子どもによく伝わる!モンテッソーリ教師の声がけ10選
保育参観のときに「先生たちが子どもにうまく対応している様子が参考になりました」との声をいただくことがあります。モンテッソーリの現場でよく使われている言葉がけにはどんなものがあるのでしょうか?私の勤務先でよくある声がけを紹介します。
モンテッソーリ教師のよくある声がけとは?
私の勤務先の「モンテッソーリ原宿子供の家」では、年に2回の保育参観があります。
朝10時ごろからお昼までの約2時間活動を見てもらいますが、「家で過ごしている様子と全然違います」「家だと全然片付けない、親の言うことを全然聞かないので心配していたのですが、園だとしっかりできているようなので安心しました」「先生たちがうまく子どもに対応していて、参考になりました」などの感想をいただきます。
子どもの様子が家とは違うのはごく当たり前ではありますが、教師が伝わりやすい話し方をしていることも子どもに影響しているのかもしれません。
そういえば私たち教師がよく使っているなと思い当たる声がけはいくつもあります。改めてみると、どれも特徴的でモンテッソーリの考え方によるところが大きいと思います。
- 活動の主体は子どもである
- 自分のことは自分で
- 個人の考えや特性を尊重する
- 必要以上に子ども扱いをしない
これらのことを踏まえて、教師たちの声がけを読んでみてください。
1.「いいね」「すてきだね」「先生はここが好きだな」
子どもが意見を言ったときや、作品を作って見せてくれたときなどに返す言葉です。
上手にできているか、正解であるかを評価するよりも、素直に感想を伝えているところがポイントです。
現場の教師は自然に使っていますが、背景を考えるとモンテッソーリの「成否や出来栄えを評価するのは子ども自身であって、大人ではない」という考え方からきていると思います。
一般によく使われる「上手にできたね」「うまくできたね」などの言葉はあまり使いません。子どもが楽しく、集中したことが大事なのであって「上手かどうか」という結果はあまり重要でないからです。
2.「ここをもう一度見てみよう」
計算問題やパズルなどをしている途中の子どもに「ここは間違っているよ」と直接的に指摘をすることはありません。
途中でうまくいかなくなって、子どもの方から「手伝って」と言われれば「ここをもう一度見て」のように、子ども自身で確認するように促します。
3.「~してもいいよ」「~したらどうかな?」「~できるといいね」
子どもが活動の中で困っていて、アドバイスが必要なときに使います。
「こうしてみたら?」「こうやるとやりやすいよ」と選択肢を与えて、あとは子どもに任せるようにします。
鉛筆の持ち方、ハサミの持ち方が違っている子に正しい持ち方を伝えるときにも「こうする方がやりやすいよ」と言ってやり方を見せます。
どんな場合でも教師が絶対的に正しいわけではありませんから、子どもに「~しなさい」と強要することはありません。学びの主役は子どもなので、それぞれのやり方があっていいという考え方です。
4.「ここはいいね」「ここはもう少し~できるともっといいね」
作品を作っている子どもにアドバイスするなどの場合は、いいところを先に褒めるようにします。
例えば遠足の絵を描いた子どもに「ダイナミックに描けているところがいいね」「余白が残っているところは、もう少し描き足せたらさらに良くなるんじゃない?」「この部分にはどんなものがあったか思い出してみよう」というように、さらに良くなるためのアドバイスをします。
ただし、子どもがなんらかの意味を持って余白を残しているというのであれば、もちろん無理強いはしません。
5.「次はどうするんだっけ?」
子どもが次の行動がわからなくて迷っていたり、あるいは少しぼーっとしているとします。そんなときでも「次は~でしょ?~しないと!」と先回りした言い方はしないようにしています。
初めての活動の場合はしっかりとやり方を見せますが、すでに何度かやっていることの場合は、「次は何をするんだっけ?」「いつもどうしてる?」「今、これが終わっているということは?」などと促して、子どもが自分で考える余地を残すようにしています。
