子どもの心の安定と自立に役立つ「時を知らせる」“時間感覚”育て

朝の支度が進まない、遊びがやめられない──忙しい時に決まって子どもがぐずり出すことがありますよね。 そんな時こそ、子どもに今日の予定を共有してみてください。子どもの時間感覚が育ちますよ。
子どもにとって「時間」とは「概念」
大人にとって「時間」は時計を見ればわかるものですが、子どもにとっては目に見えず、手で触れることもできない“抽象的な概念”です。特に3〜6歳の幼児期は、まさに「時間感覚」が育ち始める重要な時期。
この時期に大切なのは、“時を知らせる”ことを通して、子どもが日常生活の中で「順序」や「見通し」を感じられるようにすることです。見通しを持つことは、子どもに安心感を与え、主体的な行動の基盤にもなります。
年齢ごとの時間感覚の発達段階を理解しよう
〜3歳:「まえ」「いま」「あと」がまだ未分化
2歳前後の子どもは、「まえ」「いま」「あと」といった順序の理解がまだあいまいです。たとえば、保育園に登園したばかりなのに「ママくる?」と玄関で待とうとする姿は、“自分の気持ち”と“時間の経過”がまだ結びついていないからです。
この時期は、繰り返しの生活リズムの中で「順序」を経験することが大切です。食事のあとに歯みがきをする、絵本を読んだら寝るなど、日々の流れが子どもの中に少しずつ秩序として積み重なっていきます。
3〜4歳:「昨日」「今日」「明日」を語り始める
3歳を過ぎると、「この前〇〇した」「明日はお出かけ」など、過去や未来を表す言葉を使い始めます。とはいえ、まだ時間の長さや順序の理解は曖昧で、「昨日お祭りに行った!」という話が実は1か月前のことだったりもします。
それでも、こうした“時間を言葉にする”経験こそが、理解を深める第一歩。保護者は「そうだったね。楽しかったね」「明日は動物園だね」など、子どもの言葉を受け止めながら会話を広げてあげましょう。
5〜6歳:「時・分・秒」への関心が芽生える
5歳を過ぎると、「〇時になったら出かける」「〇〇が終わったらお風呂に入る」といった順序の理解ができるようになります。時計に興味を持ち、「長い針」「短い針」といった要素にも関心を示す子も増えます。
さらにこの頃から、「昔」「未来」など時間の広がりにも興味を持ち始め、恐竜や宇宙といった“大昔の世界”の話題に夢中になることも。これは時間をより長いスパンで捉える力が育ってきている証拠です。
「時を知らせる」ことの意義とは?
時間を知らせることは、単にスケジュールを伝えるためではありません。「このあとお散歩に行こうね」「ご飯を食べたらお風呂に入ろうね」といった言葉を交わすことが、子どもに“安心感”と“予測できる生活”を与えます。これが、心の安定と主体性を育てる基盤になります。
また、保護者の「急いで!」という声かけも、時間の見通しを持てない子どもにとっては理解しにくいもの。予定を前もって共有することで、子どもは自分のペースで行動に移す準備ができます。
アナログ時計で「時間」を見える化
3歳前後になると、数字や記号への関心が芽生え始めます。アナログ時計はその興味を育てる絶好のツールです。「長い針が12に来たら〇時ちょうどだよ」「朝8時になったら出かけようね」と、時計と日常の行動を結びつけて伝えましょう。
初めは意味がわからなくても、針が動くことを眺めるうちに、「針が動くと時間が進む」ことを体感的に理解していきます。時計を“時間の見える化ツール”として、生活の中に積極的に取り入れてみてください。数字が大きく、読みやすいシンプルなデザインの時計がおすすめです。

予定を共有して、親子で時間を感じる
朝の支度が進まない、遊びがやめられない──そんな時こそ、予定の共有が大切です。「ご飯を食べたら出かけようね」「あとでお風呂に入ろうね」と前もって伝えることで、子どもは気持ちの準備ができます。また、遊びを切り上げる時には“カウントダウン方式”が効果的です。「あと15分で帰るよ」「あと3回すべり台したら帰ろうか」など、区切りを具体的に伝えると、子どもは“今”と“これから”をつなげて理解できます。
生活リズムを整えることで「時間感覚」が定着
幼児期は、生活リズムそのものが“時間感覚の土台”になります。起きる時間、食事の時間、寝る時間など、1日のリズムをできるだけ一定にすることで、子どもは「時間の流れ」を身体で感じ取ります。保護者が時計を見ながら「もうすぐ8時だね」「寝る時間だよ」と声をかけることは、子どもの中に“時間の秩序”を刻む習慣づけにもなります。
「時間」は見えないけれど、感じることはできます。日常の中で「時を知らせる」「予定を共有する」「時計を一緒に見る」といった小さな積み重ねが、子どもの安心感と自立心を育てます。親子で一緒に「時」を感じながら、穏やかなリズムのある毎日を過ごしてみましょう。“時間の流れを共に感じる”ことが親子の絆をより深くし、子どもの自立を後押しする第一歩になります。



























