子ども達は、誇らしげな表情をしています。自分に注目が集まることや、友達の前に立つことに喜びを感じるお子さんは多いので、今後もそれを感じられる機会を増やしていきたいと日々考えています。
- どの年齢もトラブルやケンカのない日はない!?
さて、今月は子ども同士のトラブルやケンカのお話です。保育園の毎日の中で、トラブルやケンカのない日はありません。
3歳児のクラスでは、気の合うお友だち同志で遊びたいのに、別のお友だちが入ってくることが気に入らずその場から離れたり、「(ボク・ワタシ)の方が上手だもん」と勝ち負けにこだわるような言い合いをします。
4歳児のクラスでは、「先生、〇〇ちゃんがいけない事をしているよ!」と言いつけたり、男の子・女の子で遊びの対象が少しずつ異なってくることで、「入ってきちゃだめ!」と仲間外れにしたりします。
5歳児のクラスでは、気の合うグループができあがり、いつでも仲良しだけで遊びたがります。仲良し以外のお友だちを排除しようと、「あの子と遊んじゃダメ」と強要するようなこと言ったりします。また、大勢の友だちとルールのある遊びをしたり、アレンジを加えながらオリジナルの遊びを作り上げることもできるようになります。
一方で、周囲の状況がわかっていても自分の感情をコントロールできずに怒鳴り散らしたり、つかみかかったりすることもあります。5歳児になると理解力も会話力も格段に伸びるため、大人はつい「どうして?」と思いがちですが、まだまだ子ども自身でコントロールすることは難しい年齢なのです。
トラブルやケンカと言っても、年齢が上がるにつれ、『モノからヒトへ』と対象が変化してくることが分かります。これは子どもにとって大きな成長です。『自分とモノ』の関係から『自分とヒト』の関係へと発展しているのですから。
- ケンカやトラブルを通して得られるものがある
保育園では、子ども達がケガをしない範囲で、先生や職員がケンカを見守ることがあります。トラブルはないに越したことはありませんが、トラブルを通して得られるものもあるからです。
私が子ども同士のトラブルに直面したときは、「これはケンカなのかな?」と質問したり、「両方の言い分を聞きましょう」と提案することから始めます。まわりの子ども達が客観的に見ていて、ジャッジしてくれることもあります。互いにヒートアップしている時は、クールダウンさせることも必要です。別々の場所で気持ちを落ち着かせることを優先します。
ケガをさせてしまうような場面は極力作らないように保育をしていますが、時として衝動的な動きに先生が間に合わないことがあります。そのような場面では、「どうして叩いたのか」と言った原因を追及するのではなく、『叩いてケガをさせた』という事実を指導します。そして原因については、両者の言い分を十分に聞くようにしています。
園の方針によっても異なりますが、小さなトラブルを保護者にお伝えすることはありません。園の中で起こったことは園の中で解決するよう、子ども達と十分に話し合いをするからです。
- 気をつけたいのは「頭ごなしに叱ること」
保護者のみなさんは先生からトラブルがあったことを聞かされると、少なからず動揺してしまうと思います。特に相手を傷つけてしまったりするとなおさらです。
ただ、お迎えの時にはトラブルから時間が経っていることが多いので、そこでお子さんを叱っても心に響かないことが多いように感じます。
お子さんのトラブルの話を聞かされ、衝動的に「なんで叩いたの!」「ケンカなんかしちゃいけないでしょ」「どうしていい子でいられないのかしら」などと言い、頭ごなしに叱ることはお子さんの言い分を聞いていないことになるので気をつけましょう。
- 子どもの話を十分に聞くところから始めましょう
保護者のみなさんは、「今日あったことを最初から教えてほしいな」と落ち着いた様子を見せたうえで、「何がよくなかったと思う?」「どうすればケンカにならずに済んだのかな?」「相手の気持ちはどうだったと思う?」ということを、ひとつひとつ引き出せるとよいでしょう。次の同じような場面で、お子さん自身が考え、解決する方法を見つけることが大切なのです。
私自身、子どもたちが小さかった頃トラブルを起こす度に、まるで自分の育て方が悪いような気持ちになったことを覚えています。親の対応が間違っていたのか、先生はうちの子をどう思っているのかなど、マイナス要素ばかりを考えていました。できれば、わが子はいい子でいてほしいものですから。
- トラブルから何を学んだのかを一緒に確認することが大事
先生からトラブルについて話があった際、先生は保護者を責めたり、責任をとらせようなどと考えていません。子どものトラブルは成長の中で必要なことであり、小さなトラブルの積み重ねからお友達との関わり方を学んでいきます。
保護者のみなさんも、お子さんのトラブルや失敗したことを責めるのではなく、そこから何を学んだのかをお子さんと一緒に確認していきましょう。このことが就学後、より広がっていく人間関係の基礎につながると思います。
みや先生プロフィール
大学卒業後、障がい者関係の仕事を経て、療育センターに臨床心理士として8年間勤務。14年前からは私立保育園の理事及び保育士として勤務しています。今年度からはフリーの保育士という立場で全学年をサポート。
子ども達とかかわる中で大切にしているのは、「ひとりひとりの行動や言葉の中にたくさんの側面を見つける」こと。それらを保護者と保育者で共有していくことが子ども達の心身の健やかな発達に繋がると考えています。
プライベートでは3人の女子中高生の母。ワーママとしての経験や思いも保護者との関係づくりに役立っています。