「ママがいい! パパはダメ」と言う子どもの対処法/vol.2「パパがいい!」と言われるには?

「ママがいい! パパはダメ」と言う子どもの対処法/vol.2「パパがいい!」と言われるには?

「ママがいい! パパはダメ」という言葉、パパはショックだと思います。完全な敗北ですからね。悔しいですし、また無力感に襲われます。つらいです。つらすぎます。けれど、ここであまり落ち込む必要は実はないんです。

子どもの心の安定に必要な「アタッチメント」とは?

子どもは、その人生の初期において、自分の中に絶対的な安全基地を作り上げます。それは基本的には、日々の養育(食事、睡眠、排せつなど)を通じて、獲得されるものです。その安全基地となる身近な養育者との関係性を通じて、自らの心の安定を図るのです。このような機能を「アタッチメント」といいます。

母親は日々の子どもとの生活を通じて、これらのアタッチメントを構築しているのです。子どもからすると、何かあった時も、母親の元にさえ行けば、きちんと「いつも通りの対応」をしてもらえ、安心ができるのです。これが「ママがいい」の大きな理由です。絶対的な安心を与えてくれて、そのことにより自分が安定できるわけですから。

この絶対的な存在は、母親でなければいけない、というわけではありません。しかし現在の日本では、多くの場合は養育の中心が母親であるので、母親がアタッチメントの対象となるのです。もちろん父親でも大丈夫です。要は「特定の養育者」が必要なのです。

パパにできることは2つ、「アタッチメントを作る」「次のステップを大切にする」

「パパはダメ」と言われるのは、この安心感が「少ない」、あるいは「まだない」ということなのです。ここでパパができることは、大きく2つあります。1つはこのアタッチメントを子どもとの間に作るということです。そしてもう1つは、ママにアタッチメントは任せて、次のステップに目を向けるということです。

それぞれに説明していきましょう。

■アタッチメントを作る
アタッチメントは、子どもが幼い時から日々の生活を共にしていく中で、作りあげられていくものです。子どもの生理的欲求「食べる、寝る、排せつする」などのケアを丁寧にしていき、「快適」を与えていくこと、また何か不安や不快を感じた時に、適切に対応していくことにより、パパが安全基地となり、子どもたちとの間にアタッチメントが作られていきます。だから子どもとの時間や生活に積極的に関わり、子どもにとって居心地の良い環境や生活を心掛けましょう。基本的にはケアを中心として、丁寧な関わりをしていくことが求められます。

■次のステップを大切にする
アタッチメントがママとしっかりと作り上げられると、子どもたちはその安定感をベースにして、社会や外の世界に目を向けていくことになります。このタイミングで、パパは子どもたちの世界を広げて行くことに関わっていきましょう。子どもの好きなものを見つけて一緒に楽しんだり、子どもの興味関心を広げたりしていくという感覚です。新しい世界との出会いを一緒に体験していくのです。

これら2つについて、注意をしなくてはいけないのは、「ママとライバルにならない」ということです。子どもの取り合いや歓喜の奪い合いなどをしないようにしてください。ママをおとしめたり、子どもに悪口などをいうのも、もちろんダメです。パパとママが2人で、子どもの応援団になってください。

そのような関わりを続けていくうちに、子どもの中で、ママとは違うパパの位置付けができあがります。それがきっと「パパがいい!」という言葉につながるでしょう。

教えてくれたのは

小崎恭弘
大阪教育大学教育学部学校教育教員養成課程家政教育部門(保育学) 教授。大阪教育大学附属天王寺小学校長。兵庫県西宮市初の男性保育士として施設・保育所に12年勤務。3人の男の子それぞれに育児休暇を取得。それらの体験をベースに「父親の育児支援」研究を始める。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌などで積極的に情報を発信。父親の育児、ワークライフバランス、子育て支援、保育研修など、全国で年間60本程度の講演などを行う。これまで2000回以上の講演実績を持つ。NPOファザーリングジャパン顧問。Yahoo!ニュース 公式コメンテーター。東京大学発達保育実践政策学センター研究員。兵庫県、大阪府、京都府などさまざまな自治体で委員を務める。
http://kasei.cc.osaka-kyoiku.ac.jp/teachers/5.html

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大阪教育大学教育学部 教授 小崎恭弘

大阪教育大学教育学部学校教育教員養成課程家政教育部門(保育学) 教授。大阪教育大学附属天王寺小学校元校長。兵庫県西宮市初の男性保育士として施設・保育所に12年勤務。3人の男の子それぞれに育児休暇を取得。それらの体験をベースに「父親の育児支援」研究を始める。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌などで積極的に情報を発信。父親の育児、ワークライフバランス、子育て支援、保育研修など、全国で年間60本程度の講演などを行う。これまで2000回以上の講演実績を持つ。NPOファザーリングジャパン顧問。Yahoo!ニュース 公式コメンテーター。東京大学発達保育実践政策学センター研究員。兵庫県、大阪府、京都府などさまざまな自治体で委員を務める。

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