男の子の身体の変化って?ポジティブに正しい知識を伝えよう!助産師が教える“おうち性教育”【児童期男の子編】
“おうち性教育”という言葉を知っていますか?おうち性教育とは、お子さんがまだ幼い頃から積極的に性に関する教育に取り組むこと。幼少期から性教育に触れることで、子どもたちが自らの心と身体を守る術(すべ)を身につけることに役立ちます。
助産師の石嶺みきさんによるおうち性教育のコラム、今回のテーマは「児童期の男の子」について、紹介します。
児童期とは?
これまでいろいろなご相談を受けるなかで、児童期のお子さんについての質問も多くいただきます。今回は児童期の男の子についてのお話をします。
児童期とは、小学校入学から第二次性徴が始まる思春期(6歳から12歳頃)までの時期をいいます。この時期は、心と体の成長に個人差が非常に大きく、思春期へ移行するタイミングも子どもによってそれぞれです。
児童期の男の子の特徴
児童期の男の子の身体は大きく成長し、自己に対する肯定的な意識を持ち始める時期ですが、反面、発達には個人差が大きく見られることから、自己肯定感を持てずに自尊心や感情が低下して、劣等感を持ちやすくなる時期でもあります。
また自立心も芽生え、親から離れて子ども同士の社会に身を置き始めますが、特に男の子は「まだまだ幼い」と感じてしまうお父さんやお母さんもいることでしょう。お子さんの成長のペースを見極めながら、日常の中でさりげなく性についての会話ができたらいいですね。性教育とはまずは自分の体を知ること、自分を好きになることがスタートです。
児童期の男の子の身体的変化
児童期の男の子のお母さんから、子どもが成長するにつれて「女の子のことはわかるけれど、男の子の身体の変化がよくわからない」、「精通ってどういうこと?」などのご相談をいただきます。
思春期の最初の兆候は精巣が大きくなり始めることで、通常9歳から13歳の間に起こります。その後、陰毛が生えてきたり、おちんちん(ペニス)が大きくなっていることに気づくでしょう。早ければ精通も始まり、精神的にも身体的にも成長がみられます。わきの下や顔、胸などに体毛が生えてきて、声も低くなっていきます。
精通ってなに?どう教える?
男の子が初めて射精することを「精通」といいます。早くて10歳頃、遅くとも18歳頃までには経験します。「いつ始まったのかよく分からない」というように、あまり自覚がないままに始まるケースや、体に大きな変化を感じないうちにも、精通が起こるケースもあります。精通が起こる年齢も個人差がとても大きいので、人と比べる必要はありません。ちなみに児童・生徒の性に関する調査(※)では、小学校6年生で精通を経験している生徒は15%程度です。
※東京都幼・小・中・高心性教育研究会 児童・生徒の性に関する調査 2014年版
何の知識もないままにある朝、突然夢精してしまったら、子どもは戸惑うかもしれません。そうならないためにも、「夢精といって、寝ている間にパンツが汚れてしまうことがあるかもしれないよ」などと、早くから親が教えてあげることが大切です。とはいえ、説明するのは難しいですよね。そんな時は、勃起、射精、夢精などの男の子の性について分かりやすく書かれている本がありますから参考にしてみて下さい。
男の子のからだえほん
著者/編集:マティルド・ボディ(著・絵) ティフェーヌ・ディユームガール(著) 艮香織(監修) 河野彩(訳)
出版社:パイ インターナショナル
ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)認定、国際基準の性教育絵本です。インパクトのあるイラストで、からだの構造から、思春期、性自認、性的指向、性的同意、愛などの人権教育に及ぶテーマまで扱っています。絵本を通して大人も性に対する考え方を十分にアップデート出来る内容になっていますよ。
自分の体の変化についてポジティブに、医学的に正しい知識を伝えることができたらいいなと思います。
恥ずかしがらずに正しい知識を伝えよう!
性教育は、子どもたちが自分の生き方を自らで選択し、納得する人生を歩んでいくために必要な教育です。また、自らには自己決定権があるということを伝えるための教育でもあります。まずは大人が知識をアップデートして、恥ずかしがらず、正しい知識を楽しくお子さんに伝えていただければと思います。
次回は、「児童期の女の子」のためのおうち性教育について、お伝えします
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担当カテゴリー
子どもの健康・発達
助産師・看護師・栄養士 石嶺みき
助産師、看護師、栄養士。ミキズハウス助産院院長。株式会社FM BIRD所属。不妊治療中に献身的に励ましてくれた助産師に強い憧れを抱き、出産後に看護学校に進学。助産師専攻科を経て助産師資格を取得。卒業後は大学病院産婦人科外来・病棟に勤務し多くの出産に立ち会う。
その後、保健センター勤務に転じ、産後のメンタルサポートや妊娠SOS相談窓口、新生児訪問、乳幼児健康診査なども行う中で、フェムケア教育の普及活動を思い立ち独立。一般の方だけでなく、看護学校の教員や助産師、看護師などを対象とした講習会などを開講。現在は“全ての世代に、泌尿生殖器ケアを通して幸せになってもらいたい”という信念のもと、「フェムケア」「おちんちんケア(オムケア)」「思春期性教育」をはじめとする講演を広く行うなど、積極的に活動中。
今年4月出版「ぞうちんとぱんつのくに」原作・監修(KADOKAWA)