怒ってつい言いすぎちゃう…という人に知ってほしい、怒りを“手放し”て子どもに伝わりやすくする4つの方法
子どもに対してつい怒りすぎてしまう時がありますよね。「怒りを長引かせてしまう」、「怒っては反省し、また怒っては…」と悩みを打ち明けてくださる方が多くいます。
今回はスクールカウンセラー、発達凸凹支援コンサルタントの立場から、「怒りすぎ」を手放す方法をお伝えします。
子どもに怒ってしまう理由
「子どもに幸せなってほしい」と願いながらも、つい子どもに怒ってしまう。その理由は、3つあります。
1. 「子どもにやってあげている」という意識
たとえば、習い事などで「あれだけお金も時間もかけてあげたのだから、〜〜してもらわないとね」と、リターンを求める気持ちが怒るきっかけになることがあります。
2. 怒りの置き換え(防衛メカニズム)
自分に向けられた怒りから、自分自身を守るために怒りの矛先を弱い立場の子どもに向けてしまうことです。心のバランスを保つためにとってしまう行動で、「経験したことがあるな」と感じる方も多いでしょう。
また、外で「いい人」の評価を求めるタイプの人は、家族に対して強気になったりイライラをぶつけてしまうことがあります。これも外での適応状態を保つ反動といえます。
3. 子どもへの所有意識
子どもは親の所有物ではない。一人の独立した人間だと頭では分かっていても、
・親の好きなように扱っていいと考える
・親をよく見せるための付属物
・子どもの気持ちよりも、世間体が優先
・子どもの失敗を、親が不安に思う
このように、子どもを私たち親の「分身」のように捉えていたり「幼くて未熟」だと無意識に感じて、うまく行動できない子どもへの焦りや不安が、怒りにつながってしまうことがあります。
「どうして自分は怒るのか?」ワークを活用してみよう
子どもに対して怒っているとき、自分の内側はどういった状態なのでしょうか。怒ったエピソードを振り返り、なぜ怒ったのか、その理由を考えるきっかけとして、このワークを活用してもらえたらうれしいです。
ワークのやり方
・怒ったエピソードを書き出す
・怒った理由が、下記1〜3のどれに当てはまるか、考える。
- 「子どもにやってあげている」という意識
- 怒りの置き換え(防衛メカニズム)
- 子どもへの所有意識
もちろん3つの理由に当てはまらないケースもありますが、それはもっと深い理由がある証拠です。「何に怒るのか」を客観的に考えることで、自分の怒りやすいポイントが見えてきます。
「怒る」は依存になる
怒りがエスカレートし、「怒りすぎ」な状態になってしまうことがありますよね。これは「怒る」ことが、怒る側にとっての報酬やメリットになってしまうからです。では、その報酬とはどういったものか、主な2つを紹介します。
1. 自己効力感が上がる
子どもを怒った後、どういった反応が起こるでしょうか。多くの場合、子どもは「ごめんなさい」と謝ります。それは、怒られたという苦痛から逃げ、これ以上怒られないようにするためにとった回避行動にすぎませんが、怒った側は「自分が怒ったことで、子どもの望ましい行動を生み出している」と誤ったとらえ方をしています。
このように、「自分は人に影響を与えている存在だ」と安心感を得ることが、怒る側の報酬になっています。
2. 処罰感情が満たされる
処罰感情とは、悪いことをした人に罰を与えたいと望む気持ちのことです。時代劇やテレビドラマ、アニメ作品でも「勧善懲悪」物語は人気がありますよね。それは、悪が正義に処罰されているのを見ると満足感がわくからです。これと同じように、子どもを怒り処罰感情を満たすことが報酬になっています。
“怒りすぎる”を手放す方法
では一体、どうしたら「怒りすぎる」ことを手放していけるのでしょうか。4つの方法をお伝えします。
1.「怒る」よりも「NG行動を伝える」
