授業中に立ち歩き、教室から飛び出す子…学校はどんな対応をする?
私は小学校・特別支援学校での教員歴13年。のべ300人の子どもとかかわってきました。特別支援を専門としていて、特別支援教育コーディネーターや就学指導(支援)委員会での経験があります。私の長男は現在療育に通っていて、保護者としての目線ももちつつ、私のインスタグラムに寄せられたもので反響の大きかった質問について紹介します。
Question わが子が授業中に立ち歩いたり、教室から飛び出したりします。学校ではそのような子どもに対してどうかかわっているか教えてほしいです
今回は「なかなか授業に集中しにくい子」に対して、学校ではどう対応しているか、そして親はどうかかわっていくのがよいかをお話しします。
必ずその子なりの理由があります
なにが苦手なのか観察する
授業に参加しにくい子どもには、必ずその理由があります。まずは授業へ集中がむけられない原因や、気持ちがそれるきっかけをつきとめます。
考えられる例は以下のとおりです。
・手を挙げたのに当てられなかった
・長い時間、待たされた
・隣の子とモメた
・外へ出て開放的な気分になった
子どもの気持ちがそれるときは、だいたい「がまんができないくらいイヤなこと」か、「おさえられないくらい楽しいこと」があったか…このどちらかの場合が多いです。
感覚過敏の可能性を考えよう
普通の人よりも感じ方が敏感になってしまう症状のことを「感覚過敏」と言います。親が感覚過敏について知っていれば、子どもの困っている感じにいち早く気づくことができるでしょう。
感覚過敏の例は、以下のとおりです。
・外の工事の音が絶えず気になる
・蛍光灯のちらつきが異常にまぶしく感じる
・服のタグがチクチクしてがまんできない
・洗剤のにおいで吐き気や頭痛が起こる
このように感覚過敏は、聴覚・視覚・触覚・味覚・嗅覚すべての感覚で起こります。
人の多いところは注意
「人が多い場所」が苦手な子どもは多いです。
教室では落ち着いていられるのに、全校集会のように人数の多い中にいると、ソワソワしてしゃべりたくなってしまうことがあります。また集会では人と近い距離で座る必要があるので、パーソナルスペースが守られずにストレスを感じる場合もあります。
集中が高まるような環境の調整をする
子どもが集中しにくくなる原因の多くは、まわりの環境です。
学校では特に、視覚的な環境設定と聴覚的な環境設定が行われています。
視覚的な過敏への対応
・棚には白いカーテンや布をかぶせて、ごちゃごちゃした中身が子どもの視界に入らないようにする
・黒板の文字は、色の数が多くならないように配慮する
・教室前面には、できるだけ掲示物を貼らない
聴覚的な過敏への対応
・モーター音が気になるような水そうを教室内に置かない
・飾りの音が気になる文房具は学校に持たせないよう家庭に依頼する
・必要に応じてイヤーマフの購入や貸し出しを提案する
心を落ち着けてクールダウンする
苦痛が解消される声かけや環境があると、安心して授業に参加できる子どもは多いです。これを「クールダウン」と言います。
クールダウンの方法は、以下の手順です。
・できれば別の場所を確保する(空き部屋など)
・視界をシンプルにする
・狭さが好きな子にはパーテーションなどで狭い空間をつくる
・できるだけ静かな場所に設定する
上記が難しければ、大きい段ボールやフープやマットを置き「授業を抜けて、ひとりでいていい場所」を作ります。
効果的なクールダウンの方法
クールダウンをより効果的にするためには「子ども本人がクールダウンすることに劣等感をもたないこと」が大切です。
まわりの子と違う行動をとることで「自分は悪い子、劣っている子」と感じてしまう子は少なからずいます。
家庭でも「困ったときにまわりにヘルプを出すのは普通のこと」と子どもに伝えて、自信をなくさないようにしていきましょう。
どうしても自分からヘルプを出しにくい子どもの場合はカードを使う手立てが有効です。
「クールダウンカード」や「ヘルプカード」を作り、その子がいつでも手に取れるところに置いておきます。
子どもの心が落ち着かなくなってきたら、カードを持って先生のところへ行くという使い方を教えておけば、自分で何か言葉を出さなくても先生に「クールダウンがしたい」ということが伝わります。
こちらのクールダウンの手立ては、普通級で行われていることが多いものです。
担任の先生によってはほかの子どもたちに向けて「〇〇さんは今、気持ちを落ち着けるために別の場所へ行きます」と説明する場合もあります。
しかし普通級での取り組みは担任の先生によって対応がまちまちなことや、学校体制の整備によってちがうため、一概には言えません。
私は、この記事が「こういう支援方法もあるんだ」という気づきになり、保護者と担任の先生との連携材料になったらいいなと考えています。
家庭でできるかかわり方
これまでの内容をふまえ、家庭でもできるかかわり方は以下の3つです。
・学校との情報交換や連携をする
・落ち着かない状況別に親子で考えてみる
・自己肯定感が上がるような声かけを心がける
「どうすれば学校でみんなと同じように過ごせるのだろう?」と考えるのではなく「どういう手立てがあれば、この子が安心して学校で過ごせるのだろう?」と視点を変えてみましょう。
「子どもが安心して生活する」という目的をもてば、子どもの行動は徐々に変わってくるはずです。