新学期の「学校に行きたくない」子どもへ親ができる声かけと生活リズム改善法

新学期の「学校に行きたくない」子どもへ親ができる声かけと生活リズム改善法

モンテッソーリやレッジョ・エミリアなど、子どもの自主性や創造性を育む『オルタナティブ教育』の第一人者である島村華子さんの連載。第10回は新学期に考えたい「学校への行き渋り」についてです。

新学期が始まると、「朝になると学校に行きたがらない」「勉強スイッチがなかなか入らない」「毎日の声かけに親も疲れてしまう」という声をよく耳にします。まず大切なのは、これは決して珍しいことではなく、多くの子どもたちが経験する自然な反応だということです。

長い夏休みは、普段の学校生活とはまったく違うリズムになります。朝はゆっくり起きて、昼間も自由に過ごし、夜更かしをしてしまうことも少なくありません。そこから突然、毎朝早起きして、長時間学校で過ごすモードに切り替えるのは、大人でも大変なことです。子どもにとってはなおさら負担が大きいのです。

原因は生活リズムの崩れや睡眠不足のことも

休み明けに子どもが学校へ行きたがらない大きな理由のひとつに、生活リズムの崩れとそれに伴う睡眠不足があります。夏休み中はどうしても夜更かしや朝寝坊が増え、毎日の過ごし方も不規則になりがちです。その結果、体内時計が少しずつ後ろにずれていきます。ところが新学期が始まると、急に早起きをして決まった時間に登校し、長い一日を集中して過ごさなければなりません。心も体もまだ準備が整っていない状態で無理に切り替えることになるため、眠気やだるさが強く出てしまい、それが「学校に行きたくない」という言葉や行動につながってしまうのです。

実際のところ、小学生は学年が上がるにつれて夜更かしの傾向が強まり、平日の睡眠時間が減少していくことが報告されています。さらに、睡眠時間が短い子どもほど学業成績が低下しやすいという研究結果もあります。成績の低下そのものがすぐに「行きたくない」気持ちを生むわけではありませんが、眠気や集中力の低下によって授業についていきにくくなったりすると、子どもは「学校は疲れる場所」「できないことをやらないといけない場所」と感じやすくなります。そうした体験が積み重なることで、朝になるとなんとなく「いやだな」という不安が強まり、「学校に行きたくない」というような行きしぶりの形で表れてくることがあるのです。

まずは共感の言葉をかけよう

子どもが「行きたくない」と言ったときに、まず大切なのは親が共感の言葉をかけることです。「まだ体が学校モードに戻っていないんだよね。一緒に慣らしていこう」といった声かけは、子どもに「自分の気持ちをわかってもらえた」という安心感を与えます。怠けているのではなく、体と心がまだ学校生活のリズムに追いついていないだけだと大人が理解してあげることで、子どもが感じるプレッシャーも和らぎます。

そうした安心感を土台に、生活リズムを徐々に整えていくことも大切です。いきなり「今日から早寝早起き!」と切り替えるのは難しいものですが、就寝や起床を10〜15分ずつ前倒しするだけでも、子どもにとっては無理なく取り組める工夫になります。朝はカーテンを開けて太陽の光を浴びる、だいたい決まった時間に朝食をとるといった小さな習慣が、ずれていた体内時計を少しずつ元に戻してくれます。前日の夜に「明日は好きなパンがあるからね」といった楽しみを用意しておくと、翌朝の目覚めも少し楽になるかもしれません。

「自分だけじゃない」と感じる声かけ、対話も工夫を

親子の対話を工夫することも力になります。「学校で一番楽しみにしていることはなに?」「今日は誰と一番たくさん話したい?」「給食で一番楽しみにしているメニューは?」などとさりげなく問いかけてみると、子どもは自分なりに楽しみを思い出したり見つけたりすることができます。そして「○○くんに会えるのが楽しみなんだね」「図工の続きが早くやりたいんだね」と受け止めてあげることで、学校は行かなければならない場所ではなく、自分の楽しみが待っている場所として心に映るようになります。

また、親自身の「やりたくないけどやらなきゃいけない」体験を共有するのもよいでしょう。「お母さんも朝早い会議は行きたくないけれど、5分だけ早起きして準備するとなんとかなるんだよ」「お父さんも苦手な電話を頑張ったあとにコーヒー飲むのを楽しみにしているよ」と伝えることで、子どもは「嫌なことをやらないといけないのは、自分だけじゃない」と感じられるはずです。さらに「やりたくないことも工夫したらできる」という大人の工夫を知ることで、自分なりのやり方を試してみようという気持ちが芽生えてくるかもしれません。

ゆっくり、あせらず

行きしぶりに対応するのは、忙しい日々を過ごす親御さんにとって、とても大変に感じられることがあるでしょう。それでも、子どもたちは少しずつ学校のリズムに慣れていきますし、時間の経過とともに「行きたくない」という気持ちも和らいでいくものです。どうか親御さんもご自身を責めずに、あせらず、ゆっくり歩んでいってみてください。

島村華子さん監修・推薦のモンテッソーリの絵本が発売

島村華子さんが監修する世界で100万部突破のベストセラー、話題のモンテッソーリの絵本が9/12(金)、日本で発売されることに。指先を使いながら数の概念に楽しくふれることができる「かず」のほか、「かたち」も同時発売。また「きもち」「どうぶつ」も9/25(木)に発売されます。

https://books.jitsumu.co.jp/book/b662173.html

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学び・遊び・教育

児童発達学研究者 島村華子

オックスフォード大学修士・博士課程修了(児童発達学)。日本人で唯一の、モンテッソーリ&レッジョ・エミリア教育の二つを司る研究者。現在はカナダの大学にて幼児教育の教員養成に関わりながら、日本でも教育・子育てについて、親や教育者に寄り添ったアドバイスを発信している。著書『アクティブリスニングでかなえる最高の子育て(主婦の友社)』『自分でできる子に育つ ほめ方 叱り方(ディスカヴァー・トゥエンティワン)』『親子でできる モンテッソーリ教育とマインドフルネス(創元社)』

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