子どもの行動を注意しようと真剣に怒ったのに、子ども自身は「怒られた」ことだけが心に残り、なぜ怒られたのか、なにがNG行動だったのかという本質的なことが伝わっていないケースがあります。伝えるときは、怒らずにNG行動だけを伝えることがおすすめです。その伝え方には、大切なポイントが3つあります。
・NG行動を伝えるときに、感情は必要ない
・淡々と伝えた方が、子どもは理解できる
・何度も伝えると効果が減るから、1回で伝える
子どものNG行動を目の当たりにしたら、あれこれ言いたくなってしまいますが、感情を乗せず、淡々と1回で伝えるというポイントを意識していくことで、伝え方がうまくなります。
2.「何のために、いま怒るのか?」自分に聞く
自分がなぜ怒るのか客観的にみつめることで、怒りを手放すためのヒントが見えてきます。「子どもの行動をより良いものに変えたい」という大きな目標のために怒ったとしても、その怒りには子どもの行動を良くする効果があまりありません。それどころか、実は怒ると子どもの行動が悪くなる可能性があります。
さらに、目標を叶えるためには、最短距離めざしたいですよね。「怒る」ことは、本当にコストパフォーマンスが良いのか、改めて考えることをおすすめします。
3.自分の内側に気づく
怒る理由や、怒っているときの自分の感情について探ると、自分の内側に気づくことができます。
・リターンを求めていないか
・怒りの置き換えをしていないか
・子どもを所有物にしていないか
・自己効力感を満たそうとしていないか
・処罰感情が自分の中に隠れていないか
当てはまる項目があったとしても、自分を責める必要はありません。自分の癖に気づくことが、「怒る」を手放す第一歩になります。
4.子ども本人は、いつでも悪くない
子どもの行動が悪かったとしても、子ども本人が悪いわけではありません。
・行動だけにNGを伝える
行動だけにNGを伝えるとは、つまり「子ども本人を否定しない」ということです。この時、「悪い行動をしないあなたが大好きだよ」と伝えるのは望ましくありません。子どもに愛情を伝えるときは、「そのままのあなたのことが大好きだよ」とシンプルに伝えると良いですよ。
・怒って子どもを変えるよりも、褒めて変える方が楽!
できている瞬間に声をかける方が子どもにとっては、何が「マル」なのかがわかります。
例えば、物を振り回してしまう子に「振り回すのはダメだよ」、「投げるのはバツだよ」とNG行動だけを伝えても、子どもは何が望ましい行動なのかわかりません。子どもが物を振り回していないときに「しっかり持っているね」「丁寧に持ってくれてありがとう」と先手を打って褒めた方が、わかりやすいですよね。
「怒りすぎてしまった」と感じたときは、ぜひもう一度この記事を読んで、「どうして自分は怒るのか?」振り返ってもらえたらうれしいです。
ナビゲーター
担当カテゴリー
子どもの健康・発達
公認心理師・スクールカウンセラー・発達凸凹支援コンサルタント 西木 めい
大学教育学部(特別教育専攻)卒業。小学校の通常学級の担任を8年、特別支援学校(小学部) の担任を5年、自治体の就学支援委員会(就学相談)の調査員、特別支援教育コーディネーターを経験。
「優秀な同僚の先生たちが、保護者と揉めて心を病んで、どんどん学校を辞めていく現状」を見て、専門職であるスクールカウンセラーになることを決意。現在は、小学校と中学校のスクールカウンセラーとして、親子や先生のカウンセリング、学校内の環境調整のコンサルティング、不登校や登校しぶりの再登校のサポートなどを行う。
一方で、SNSを通じた「発達凸凹支援コンサルタント」として、これまで2300人以上のママ・パパ、先生のお悩み解決コンサルを行いながら、発達凸凹っ子のママや、子どもの不登校・登校しぶりに悩むママに向けたオンライン講座、小学校の保護者100名以上が集まる子育て講演会などを開催。特別支援教育が「教育の一番の根本」であることを啓発している。2児の母。著書に『発達障害のある子を支える担任と保護者の連携ガイド 』(明治図書)がある。