6.「目と耳を使ってみよう」
教師や他の友達が話(説明)をしているときでもついついしゃべってしまう子どもに聴くようにと促すときに使っています。
「口はお休みして、目と耳を使おう」のように使います。「聞いてください」「静かにして」よりも指示として具体的なので、すんなり伝わることが多いです。
何かやるべきことの途中で話が止まらない子には、「それが終わったら聞くね」と言って、本来の作業に戻るように促すこともあります。
7.「歩いてね」
子どもの行動に対して注意を促そうとするとき、ついつい「走らないで!」「触らないで!」と否定的な言い方をしてしまいそうですが、「歩いてね」「見るだけにしてね」「そっと、優しく触ってね」という言い方をするようにしています。
何かを禁止するよりも、もっといいやり方を子どもに教えてみましょう。
先日、部屋に飾られていたセミの標本に興味を持った1歳の子どもに「触らないでね!」とは言わずに、そっと触るやり方を見せたところ、同じように優しく触ることができました。「優しく触れたね」と言うと、にっこりしていましたよ。
8.「これ、お願いします。ありがとう。」
子どもができる作業であれば、どんどん任せてお願いしてしまいます。「この荷物をあの机の上においてくれるかな?」「床に落ちている鉛筆を拾ってくれるかな?」「あのお友達にやり方を教えてくれるかな?」など、具体的に伝えます。
子どもは(適度に)頼られるのが好きなので「うん、いいよ!」「わかった!」と返事をしてくれることが多いです。頼みごとに応えてくれた後には、必ず「ありがとう」と声を掛けるようにしています。
余談ですが、おもちゃの片付けをさせたいときには「片付けて」と言うよりも、子どもに物を手渡して「あの棚に戻してきてね」と言う方がスムーズです。
この場合は自分で出したおもちゃですから、片付けて当然です。「ありがとう」よりも「片付けられてよかったね」「片付け、できたね!」と行動を認めるようにしています。
9.「それは、悲しい気持ちになるなあ」
約束事を守らない、物を大事にしないなど物事の良し悪しを考えさせるべきとき、または、けんかや意地悪など子ども同士のトラブルなど相手の気持ちを考えるべきタイミングでよく使うフレーズです。
集団生活の中で、ルールや人との付き合い方を学んでいる最中の子どもたちにトラブルはつきものです。
そんなときには単に叱りつけるよりも「みんなで使う物を大事しないなんて、先生は悲しいな」とこちらの気持ちを伝えたり、「それはいいことかな?」と問いかけて子どもに考えさせたりします。
けんかの場合はまず状況を整理し、それからお互いがどんな気持ちだったか言葉にできるように助言するなどして手助けをします。毎回教師が仲裁するというよりは、そのうち自分たちで解決できるようなやり方でサポートします。
10.「これ楽しいなあ、先生が全部やってもいいかなぁ?」
年に数回あるかないかのめったにない声がけですが、ごくたまにいる頑固な子、天邪鬼な子どもに必要に応じて使います。
2歳くらいの子どもにありがちですが、何を言っても「や~だよ」しか言わない天邪鬼な時期があります(子どもにもよりますが)。
そんな時期は「これやろうよ!楽しいよ!」とストレートに誘ってみても「や~だよ!」としか返ってきません。
本来はそういう子どもに強制的に何かをやらせる必要はないのですが、時にはこちらが楽しそうにやっているところを見せるという手段を取る場合があります。
やや大げさに「わあ、すごい楽しい!」と何か活動をやって見せたり、「これぜーんぶ、先生がやってもいいの?〇〇くんはやらないでよ?」と念を押したりすると、天邪鬼ぶりを発揮して「やだ、やる!」とやってきたりします。
少しずるいやり方かもしれませんが、とにかく何もしない、片付けない、こちらが嫌がることをしたがるなどアピールが強い子ども向けに、何かきっかけが必要な場合に使っています。
いかがでしたか?ポイントは
必要以上に子ども扱いせず、子どもを信じて、自分でできるように関わること
です。家庭での関わり方でも参考にしてみてくださいね。