切り替えが苦手なわが子、集団生活は大丈夫?良さを伸ばしながら親ができるサポートとは

このコラムでは大阪教育大学教育学部教授の小崎先生が、「こんな時どうしたらいいの?」「子育ての“ココ”が知りたい!」という皆さんのお悩みに答えます。今回は小学生のお子さんについてのお悩みです。
Question: 好きなことに集中すると周りが全く⾒えなくなり、集団⽣活のリズムを乱してしまうことがあります。切り替えができるように声がけをしていますが、どう対応すればよいでしょうか
子どもは気持ちのコントロールが難しいもの
子どもの気持ちや行動の切り替えは、難しいですね。極端な例えになりますが、保護者の方の気持ちのコントロールのイメージは「ガラストップのIHクッキングヒーター」です。火力の調整が10段階ぐらいあり「とろ火」から「強火」まで、自由自在にその状況に応じてコントロールできます。
一方、子どもたちの気持ちのコントロールは同じ「火力」に例えるなら、キャンプのカレーを作るときの薪のようなものです。なかなか火がつきにくくて、そして一度火がつくとその火力のコントロールはとても難しいです。最終的には水をかけて、無理やり消さなくてはいけないぐらいです。
まずはそのように、大人と子どもの気持ちのコントロールには大きな差があることを意識してほしいです。ついつい大人は自分の感覚や常識を基準にして子どもたちと関わり、同じような行動を求めがちになってしまいます。自分が子どもだった頃の感覚や想いを少し思い出してみてください。誰もがみんな子どもだったのですから。
良い面と気になる面の2つの視点
このことを少し念頭に置いて、ご相談について考えてみましょう。子ども達の行動を見るときに、2つの視点があります。それは良い面と気になる面です。
今回の良い面は「とても集中力がある」という子どもの姿です。周りが見えなくなるほど集中している姿はとてもすてきなことであり、子ども自身のパワーを感じます。
しかし一方で「集団生活のリズムを乱す」というちょっと困るような場面も出てきます。成長していく中で、学校や友だちとの生活や集団行動が求められることが多くなります。そのときに集団生活がうまくいかない場合の不安や周りへの影響を考えると、親としては気になるところかもしれません。
バランスよく生きてほしいと願うけれど
これらの問題を考えるときの1つの視点は、バランスだと思います。つまり親は子どもたちに「何でもうまく対応してほしい」「そつなく過ごしてほしい」「スムーズにバランス良く生きてほしい」と願っているのです。
例えば、先ほどの「集中力があり、集団生活が乱れる」という子どもには、結局どうなってほしいのでしょうか?子どもの「良い面」と「気になる面」、2つの視点のバランスを考えると、以下の3つの子どもの姿が考えられます。
- 集中力はさほどないが、集団生活をまあまあ対応できる
- 集中力がとてもあり、そのうえ集団生活の適応も抜群
- 集中力がなく、集団生活も苦手
理想を言えば2番目の、どちらもとてもよくできる子どもの姿を求めたくなります。しかし子どもたちがみんなそのように、全てのことにうまく対応できるわけではありません。それが子どもの自然な姿であり、そのことが子どもの個性となっていくのです。
3番目のどちらも苦手という子どもたちもたくさんいますよ。また、大人でもこの2つを並び立てるのは難しいと思います。
まずは子どもの良いところを見つけて伸ばそう
このような視点に立てば、少しぐらい集団生活がうまくいかなくても、好きなことに対する集中力がとてもあるお子さんはすてきなことだと思いませんか?自分の気持ちのコントロールはまだまだうまくできなくても、あまりある集中力を伸ばしていってあげてほしいです。
そして集団との関わりや折り合いは、本人を変えるというより、環境や周りの大人が配慮していきながら、良い折り合いをつけていってほしいです。まずは子どもの良いところを見つけて伸ばしてあげて、その中で苦手なことを少しずつ調整できるようにしていってあげてください。
ついつい親は子どもに、全てをパーフェクトにできる子ども像を求めがちです。気持ちはよくわかります。しかしまずは目の前の子どもの好き嫌いや個性をしっかりと理解した上で、その子ならではの良さや個性を大切にしてあげてください。それが子育ての第一歩です。
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学び・遊び・教育
大阪教育大学教育学部 教授 小崎恭弘
大阪教育大学教育学部学校教育教員養成課程家政教育部門(保育学) 教授。大阪教育大学附属天王寺小学校元校長。兵庫県西宮市初の男性保育士として施設・保育所に12年勤務。3人の男の子それぞれに育児休暇を取得。それらの体験をベースに「父親の育児支援」研究を始める。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌などで積極的に情報を発信。父親の育児、ワークライフバランス、子育て支援、保育研修など、全国で年間60本程度の講演などを行う。これまで2000回以上の講演実績を持つ。NPOファザーリングジャパン顧問。Yahoo!ニュース 公式コメンテーター。東京大学発達保育実践政策学センター研究員。兵庫県、大阪府、京都府などさまざまな自治体で委員を務める。




























