「オウム返し」「おかげさまワーク」不安を感じやすい子への寄り添い方、親の不安を減らす方法
「うちの子、不安を感じやすくて」「不安が強くて行動できない」など、わが子が抱える不安が、いつの間にかママ・パパの不安や悩みになっているという相談を受けることがあります。
今回はそんなお悩みに直面している方に向けて、スクールカウンセラー、発達凸凹支援コンサルタントの立場から、親子で不安とうまく付き合う方法をお伝えします。
「育てにくい」と感じる子ほど伸びる
子どもが不安を感じやすいのは、育て方のせいではありません。そもそも、日本人の多くが不安を感じやすい傾向にあり、これは脳の中のセロトニンというホルモンの量が関係しています。さらに、セロトニンの量が少ない人は、環境に強く影響されます。つまり良い環境を整えることで、子どもが大きく伸びるということ。
今回は、環境を整えるための声かけと考え方について紹介します。
子どもの不安を減らす!?「オウム返し」のコツ
子どもが不安を打ち明けてくれたとき、「励ますべきか、寄り添うべきか分からない」という悩みをよく聞きます。私がオススメしているのは、「オウム返し」という声かけ。相手の言葉をそのまま繰り返すだけというシンプルな方法です。
オウム返しのコツ
オウム返しするときに、気をつけたい2つのポイントがあります。
1.相手の言葉を拾ってそのまま繰り返すだけでOK!
たとえば「今日の給食、◯◯が食べられないかも」と不安な気持ちを打ち明けてくれたら、「◯◯が食べられないかもしれないんだね」と相手の言葉をそのまま繰り返すだけ。「そうなんだね」という短い言葉でも良いでしょう。
2.子どもの言葉を要約しない、気持ちをすべて吐き出してもらおう
不安を口にすると、とりとめもない話になることがありますよね。聞き手である私たちは「それってつまり〜」と要約したくなりますが、話をまとめる必要はありません。不安に感じていることを一つ一つ思い出しながら、自分の言葉で出し切ってもらうことが大切です。
繰り返すだけで大丈夫!?
せっかく子どもが不安な気持ちを打ち明けてくれた…ならば、解決策を提案したり、励まして不安を取り除きたくなる人もいるでしょう。先ほど挙げた「今日の給食、◯◯が食べられないかも」というケースなら
「小さくして食べてみたら」
「ご飯で隠して食べてみようよ」
など、なんとか食べられるようにポジティブな声をかけたくなりますよね。でも実は、解決策を提案しなくても良いのです。大人だって励ましなんていらないから、ただ聞いてもらいたいときがあるはず。不安を吐き出している話し手にとって、自分の考えや気持ちを否定されず、話の流れを止められることがないオウム返しのリアクションは、気持ちの言語化に潤滑油のような役割を果たしてくれるのです。
ただ繰り返すだけというシンプルな声かけですが、意外と難しいので、ぜひパパやママなど大人同士で練習してみましょう。不安を話す役と聞き役に分かれ、交代しながら練習することでコツを掴みやすくなりますよ。
オウム返しのメリット
シンプルに相手の言葉を繰り返すだけのオウム返しには
・感情をたっぷり吐き出せる
・すっきりしてリラックスできる
という二つのメリットがあります。そして、感情を出し切りスッキリした人は、次に「自分はどうしたらいいか」という段階に進んでいけるようになるのです。
このときに対話の中でタイミングよく「じゃあ、あなたはどうしたい?」と尋ねることができると、子どもが自分で解決策を考えるきっかけにもなります。最初はうまくいかなくても、どうしたいか自分で考えて決定するという流れを繰り返すことで、自己決定感が得られ、不安の軽減にもつながります。
親の不安を減らす「おかげさまで」ワーク
次に、親の不安をポジティブに捉えなおす「おかげさまで」ワークを紹介します。悩みのタネである不安を別の面から「おかげさまで」と捉えなおし、自分自身で不安を減らしていくことがこのワークのねらいです。
・不安を感じた(感じる)できごとを伝える
・最後に「おかげさまで」の言葉に続けて不安をポジティブ変換してみる
最初はぎこちなくても良いので、ポジティブ変換をひねり出してみましょう。ただし、不安の内容によっては難しい場合もありますよね。そんなときは信頼している友人や家族に聞くことで、自分の中にはない答えが見つかるかもしれません。
ワークの例文として、私の体験談をポジティブ変換してみます。
家族で釣り堀に行ったとき、魚の口に引っかかった針が取れなくて後ろに長い行列ができてしまった。他のお客さんを待たせて迷惑をかけたと不安だったけれど、親切な小学生が助けてくれた。おかげさまで、その子と仲良くなれたし、釣り堀での楽しい思い出ができた。
「おかげさまで」ワークのメリット
ワークを続けることで、得られるメリットは3つあります。
- 脳がポジティブ変換しやすくなる
- 不安やトラブルそのものを考え続けなくて良くなる
- 全ての不安や失敗を成功体験として終えることができる
「おかげさまで」という習慣ができると、嫌なことがあったとしてもポジティブに捉えなおし、成功体験として受け止めることができますよね。また、不安について考え過ぎて不安をさらに増やしてしまう悪循環を防ぐことにもつながります。
不安があるのは、当たり前のこと。戦うのでもなく、ゼロにするのでもなく、うまく付き合っていこうと思うとポジティブに捉えやすくなりますよ。
ナビゲーター
担当カテゴリー
子どもの健康・発達
公認心理師・スクールカウンセラー・発達凸凹支援コンサルタント 西木 めい
大学教育学部(特別教育専攻)卒業。小学校の通常学級の担任を8年、特別支援学校(小学部) の担任を5年、自治体の就学支援委員会(就学相談)の調査員、特別支援教育コーディネーターを経験。
「優秀な同僚の先生たちが、保護者と揉めて心を病んで、どんどん学校を辞めていく現状」を見て、専門職であるスクールカウンセラーになることを決意。現在は、小学校と中学校のスクールカウンセラーとして、親子や先生のカウンセリング、学校内の環境調整のコンサルティング、不登校や登校しぶりの再登校のサポートなどを行う。
一方で、SNSを通じた「発達凸凹支援コンサルタント」として、これまで2300人以上のママ・パパ、先生のお悩み解決コンサルを行いながら、発達凸凹っ子のママや、子どもの不登校・登校しぶりに悩むママに向けたオンライン講座、小学校の保護者100名以上が集まる子育て講演会などを開催。特別支援教育が「教育の一番の根本」であることを啓発している。2児の母。著書に『発達障害のある子を支える担任と保護者の連携ガイド 』(明治図書)がある。